あの街の素顔

冬の「星のや竹富島」で「島テロワール」を体験

  • 文 小川フミオ
  • 2018年12月12日

東京から石垣島への直行便が飛ぶようになり、八重山列島がぐんと近くなった感がある。かつては行くのもひと苦労。その頃はそれゆえに存在感が大きかったといえるが、身近になったのはやっぱりうれしい。

リゾートホテル好きにはひとつの魅力がある。「星のや竹富島」だ。2012年に開業したここは、約7ヘクタールという敷地を持ち、伝統的家屋を模したヴィラタイプの宿泊棟で特別な体験を提供してくれる。

「星のや竹富島」客室外観(写真提供=星野リゾート)

「星のや竹富島」客室(写真提供=星野リゾート)

(撮影=小川フミオ)

このようにつねに敷地内の白砂は手入れされている。石垣の高さは背伸びすると中が見えるぐらい。竹富島では隣家との距離感を適度に保ちながら、お互いに様子を確認するのが大事なのだそうだ。

竹富島の魅力は、年間平均気温24度で、夏でも30度そこそこという過ごしやすさがひとつ。もうひとつは白砂の道(つねにほうきできれいにはかれている)と独特の赤れんがの屋根を持つ伝統家屋が並ぶ美しい景観だ。

リゾートは伝統的な家屋を模したヴィラタイプ(撮影=小川フミオ)

温暖で雨も多いとあって緑が豊か。へたをしたらジャングルになりかねないが、きちんと手が入れられ、ていねいに維持管理されたサンゴ隆起の島として存在感を放っている。

リゾートの敷地内が村のようにできている(写真提供=星野リゾート)

私はホテルで自転車を借りて少し走ってみた。11月の中旬だったが空が抜けるように青くて、Tシャツ1枚だったが汗をかいた。久しぶりにいい感覚だ。途中で水牛車に道を譲らなくてはならなかったり、白砂で車輪が滑りそうになったり、ここだけの思い出ができる。

水牛車で島内を回ることもできる(写真提供=星野リゾート)

「星のや竹富島」から自転車を使えば、ソーキそばで有名な店「竹乃子」は近い。「星の砂(有孔虫という微小生物の殻)」がある皆治(かいじ)浜にも行ける。基本的には平坦(へいたん)な土地とはいえ、道路は意外にアップアンドダウンが多くてややホネだが。

自転車を使えば近い、ソーキそばがおいしい「竹乃子」(撮影=小川フミオ)

浜に行くと観光客のみなさんが、一生懸命に星のかたちをした砂を探している。集めるのは大変なので、私は道ばたの無人販売所で瓶入りを200円で購入した。それでもいい思い出だ。

無人販売所にある瓶入りの「星の砂」(撮影=小川フミオ)

88ある星座のうちここでは84が確認できるそうだ。たしかに見飽きない。それもまたすばらしい体験だ。

(写真提供=星野リゾート)

ここで星野リゾートがやっているユニークな試みのひとつが畑だ。本土にない野菜やハーブに恵まれているが、後継者不在という問題を抱えている島の農業。それをふたたびもり立てようと、地元で農作物を育てている前本隆一氏の協力を得て、島の畑を継承するプロジェクトを始めているのである。下の写真の左が前本氏だ。

(写真提供=星野リゾート)

そこには「クヌシナヒスル(九品薬)」と現地の言葉で呼ばれる9種類のヌチグサ(命草=野草)も含まれる。ウイキョウやアダンといった植物を育てるのだ。

「クヌシナヒスル」には含まれていないが、私が気に入ったのは、ヒハツモドキの実だ。品のいいコショウのような香りを特徴としている。先述の「竹乃子」が作る「ピィヤーシ」という香辛料にも使われているのだ。でもここのソーキそばはスパイスを足さないほうが、繊細なだしの味が堪能できる。

「竹乃子」のソーキそば(撮影=小川フミオ)

「星のや竹富島」では「島テロワール」と名づけられた冬季限定のディナーを体験した。竹富島を中心に周囲の島の食材を使い、フランス料理の手法を使いながら構成したコースである。

竹富島で有名な食材は、芋、種々のヌチグサ、それにクルマエビである。海水温がちょうどエビの甘みを引き出すのに適しているそうで、さかんに養殖されている。

「島風アペロ」(写真提供=星野リゾート)

ディナーコースのスタートは「アペロ」(アペリティフをフランス人はこう呼ぶ)から。屋外にある「風のテラス」で「潮の香りや虫の鳴き声、鮮やかな夕焼けなど」とともにアミューズブッシュと食前酒が提供される。食前酒だけ別の場所で、というのは欧米では多く見られるスタイル。

「アーサー(あおさ)をまとった車海老(クルマエビ)のフリット」(写真提供=星野リゾート)

クルマエビの甘みは衣をつけて揚げたときに最大限に引き出されるとして、半生程度に火を通している。甘みも強く、アーサーの磯の香りがアクセントになっていて印象的な料理だ。

「あかね芋のローストとフォアグラのサラダ仕立て」(写真提供=星野リゾート)

紅芋に次ぐ沖縄県の特産品、あかね芋とフォアグラを合わせた一品。「あかね芋は、ローストして甘みや香りを凝縮させており、フォアグラを合わせることでさらに味わいを引き立てます」と星野リゾートは説明する。ヌチグサのサラダが添えられている。

この「島テロワール」ディナーは、デザートまで含めて10品で構成されるコースで、2018年12月10日から19年3月3日までの期間限定で提供される。料金は1名1万2000円(税、サービス料別)。別料金でワインをマッチングさせたコースも注文できる。

「星のや竹富島」は1室1泊5万1600円(税、サービス料、食事代別)からで、基本的には2泊から予約を受けるとのこと。

PROFILE

小川フミオ

小川フミオ
クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。「&M」ではクルマの試乗記をおもに手がけていますが、グルメ、旅、ホテル、プロダクト、建築、インタビューなど仕事の分野は多岐にわたっています。クルマの仕事で海外も多いけれど高速と山道ばかり記憶に残るのが残念です……。

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