京都ゆるり休日さんぽ

京都・散りもみじの名所で、過ぎゆく秋を見送る

  • 文・大橋知沙
  • 2018年11月30日

色鮮やかな紅葉のピークを過ぎると、古都の景色はしっとりと情緒をたたえた晩秋の色へと移り変わります。一面のもみじのじゅうたんや、石段や苔庭(こけにわ)にはらりと落ちたもみじの風情は、頭上の紅葉を見上げていた頃には味わえなかったもの。散りもみじの名所を訪ねながら、美しい秋の余韻と巡りゆく季節の流れに心を傾ける、大人の時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

敷きもみじの石段を歩く「毘沙門堂」

勅使門の石段を敷きもみじが彩る(画像提供:毘沙門堂)

参道の長い石段が、秋の終わりには「敷きもみじ」で覆い尽くされる山科の「毘沙門堂(びしゃもんどう)」。仁王門へと続く56段の急な石段はもみじのトンネルに包まれ、登りきった後に振り返ると、紅に染まる絶景が眼下に広がります。さらに、勅使門に通じる幅広の石段を彩る「敷きもみじ」は、まさにレッドカーペットのよう。一段一段歩みをゆるめ、足元のもみじの色を楽しみながら、ゆっくりと秋の名残を惜しみたくなるような場所です。

高台弁財天を包み込むように色づいた紅葉が見事(画像提供:毘沙門堂)

また、本堂の回廊から眺める、高台弁財天周辺の燃えるような紅葉も見逃せません。高台寺から勧請された弁財天は、その名の通り高台に造られ、まるでもみじの雲海に浮かんでいるかのようなたたずまい。宸殿(しんでん)奥の回遊式庭園・晩翠(ばんすい)園と合わせて、山すそとひと続きになった山寺ならではの紅葉の美しさを味わってみてください。

晩秋のわびた風情に心重ねる「法然院」

かやぶき屋根の山門に色とりどりの葉が重なる「法然院」

かやぶき屋根の山門が、赤・朱・黄色のグラデーションを描く紅葉に彩られる鹿ケ谷の山寺「法然院」。春と秋の特別公開期間中以外は境内のみ公開している小さな寺ですが、俗世を離れたようなひっそりとした世界観が、晩秋の風情をいっそう引き立てます。

白砂壇にも色づいた葉が落ち、趣を添える

苔むしたかやぶきの屋根に、参道の石段に、白砂壇(びゃくさだん)の上に……。色とりどりの葉がぽつりぽつりと落葉するわびた美しさは、心静かに見つめずにはいられない光景です。山門を入ってすぐ通路の両側に作られた白砂壇は、水の流れを表現し、この間を通ることで心身を清める意味を持つもの。僧侶によって白砂壇に描かれた季節の文様と、その上に枝葉を広げる鮮やかなもみじとのコントラストに、すっと背筋が伸びるような凛(りん)とした空気が漂います。

切なさを秘めた「祇王寺」の散りもみじ

苔庭を覆う散りもみじ。11月下旬から12月初旬にかけては真っ赤なもみじのじゅうたんとなる(画像提供:祇王寺)

洛西の散りもみじの名所といえば、外せないのが奥嵯峨の尼寺「祇王寺」です。平清盛の寵愛(ちょうあい)を受けた白拍子の祇王が、清盛の心変わりで都を追われ、ここで出家したという悲恋の寺。そんな物語を抱くかのように、竹林と楓(かえで)と苔に包まれた草庵には、どこかもの悲しい雰囲気が漂います。草庵前に広がるしっとりとぬれた苔庭には、秋が深まるにつれ、はらり、はらりともみじが散り、やがて緑を覆い尽くすほどの赤いじゅうたんに。楓の木立から差し込む光が散りもみじの地面を照らすさまは、切なくも美しい光景です。

草庵にある吉野窓。影が虹色に見えることから「虹の窓」と言われる(画像提供:祇王寺)

草庵には、祇王とその母・刀自、妹の祇女、そして祇王に代わり清盛の寵愛を受けたものの、やがて捨てられる運命を悟って出家した仏御前(ほとけごぜん)の木像に加え、つつましく清盛の像も安置されています。控えの間にある大きな吉野窓は、窓の格子と外の竹やぶが交差し、影が色づいて見えることから「虹の窓」とも呼ばれるもの。光と影のうつろいが、変わりゆく世と人の心を象徴しているかのようで胸を打たれます。

色づいた葉がすっかり地面に落ち、茶色くなってその姿を消すころ、京都にはすっかり師走のムードが漂います。散りもみじは、観光客がピークとなる秋の盛りと街がにわかに忙しくなる年の瀬のはざまで、季節のうつろいに気づかせてくれるつかの間の情景。ぜひ立ち止まって、今年の秋を見送ってみてください。


毘沙門堂
http://bishamon.or.jp


法然院
http://www.honen-in.jp


祇王寺
http://www.giouji.or.jp

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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