「刀剣乱舞」とコラボも 極上の名刀づくし、京博「京のかたな」展

  • 文・写真 矢口あやは
  • 2018年10月9日

特別な展示ケースに収められている国宝「太刀 銘三条(名物三日月宗近)」。あらゆる角度からじっくりと眺められます

三日月宗近(むねちか)に、へし切(きり)長谷部。この一風変わった名前を聞いて、ピンとくる人はきっと刀剣ファン、あるいは“刀剣女子”かもしれません。2015年に登場したゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」を起爆剤に、今、若い女性を中心とした刀剣ブームが起きています。

そんな追い風の中、京都国立博物館では刀剣の特別展「京(みやこ)のかたな」がスタート。前後期あわせて170振以上が出陳される大型展示で、早くも話題となっています。多くの人が夢中になる天下に名だたる極上の宝刀を拝みに、いざ京都へ。

京都国立博物館で開催中の特別展「京のかたな 匠(たくみ)のわざと雅(みやび)のこころ」

「質量ともに空前絶後」京博の大宝剣展へ

京都・山城系鍛治の作品をはじめとする著名刀工の代表作を中心に、国宝19件、重要文化財61件を含む約170件の刀剣が展示されています

「今回の刀剣展は、120年の歴史がある京都国立博物館において初。質・量ともに空前絶後といえる規模の大宝剣展です。大きな見どころは、京都が生んだ山城系の刀剣、そして初公開作品を数多く展示する点です」と胸を張るのは、同展担当研究員・末兼俊彦さん。

「歴史的に刀剣の生産量や消費量でいえば、トップシェアを誇ったのは備前(現在の岡山県)です。しかし、姿の美しさ、緻密(ちみつ)さ、アート性などにおいて刀剣界の圧倒的ナンバーワンといえるのが山城物。そんな山城系刀剣の国宝のほぼ全てがここで見られます」(末兼さん)

国宝「太刀 銘三条(名物三日月宗近)」東京国立博物館蔵(画像提供:東京国立博物館)

写真は、山城鍛冶の祖とうたわれる刀工・三条派の宗近の作品「三日月宗近」。目をこらすと、刃文と地金の境目に小さな三日月模様がキラキラと輝いています。天下五剣と名高く、生まれた当時はもちろん、今なお絶大な人気を誇る刀剣です。

同時に、初公開作品も見逃せません。刀剣のジャンルでは、祇園祭で使われたのちに長年大切に秘められてきた長刀鉾町(なぎなたぼこちょう)に伝わる長刀と、現存する日本最古の鑓(やり)が登場します。書物では、重要文化財・光徳刀絵図の付属として新たに発見された文書も初の公開となりました。

1522年の長吉作とされる長刀(長刀鉾保存会蔵)

重要文化財「阿国歌舞伎図屛風(びょうぶ)」京都国立博物館蔵

刀剣や絵巻が平安時代から現代に至るまでの時系列に沿って展示されているのも特徴です。それぞれの時代の作品を順に眺めていくと、その時々の京のトレンドや美意識の変遷が見えてきます。

鑑賞のポイントは「姿・地金・刃文」

ガラスケースの向こうで冷たく光る刀身。一見どれも同じですが、あるポイントに注目するとガラリと見え方が変わります

「ビギナーが見るべきところは3つ。『姿』『地金(じがね・鋼部分に現れる模様)』『刃文(はもん・刃先に現れる白い模様)』です」(末兼さん)

重要文化財「太刀 銘山城国西陣住人埋忠明寿(花押)/慶長三年八月日他江不可渡之」京都国立博物館蔵

「ただし、派手なものが多い備前などの刀と違って、山城の刀は地味なものがほとんど。山城物の真のすばらしさを鑑賞するには、やはり目が肥えていることが必須条件。何事も経験が大切ですね」(末兼さん)

目を肥やすには時間もお金もかかりそうですが、ここにあるのは名品中の名品ばかり。刀剣を一つ一つじっくりと眺めていくと、次第に刀身のプロポーションの違いや、地金と刃文が織りなすニュアンスなどを見分けられるようになってきます。なかには、刀身自体が発光するように見えるほどオーラのあるものも。ため息がこぼれるほどの眼福です。

知れば知るほど刀の見え方が変わる

さて、刀剣の魅力は見た目だけにとどまりません。刀剣が持つバックボーンはどれも多彩でユニークです。

重要文化財「薙刀直シ刀 無銘(名物骨喰藤四郎)」(豊国神社蔵)の復元模造刀剣

たとえば、「骨喰藤四郎(ほねはみとうしろう)」の「骨を喰む」という物騒な名は、ふざけて切るマネをしたら相手の骨が砕けてしまったとの伝承から。ほかにも織田信長や豊臣秀吉、徳川家康ら持ち主を渡り歩いたことで知られる「義元左文字(宗三左文字)」、あるいは細川忠興が側近36人を手討ちにしたと伝わる刀で和歌の三十六歌仙にちなんだ呼び名との説がある「歌仙兼定」など。

