あの街の素顔

親子で楽しむ羽越観光、伝統の鮭料理、列車と宇宙船と舟下り

  • 文・写真 干川美奈子
  • 2018年11月6日

“羽越(うえつ)”とは、出羽 (でわ) 国と越 (こし) 国、今の秋田・山形・新潟・富山・福井の諸県のこと。「日本海きらきら羽越観光圏」は、日本海沿いの秋田県にかほ市、山形県の鶴岡市、酒田市、戸沢村、三川町、庄内町、遊佐町、新潟県の村上市、関川村、粟島浦村の3県10市町村のエリアです。

「観光圏」とは、近隣の観光地同士が連携し、互いの観光資源の魅力を引き立てながら、2泊3日以上の滞在可能なエリアを形成する取り組みです。今回、日本海きらきら羽越観光圏を旅したなかから、親子で楽しめるスポットをご紹介します。

鮭のまちで鮭料理の数々を知る

鮭(サケ)が干されている「千年鮭 きっかわ」の店奥の土間は見学可能。同店では年間1000匹以上の「鮭の酒びたし」を作る。冬でも暖房は入れず、鮭にカビやほこりがつかないよう、1カ月に1度下ろして、たわしで洗い、またつり下げるのだという

大量の鮭(サケ)が天井からぶら下がり、スモーキーな香りが漂っている。ここは新潟県村上市の鮭加工販売店「千年鮭 きっかわ」。市内を流れる三面川(みおもてがわ)では、先月から鮭の遡上(そじょう)がはじまっている。年間4万~5万匹もの鮭が産卵のために戻ってくるそうだ。取れた鮭を平安時代には租税として都に納め、江戸時代には藩の収入源にしていたため、村上には伝統的な鮭食文化が残っていて、鮭料理も100種類を超える。鮭のシーズンでもあるし、この秋冬の家族旅は村上からスタートしてみよう。

築130年の町家の入り口側が販売店。「鮭の酒びたし」「鮭の塩引き」「鮭のかぶと煮」など、無添加と高品質にこだわったさまざまな加工品が並ぶ

冒頭の天井からつるされた鮭は村上の鮭料理を代表する「鮭の酒びたし」だ。「千年鮭 きっかわ」では、村上でとれた鮭のうち、オスの内臓を取り出して塩をすり込み、1週間程度塩漬けにしてから洗い、「雑菌がつきにくい」という北西の風にあて、1年かけて発酵熟成させた伝統料理。店舗にはこのほかにもさまざまな鮭加工品が販売されている。

店の奥。茶の間も土間から見ることができる

生の状態で10キロほどあるという大きな鮭がぶら下がっている姿は圧巻だ。村上藩の時代から、頭は下にして尾からつるすのだという

村上に前泊するなら行ってほしいのが、「千年鮭 きっかわ」の並びにある鮭料理専門店「千年鮭 井筒屋」。きっかわの「鮭の塩引き」などを使った村上伝統の鮭料理を土鍋炊きごはんと一緒に食べられる。また、近くの三面川の分流沿いにある日本で最初の鮭の博物館をうたう「イヨボヤ会館」では、12月頃まで遡上(そじょう)した鮭の産卵の様子をガラス越しに見ることができる。12月には一般家庭の軒先に自家製の干した鮭がつるされるそうなので、街歩きも楽しそうだ

「千年鮭 井筒屋」の13品が食べられる税別3900円のコース。普段は切り身しか食べたことがなかったため、おかみさんから一つひとつの部位を説明されるたびに驚いた。酒びたし、酒びたしの皮のおどり焼き、かぶと煮、鮭の生ハム、白子煮、中骨煮など、まずはそのまま少しずつ食べてみると、確かに食感も味付けも違う。ツヤツヤと輝くごはんとの相性も抜群だった

