京都ゆるり休日さんぽ

京都人好みのあんかけ湯葉丼「菜食 hale」のお昼ごはん

  • 文・大橋知沙
  • 2018年11月2日

京都人が愛してやまない調理法の一つに「あんかけ」があります。うどんもどんぶりも、京風中華やおばんざいの一品にも、つやつやとろりときらめく「あん」でとじた料理の多彩なこと。名水に恵まれ、だしがおいしく、薄味好みの京都らしい食文化です。

湯葉丼ランチセット・スペシャル(2000円・税込み)

京の台所・錦市場の隠れ家和食店「菜食hale(ハレ)」の名物も、黄金色につやめくあんでたっぷりの湯葉をとじた「湯葉丼」。京都を代表する食材の一つ、湯葉の料理を手軽にいただけるとあって、ベジタリアンはもちろん、旅行客や地元の人々にも人気です。活気あふれる錦市場の中ほど、人ひとりがやっと通れるほどの路地の先にある京町家のたたずまいが、haleの隠れ家たるゆえん。そっと扉を開くと、土間とひと続きになった昔ながらの「おくどさん(かまど)」、見事な梁(はり)、階段だんす、ひっそりと緑をぬらす坪庭など、京町家独特の空間に迎えられます。

土間から続く吹き抜けの台所が京町家らしい造り

この場所でだし昆布屋を営んでいた祖母の家を受け継ぎ、菜食の料理店を開いて15年になる店主の近藤千晴さん。地産地消を大切に、錦をはじめ京都府内の生産者が作る食材を使い、野菜たっぷりの定食を提供しています。湯葉ときのこのあんかけ丼をメインに、おばんざい2〜3種の盛り合わせ、冷ややっこ、香の物、いり番茶がついたランチは、野菜だけとは思えない充実度。こちらに「季節野菜のせいろ蒸し」が付くスペシャルセットは、じんわりとおなかにしみ入るあんかけと、せいろを開けた瞬間湯気が立ちのぼる蒸し野菜で、体の芯から温まる一膳です。

季節の野菜と生ふが入った「季節野菜のせいろ蒸し」

「食材は、特別に探すというよりも、私自身がふだんから食べていて『おいしいな』と思っているもの。お米は伏見の農家さんから無農薬のものを仕入れ、その日の朝、精米したてのものを炊き上げます。湯葉は湯葉屋、豆腐は豆腐屋のもんを使って。やっぱり専門に作ってるところのものがおいしいんです。錦市場には昔から名水の水脈が通っていて、市場の店の水は全部地下水。軟水で、ええ味のだしがとれます」

坪庭を眺めながら食事を楽しめる

昆布だしの柔らかなうまみでまとめあげた湯葉あんは、とろりと優しい口当たりの一方で、湯葉の歯ざわりはしっかりと感じられる一品。ふっくら炊き上げたごはんによく絡み、ちょんと添えられたユズこしょうのアクセントに箸が進みます。菜食ながらきちんと満足感があるのは、揚げ物や大豆のたんぱく質を巧みに取り入れた献立の成せるわざ。スーパーで購入した品ではとても体験できない、「揚げたて」の自家製ひろうす(関西のがんもどき)の食感を味わうと、野菜の可能性の豊かさに感動せずにいられません。

友人の陶芸家・芦田尚美さんのうつわなども販売

「かつお節を抜けば、京都って野菜だけでも作れる料理がほんまに多い。季節があって工夫のしがいがある、野菜の料理って楽しいですよ」と近藤さん。海から遠いため魚介が手に入りづらく、精進料理が身近にあった京都だからこそ育まれてきた料理の知恵。京都人が好むあんかけも、そういった食材との相性の良さから愛されてきたのでしょう。野菜の和食をいただくことは、信仰や思想にかかわらず、京都の食文化を体験する楽しみにもなります。

奥に長い間取りはまさに「うなぎの寝床」

一つひとつ丁寧に作られた献立をゆっくりと味わいながら、食事の合間にすするのは、一保堂茶舗のいり番茶。たき火のような独特の香りが特徴です。「子どもの頃から家庭のお茶といえばこれやと思ってたけど、ほかの地方にはあんまりないんですね。スモーキーな香りはちょっとクセがあるけど、私にとっては京都のなじみのお茶の味。気に入ってもらえたらうれしいです」と近藤さんは話します。

店と店に挟まれた細い路地がhaleの入り口

錦市場で菜食の和食屋として15年、親しまれてきたhaleの味は、近藤さん自身が日々の暮らしで選びとってきた「京都のおいしいもん」。錦の水でとった昆布だし、湯葉、あんかけ、ひろうす、番茶……。ふうふうと湯気を冷ましながら、京都の食文化の豊かさをじっくりと味わってみてください。(撮影:津久井珠美)

【菜食 hale】
075-231-2516
京都市中京区錦小路通麩屋町西入ル東魚屋町198-1
11:30〜14:30 L.O(売り切れ次第終了)
月曜定休、不定休あり

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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