ここにある名刀たちは持ち主もゴージャスなら、エピソードの切れ味もバツグン。美しく、妖(あや)しく、怖い世界が垣間見えます。一振りにぎゅっと凝縮された歴史のロマンを、ぜひ解説パネルや音声ガイドを活用してじっくりと味わいたいものです。

『刀剣乱舞-ONLINE-』の世界で刀剣と遊ぶ

重要文化財の明治古都館(旧帝国京都博物館本館)を第2会場に。この建築も一見の価値ありです

さて、特別展の開催期間中は、明治古都館中央ホールで「刀剣乱舞-ONLINE-」のコラボ展示を行っています。

明治古都館の中央ホールに「刀剣男士」23人の等身大パネルと新作イラストが展示されています

「刀剣乱舞-ONLINE-」とは、刀剣を擬人化した「刀剣男士」を収集・育成・強化して、敵と戦うシミュレーションゲームのこと。近年の刀剣ブームを生んだ大ヒットゲームです。

実在する名刀同様、優美な姿が特徴の「刀剣男子」のキャラクター・三日月宗近

このゲームは、各キャラクターの容姿や性格といった設定に、モチーフとなった刀剣の来歴や特徴が反映されているのも魅力の一つ。楽しくプレーするうちに自然と知識が身についていきます。一見難解な刀剣の世界は、こうしたゲームから足を踏み入れてみるのも一つの手かもしれません。

会場では、ファンにはたまらない限定グッズが充実。写真は20枚つづりの描き下ろしイラストによるポストカードブック(2800円)

展示の後はミュージアムショップへ。会場限定のオリジナルグッズがそろっています

実際の刀装武具を再現した「鍔(つば)」コースター(1080円)。モダンなデザインに驚きます

刀の大判はがき(180円)。並べてみるとそれぞれの違いがよくわかります

北野天満宮でも「宝刀展」がスタート

京都国立博物館からはタクシーで約20分。“天神さん”は文武両道の神であり、武神としての信仰も篤かったことから多数の刀剣が奉納されています

刀剣の魅力を堪能するなら、ぜひ併せて巡りたいスポットが一つ。 “天神さん”でおなじみの北野天満宮です。10月6日から、なんとここでも約40振の刀剣を展示する「宝刀展ⅩⅢ×刀剣乱舞-ONLINE-」が始まりました。

刀剣や兜(かぶと)などが所狭しと並ぶ「北野天満宮 宝物殿」の内部

「北野天満宮で所蔵している刀は、およそ100振。この秋の宝刀展では、源氏の宝刀とされる『鬼切丸』(名物髭切・鬼切)をはじめ、豊臣秀頼が奉納した『国広』など、重要文化財5振を含む40振を公開します」と、天満宮権禰宜(ごんねぎ)の東川楠彦さんは話します。

北野天満宮が所蔵する重要文化財「太刀 銘国綱(名物髭切・鬼切)」。展示は10月6日〜14日、10月30日〜12月2日

鬼切丸は源氏に伝わる宝刀で、号の通り鬼の腕を切り落としたとの伝説があり、刀剣乱舞の人気キャラクター・髭切のモチーフにもなりました。この太刀を見るために海外から訪れるファンもいるといいます。

平安時代に京の町を歩いていた渡辺綱(わたなべのつな)が鬼に連れ去られ、天満宮の上空で鬼を斬って助かったそう。その時に鬼を切ったのが「鬼切丸」。綱が感謝の意を込めて天満宮に奉納したのが、この「渡辺綱の灯篭(とうろう)」です

京博の特別展と北野天満宮の宝刀展で出会えたのは、どこまでも優美に、それでいてシンプルに、強く鋭く研ぎ澄まされた宝刀の数々。一生分の刀を見たといっていいほどの量とクオリティーで、日本人らしいモノづくり精神や美意識を感じられた旅でした。

これから紅葉が色づき、いよいよ美しくなる千年の都で、奥深い刀剣のアートを巡る。そんな週末はいかがでしょうか。

    ◇

「そうだ 京都、行こう。」特別展『京のかたな』ツアー(JR東海)
http://souda-kyoto.jp/travelplan/katana2018_sp/index.html

京都国立博物館 特別展『京のかたな』
https://katana2018.jp/

北野天満宮
http://www.kitanotenmangu.or.jp/

 

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