井筒屋はもともと松尾芭蕉も宿泊した旅籠(はたご)で、江戸時代の旅行ガイドブックにも掲載されていたそう。入り口を入った場所にある囲炉裏は、当時の面影を残している

きっかわや井筒屋のある通りの各家の軒先には、花が生けられていた。観光客に喜んでもらおうと、町の人たちで花を生けることを決めたのだそう。そのおもてなしにうれしくなった

移動手段だけじゃない。乗る楽しみを実感できる観光列車

村上駅で待ちかまえていた「きらきらうえつ」をパシャリ

週末を中心に新潟駅~酒田駅間などを運行する観光列車「きらきらうえつ」。主に日本海側を通っているため、車窓からの視界がパッと開けて海が広がる瞬間は特に旅気分が盛り上がる。

新潟駅~酒田駅間は2号車の茶屋(売店)で飲食品を購入すると、先着順で約40分間「きらきらラウンジ」を利用できる(秋田延長ダイヤの際、酒田~秋田間は売店の販売はないが、ラウンジは自由に利用可)

2号車の茶屋(売店)で購入した弁当や飲料を楽しめる「きらきらラウンジ」に行ってみた。旅行客が感想を書くノートが設置されていたのでめくってみると「この電車で夏休みの宿題をしていた子どもが、今では日本酒の『呑(の)み比べセット』を飲む年齢になりました」といった感想があった。新しい車両のように見えたが、11月で19年目を迎えるという。列車の旅は一緒に乗った人の表情を見ながら会話をしたり、同じ景色を眺めたりできるから、強く思い出に残るのかもしれない。

乗車するには乗車券のほか、指定席券が必要。4両編成・全席指定なので、予約時に海側の席を確認するのがおすすめ。とはいえ、海と反対側の席でも、2号車のきらきらラウンジや、1号車と4号車にある無料の簡易展望スペースで海側の景色を楽しむことは可能

新潟県村上市の「村上茶」は、商業用としては日本最北端で栽培されるお茶。寒冷地なので渋みが少なく甘めのお茶になる。村上茶の緑茶と紅茶のペットボトルを購入し、きらきらラウンジボックス席からの眺めを楽しんだ

乗車記念スタンプ台や塗り絵スペースもあった

「きらきら情報コーナー」では沿線地域の観光パンフレットが映る

水田に着陸した宇宙船内で、走り回ってモノづくり!?

水田に囲まれた「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」

鶴岡駅からタクシーで向かった先は「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」。今日の宿泊先だ。大きな水田の真ん中に浮かぶように建てられた巨大な木造2階建て。モダンな美術館を思わせるガラス戸から入ると、内部は余分な柱などをなくしたシンプルで広々としたデザインながら、木造のためか意外とリラックスできる空間だった。源泉かけ流しの温泉もある。

「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」と水田を挟んだ向かいにある「KIDS DOME SORAI」

親子の旅の宿泊地になぜここを選んだかというと、11月1日にグランドオープンを迎えた0歳~12歳対象の巨大遊具施設「KIDS DOME SORAI」があるからだ。宇宙船が水田に着陸したかのようなユニークな形のこの施設を、スイデンテラス宿泊者は半額で利用できる。2階は子どもたちが走り回って体を動かせる遊具(大人は見学のみ)、1階は3Dプリンター、レーザープリンターも設置された本格的なモノづくりエリアが広がっている。モノづくりエリアは同伴者の大人のほうが夢中になってしまいそうだ。

家族一緒に眠りたいなら、二つのベッドをつなげた仕様の「スーペリアツイン」がおすすめ。朝食付きプランのとき、いずれも税別で大人一人1万2800円、幼児~小学生5400円、幼児(布団なし・食事のみ)3240円。また、4人家族なら1階と2階で行き来できる「メゾネットスイート」などの部屋もある。※2018年11月時点の価格

  

