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中田英寿 福島を旅する<#07> 来ました、福島。―「新たな名産」[PR]

  • 2018年11月23日

ほどけるような口溶けと優しい風味の心地良い余韻——。6年前、福島発の生キャラメルが、パリで行われた世界最大級のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」を席巻した。

開発したのは福島県大玉村(おおたまむら)に本社を置く電子部品メーカー、向山製作所(むかいやませいさくしょ)。震災と風評を乗り越えてきた「奇跡のキャラメル」発祥の地を訪ねた。

ショーウインドーに並ぶお菓子を次々試食した中田さん。保存料不使用の向山製作所のお菓子は、その多くが要冷蔵。食べる少し前に常温に戻して解凍するとよいそうだ

100年後も色あせない、福島が誇るお菓子へ

お菓子好きとしても知られ、数々の商品開発や監修を手がけている中田英寿さん。向山製作所の存在も以前から知っていたと聞き、織田金也(おだ・きんや)社長は「うれしいなぁ」と笑った。

本業は、精密機器の部品加工。創業以来、幾度も好不況の波を乗り越えてきたが、2008年にはリーマン・ショックの影響で、仕事の8割を失った。自分たちの力で何かしなくては……。考えた末にひらめいたのは、給湯室にある業務用のガス台を生かし、スイーツ事業を始めることだった。

スイーツ部門が好調でも、本業は電子部品。顕微鏡とはんだごてを使った微細なはんだ付け技術は日本の先端技術を支えている

もともと料理好きで、フード事業に興味のあった社長。反対する社員らを説得し、栄養士の資格を持つ女性社員と、ゼロからレシピづくりに取り組んだ。お菓子作りではプロに到底及ばない。代わりに温度や時間や重さなど、細かなデータを測定。電卓をたたきながら、1年をかけて生キャラメルのレシピを作り上げた。

そして暗中模索で始まった販売網の開拓。まずは週末に高速道路のサービスエリアで販売を始めた。すると直売の話を持ちかけられた。やがて百貨店の催事に呼ばれ、都内でも評判に。遂には大手航空会社の国際線ファーストクラスで、お茶うけに採用したいと声がかかった。

向山製作所を象徴するお菓子、生キャラメル。「これだけは100年経っても、手作りにこだわりたい」と織田社長は言う

2011年3月1日。向山製作所の夢を乗せた最初の飛行機が飛び立った。だが、10日後に起きた東日本大震災で状況は一変。物流がまひし、さらに県産の乳製品に出荷制限がかかる。

断腸の思いで、全国からの原料調達を決断。震災の2カ月後、東京の百貨店で販売を再開した。

人々の反応は、あたたかいものばかりではなかった。いわれのない風評、胸をえぐられるような暴言に耐える日々が続いた。膨らむ赤字に、「撤退」の二文字が日に日に現実味を帯びた。実は「サロン・デュ・ショコラ」に出展した本当の目的は、諦める理由をつくることだったと明かす。

大手企業への技術指導も務めるエンジニアの織田社長。週末は店頭で接客を担当するなど、多忙を極める日々を送る

「自分を信じて社員はついて来てくれた。やめるにしても、力は尽くしたと胸を張りたかったんです」

けれど予想に反して、向山製作所はフランスの人々から万雷の拍手で迎えられる。

「フランスは自信を取り戻させてくれた場所。感謝しかありません」

パリでの成果が日本に伝わると、徐々に売り上げも回復。近年は、順調に業績を伸ばしている。

生キャラメルをはじめ、新作の生バターサンドも好評だ

「材料調達の範囲を全国に広げたことが結果として、新たな可能性を広げてくれたのでしょうか?」という中田さんの質問に、そうした側面もあると認めつつ、織田社長は福島の味への強い思いを口にする。

「震災の影響で生産が困難になったものもありますが、安全を確保し、再開したものや、新たに生まれたものもあります。それらでオール福島産のお菓子を復活させる。それが社員皆の願いでもあるんです」

今夏、大型ショッピングセンターの隣、国道沿いの便利な場所に新店をオープン

大玉村があるのは福島県の中央部。村のシンボル、安達太良山(あだたらやま)の裾野には見渡す限りの田園風景が広がり、畜産も盛ん。かつてここから南米ペルーに移民として渡った野内与吉氏が、世界遺産で知られるマチュピチュ村の村長を務めた縁から、友好都市協定を結んでいる

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中田英寿(なかた・ひでとし)

1977年山梨県生まれ。ドイツW杯を最後にプロサッカー選手を引退した後、世界各地を歴訪。日本全国47都道府県を巡る旅を経て、伝統文化・工芸を支援するプロジェクト「REVALUE NIPPON PROJECT」を立ち上げる。15年には、株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANYを設立。日本酒の魅力、楽しみ方を国内外に発信する活動に取り組む。

◆福島県公式Facebook

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