あの街の素顔

知られざるコーカサスの秘境 ジョージアを旅して(前編)

  • 文・写真 江藤詩文
  • 2018年11月6日

ロープウェーが丘の上とふもとを結ぶジョージアの首都トビリシ

みなさま、「ジョージア」という国をご存じでしょうか。ジョージア人自身が「日本でジョージアといえば、缶コーヒーかアメリカ」とネタにするほど、まだ日本ではあまり認知されていませんが、ヨーロッパやロシアではすでにリゾート地として人気の旅先です。

そんなジョージアは、黒海とカスピ海に挟まれた南コーカサスに位置する、国土面積が日本の5分の1ほどの旧ソ連の小国。人口は約430万人。公用語はジョージア語(私にはまったく読めない丸っこい文字がかわいらしく、巻き舌ざんまいの発音が超困難!)、国民の多くがジョージア正教の信者です。

ジョージア観光のハイライト・軍用道路沿いにある17世紀に建設されたアナヌリ教会

ジョージア政府が、国名をロシア語に由来する「グルジア」から「ジョージア」へ変更してほしいと各国に要請し、日本でも2015年から呼称が変更されました。最近では、ジョージア出身の栃ノ心関が大関に昇進したり、2019年に日本で開催されるラグビー・ワールドカップへのジョージアの出場が決まったりしています。そう言えば思い当たる方もいらっしゃるかもしれません。

大自然の絶景と奇抜な都市建築

軍用道路から楽しめる大コーカサスの絶景

国土が狭いうえ、鉄道や長距離バス、また首都トビリシでは地下鉄や乗り合いミニバスもあるなど公共交通期間が発達しているジョージアは、地方への旅がしやすいのが魅力のひとつ。なかでもジョージア観光のハイライトが、ムツヘタ・ムティアネティ地方です。

カズベキ村の山岳リゾート「ルームズ ホテル カズベキ」で宿泊した部屋からの眺望

コーカサス山脈を眺めながら味わった「ルームズ ホテル カズベキ」の朝食

首都トビリシからロシア国境方面へ車で北上すると、およそ30分でこの地方の中心地であるムツヘタに到着。途中で観光スポットに立ち寄りながら、大コーカサス山脈を走り、国境近くのカズベキ村へと向かいます。このときに通る「ジョージア軍用道路」と呼ばれるドライブルートがすごい!のです。

コーカサス山脈を越えてロシアへとつながる全長210キロの道路は、コーカサス地方に進出したロシアが大量の軍用物資を運ぶため18世紀終わりに敷設しましたが、現在はコーカサス山脈の大パノラマを走り抜ける絶景ルートとして、ジョージアを代表する観光名所のひとつになっています。

バトゥミのユニークな建築群

そんな大自然があるかと思えば、なんだかユニークな人工都市もあるのがジョージアの景観のおもしろいところ。ジョージアは国内に自治州や自治共和国を抱えていて、黒海に向かって開けたビーチリゾートとして人気のバトゥミは、アジャリア自治共和国の都市。ここにはカジノリゾートもあり、首都トビリシからジョージア人がやって来て、週末トリップを楽しんでいます。

この街を歩いていると目につくのが、シンガポールや上海をほうふつさせる奇抜な建築群。これらは、ロシア寄りからEU寄りにかじを切ったサアカシュビリ大統領の時代に建造されたもの。現地のガイドさんによると、サアカシュビリ氏は“噴水大統領”と呼ばれるほど噴水が大好きであちこちに作ったそうで、バトゥミでもそこここで見ることができます。ところが新政権下では“巨大な建造物は国家予算の無駄遣い”とされ、建築中のまま放置されているビルも多数。そんな景観からも、急激に変化しているジョージアの一面を感じられます。

バトゥミのビーチリゾート。右側の池は夜になるとライトアップされ、噴水ショーが行われる

世界遺産の宗教施設も

「バグラティ大聖堂」で厳粛に行われていた日曜のミサ

ジョージア人の暮らしはジョージア正教と共にあります。日曜や宗教の祝祭日には、ミサに行くこともあれば、ビーチやカジノで遊びまくることもあるというギャップが、なんかすごい。

ジョージアの世界遺産は「ムツヘタの歴史建造物群」「ゲラティ修道院」「上スヴァネティ」の三つ。このうち「ムツヘタの歴史建造物群」と「ゲラティ修道院」を訪れました。

バグラティ大聖堂

教会に入るため、女性の私は頭を覆う必要がありました。自分でスカーフを用意するのが望ましいのですが、旅行者のために貸し出してくれるスカーフもあります。

小さな子どもや若い人たちもきちんと身なりを整え、熱心に祈りを捧げるミサは、咳払いをするのもためらわれるほど、厳かな空気に満ちていました。

モザイク画や壁画もみごとなゲラティ修道院

そのほか、大自然の恵みとして日本人にはうれしい天然温泉があるなど、小さな土地にぎゅっと見どころが凝縮された国ジョージア。「神様が土地を分配する会議に、ジョージア人はワインを飲んでいて遅刻したため、神様が(手元に残っていた)ご自身のとっておきの土地をくれた」という伝説があるほど、景観が美しく農作物にも恵まれているとか。遅刻した理由は諸説あるそうですが、私は「飲んで遅刻」を信じたい。

そう、ジョージアでは8000年も前から造られているというワインは、ジョージア人の大好物でもあります。後編ではそんなジョージアの美食をご紹介します。

ジョージアにある天然温泉のひとつで、アバノと呼ばれる個室型温泉のオルベリアニ浴場

■取材協力
Georgia National Tourism Administration

PROFILE

江藤詩文(えとう・しふみ)
トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト。これまで日本発着のクルーズのほか海外発着のフライ&クルーズ、リバークルーズなどを取材。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道〜乗っ旅、食べ旅〜」全3巻(小学館)など。

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