大浴場は源泉かけ流しの天然温泉

ライブラリーやフィットネスルームなどもある

カフェメニューの「タルトポワール」と「ラフランスジュース」(ともに税別500円)。スイーツとソフトドリンクのセットは税別900円

「KIDS DOME SORAI」1階では手芸、工作、絵画など、さまざまなものを作って持ち帰ることができる

「KIDS DOME SORAI」2階はロープやボルダリング、秘密基地ゾーンなどがあり、子どものできることに合わせて遊びを楽しめる

スイデンテラスの宿泊者は、ソライの利用料が半額ほどになる。税込みで大人250円(通常500円)、子ども(3歳~12歳)700円(通常1500円)、幼児2歳350円、幼児1歳250円という気軽に利用できる価格帯もうれしい

船頭さんのトークや舟歌で大盛り上がりの舟下り

芭蕉丸に乗って出発。靴を脱いで乗船するので、足をのばしてゆったりと。冬にはこたつ船も登場するそうだ

翌朝は最上川舟下りを体験した。

「青い空と山があって、水はきれいな緑色。『ああ、いいなぁ』ってドボンと入んないでけらっしゃいよ。ここ一番深いところで、だいたい10メートルくらいあるんだど~」
「え~、こわーい」
「こわいべ~。でも、私がもぐって測ったわけでねぇから、わかんね」

山々や小さな滝、最上川に来る野生の鳥などの景色を眺めながら、ゆったりと船は進む

船頭さんの快活な山形弁トークを聞きながら進む「最上川芭蕉ライン舟下り」。その日の川の水位や最上峡の自然を解説したり舟歌を歌ってくれたりと、乗客の反応を見ながら盛り上げてくれるため、約1時間のクルーズショーはあっという間だ。

【動画】「最上川芭蕉ライン舟下り」の様子

この日の船頭は横井ゆきさん。客との掛け合いは聞いているほうは楽しいが、技術がいる。難しくないのかを問うと、「一方的に説明をするだけなら、機械でいいっしょ」と笑った。旅先で出会う人たちとの会話も、旅の楽しみの一つ。内気な子どもたちでも、船頭さんとは積極的に話ができそうだ。

船長の斉藤吉雄さん(左)はこの道約30年のベテラン。最上川は季節や天候で水位もがらっと変わるうえ、台風などの後には、川に大きな石や木が転がっていることもある。スムーズな運転は経験のなせる技だ。右は船頭の横井さん

  

旅客運賃は片道で中学生以上2450円、小学生1230円。庄内地域の食材を使った舟中弁当は、鶴岡市出身の日本料理研究家・土岐正富氏監修。3種類あり、こちらは「おしん」(税込み1800円、予約制)。船内で食事をしながらクルーズもできる

鶴岡駅からJRで古口駅へ行く際の乗換駅、余目駅で時間ができたら、駅前の「庄内町新産業創造館クラッセ」へ。築80年の米倉庫を活用した施設。写真は地元で人気の「余目製パン」の出来立てパン

朝採れ野菜や、庄内地域を中心とした企業や個人店の加工食品、酒類などを販売する「なんでもバザール あっでば」。山形県内ではよく食卓に上る菊の花びらなども売っているので、子どもたちと珍しい食材や土産を探してみては

「あっでば」で見つけた生きた最上川のカニ。甲羅のサイズが大人の拳くらいの特大サイズで税込み450円。カニを捕まえる仕掛けが最上川舟下り中にある

■取材協力

日本海きらきら羽越観光圏
きっかわ
井筒屋
きらきらうえつ
SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE
KIDS DOME SORAI
庄内町新産業創造館クラッセ
最上峡芭蕉ライン観光

PROFILE

干川美奈子

干川美奈子(ほしかわ・みなこ)
編集者・ライター
10代後半から英語が公用語でない国を中心に海外チープ&ディープ旅をスタート。情報誌、海外ウェディング誌、クルーズ専門誌、女性向けビジネス誌などで旅記事を執筆。「プレジデントFamily」「プレジデント」をはじめとした編集部在籍経験を活かし、普段はビジネス、芸能、マネー、子育て、インタビューなど、雑誌・WEBの一般記事の編集・執筆に携わる。

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