京都ゆるり休日さんぽ

台湾・小慢の初姉妹店「京都 小慢」が開く中国茶の扉

  • 文・大橋知沙
  • 2018年10月19日

黒谷和紙の表札は京都の和紙職人ハタノワタルさんの作品

京都御所北の閑静な住宅街に、今年2月オープンした「京都 小慢(シャオマン)」。台湾の台北で美しい工芸とともに中国茶の魅力を伝えている茶藝館(ギャラリー兼ティーサロン)である「小慢」の、海外初となる姉妹店です。ともすれば気づかずに通り過ぎてしまいそうなつつましい外観に、和紙の下に淡く透かし見える「京都 小慢」の表札。そっと格子戸を開けると、上がりかまちの向こうでひそやかに息づく、凛(りん)とした世界観に吸い寄せられます。

美しい照明や花をしつらえた静かな空間が広がる

訪ねた日は、岡山在住の若手陶芸家・河合和美さんの個展中。手びねりで造形し、縁の処理や碗(わん)のかたちもあえて整えずに生み出される陶器は、現代アートのようなたたずまいです。常設作家の一人ながら、品切れになる作品も多いほどの人気。中国茶で使う茶道具を中心に、料理や花器にも応用できそうなうつわが並びます。

格子窓から漏れる光と、季節の花のたたずまいが美しい

金属のようで石のようでもある不思議な表情の壁は、京都の和紙職人・ハタノワタルさんが手がけたもの。築100年の町家の躯体(くたい)を生かしつつも、どこかモダンさの漂うこの和紙の壁により、新感覚の和空間が広がっています。こうした日本の工芸作家たちにいち早く着目し、惜しみなく台北の小慢で紹介してきたのが、オーナーの謝小曼(シャ・シャオマン)さん。日本の現代工芸作家たちにとって、台湾初個展となる場所が台北の小慢だったということも少なくありません。

奥深い色合いの和紙の壁が和の空間を洗練された印象に

「謝小曼は、日本の大学を卒業し、大手百貨店で生活工芸品のバイヤーを務めるなど、日本の現代工芸の優れた美を肌で感じてきた人です。その後、台北に茶藝館をオープンし、茶道具に日本の作家の作品も取り入れつつ中国茶の文化を伝える活動を続けて10年。その間、人々の意識が、生活の中に美を見出すかたちへと変化してきたと言います。節目となる今年、中国茶のたのしみを外国へと発信する新たな場所として、京都という歴史ある街を選びました」と、京都小慢の辰巳香織さんは話します。

日本の作家の茶道具を扱いつつ、月1回ほど企画展を開催

通常はギャラリーとして営業しながら、月に1度、3日間の中国茶教室も開いています。茶葉や茶道具の基本的な知識といれかたを、年間を通してみっちり学ぶコースは、北は北海道、南は九州から参加者がいるほどの人気。空きがある回なら、まずは1回の体験も可能です。使用する茶葉は、台北の小慢で扱っているものと同じ、謝小曼が厳選した自然生態(肥料も農薬も使わず、限りなく野生に近い状態で栽培すること)の中国茶。茶葉のみ購入することもできるので、まずは自宅で中国茶を味わうことからスタートするのもおすすめです。

中国茶をテイスティングしながら、茶器の使い心地も実感

茶葉は、週替わりでおすすめの銘柄をテイスティング可能。取り扱い作家の茶器を用いて、台湾のお茶菓子とともに提供してくれます。この日、出してくださったのは「岩茶」と呼ばれる岩に自生する珍しい品種の「武鳳(ウフォン)」。「とても岩に生えた木とは思えない香りなんですよ」と言う辰巳さんの言葉通り、口にふくんだ直後に鼻に抜けてゆくマスカットのような香りは、目が覚めるような華やかさです。常時数種類がそろう中、初心者でも飲みやすいのは、中国茶を代表する銘柄「東方美人」。甘くフルーティーな風味と柔らかな後味で、さまざまなお菓子と相性の良いお茶です。こうして、茶葉による風味の違いや、茶器のたたずまい、口当たりを体験すると、「もっと中国茶のことを知りたい」という好奇心がムクムクとわいてきます。

自然生態の中国茶がそろう。ラインアップは時期により変動

「中国茶は、様式や作法の自由度が高く、リラックスしてお茶席を楽しむことができるのが魅力です。もちろん、教室では美しい所作や正しいいれかたを身につけることを目的としていますが、ご家庭では最小限の茶器と茶葉から始め、中国茶のたのしみを知っていただけたら」と辰巳さんは語ります。

床の間の左官は職人の小畑裕昭さんが手がけた

日本の工芸と台湾の茶文化。ふたつの美意識に磨かれた審美眼を持つオーナーが、ふたつの国で伝えようとしていること。それは、互いの優れた文化を敬い、美しいものを見つめる心やおいしいと感じる喜びを共通言語にして、新しい感性を創造すること。日本の作家の茶器に注がれた香り高い一杯の中国茶は、台湾から京都へ、京都から台湾へと、自由に心を旅立たせてくれる魔法の架け橋です。(撮影:津久井珠美)

御所北の住宅街にたたずむ店舗

【京都小慢】
京都市上京区幸神町313
金〜月曜12:00〜18:00
火〜木曜定休

https://www.instagram.com/xiaoman_taipei/
*10月26日(金)〜11月4日(日)細川亜衣「生活道具展」

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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