神戸再発見! 見落とされがちな港町の魅力 北野、三宮、南京町、メリケンパーク

  • 文・写真・イラスト コヤナギユウ
  • 2018年12月12日

港町神戸のランドマークを一望する

神戸には1868年の開港以来、たくさんの外国人が住居し、あらゆる文化が持ち込まれて根付いている。

それは間違ってはいないけれど、それだけじゃない、と神戸に暮らす人はいう。

「有名な観光スポットがいくつもあり、いまも人気が絶えません。でも、神戸は常に進化し、変化しています。神戸で暮らしている人も見逃しているほど」

—— 神戸は常に変化している。

1度は訪れたことがある人も多く、ファンも多い有名な観光地だが、住んでいる人さえも見落とす魅力が潜み、そして次々生まれているという。特に、ここ数年。

神戸に行ったことはある。けれど、というか、だからこそ旅先の候補には上がらずにきた。改めて「神戸通ほど見落とす」という魅力を探ってきた。

<神戸の写真をもっと見る>

 

時の止まった老舗洋食店「もん」

チェーン店のど派手な看板が並ぶ繁華街のある三宮駅前近くに、時が止まったような味わい深いビルがある。創業1936(昭和11)年の欧風料理店「もん」だ。洋食文化の先駆け的存在として、現在も開店当初の味を守り続けているという。

「もん」の1階は喫茶店のような雰囲気

純喫茶のような重厚なカウンターのある1階から階段で2階へ。予約してあった4階の部屋へはエレベーターで向かう。

目を見張るのは初代店主が趣味で集めたという江戸時代の看板の数々。なみなみならぬ歴史の重みを感じる。

2代目おかみの日笠尚子さんにおすすめを尋ねると、「全部おいしい」という答えが返ってきた。ただ「量が多いからシェアした方がいい。最近人気があるのはビフカツ」とのこと。

エプロンは特注品であと3着ある、と日笠尚子さん

人気のビフカツは一口かじると牛肉のほぐれ具合に驚く

たしかにここのビフカツは、硬く肉が締まってしまいがちな牛肉がサクサクとほぐれ、牛肉のうまみが口の中に広がる。デミグラスソースは濃厚なのに飽きが来ない。何となく気になって頼んだクリームコロッケもベシャメルソースが目の覚めるような味わい深さだったし、ご飯2合分はあろうかというオムライスをはしで食べようとしたら、「スプーンで食べるとおいしい」と日笠さんに止められた。おすすめ通りにスプーンで食べて欲しい。

皿数を重ねるほど名店の深みがわかる「もん」は、連れだって訪れ何品も味わいたい。

メイドイン神戸が味わえる「FARMSTAND」

2018年3月にオープンしたばかりの「FARMSTAND(ファームスタンド)」は、異人館などで賑わう北野坂に面した、白いアンティークマンションにある。1階に店舗、2階にシェアオフィスを備え、地産地消をテーマに農漁業PRと事業者同士の交流を目的としている。

店頭には地元農家の取れたて野菜から、ハムなどの加工品、牛乳やチーズ、クッキーなど幅広く取り扱っており、安すぎず高すぎない「フェアプライス」をうたっている。お土産にも良さそうだ。

カウンターは灘の酒蔵のたるを再利用している

カフェではフードロスを少しでも減らすため、店頭の野菜は傷んでしまう前に早々に下げ、野菜たっぷりの「家庭料理のようなもの」をコンセプトとした料理を提供している。だからメニューは常に「いまあるもの」。

初めて訪れた旅先のカフェなのに、なんだかホッと落ち着いてしまうのは、そんなムリのなさが伝わってくるからかもしれない。

話題の「PEANUTS HOTEL」にチェックイン

「PEANUTS」は1950年にアメリカで生まれ、世界中で人気のマンガ。メインキャラクターであるビーグル犬の「スヌーピー」を知らない人はまずいないだろう。

2018年8月に日本初のスヌーピーをテーマにしたデザインホテルとしてオープンしたのがこの「PEANUTS HOTEL」。18室ある客室はすべて内装が異なる。

ROOM55はゴルフでオシャレを気にするスヌーピーをテーマに、クラブハウスをイメージした内装

スヌーピーの兄で砂漠に暮らすスパイクをイメージしたROOM57

中華街「南京町」も、今年で150周年

中華街「南京町」といえば路地にせり出した屋台で知られるが、これは1995年の阪神・淡路大震災の時に臨時で始まったもの。それが定着したという。

街が活気を取り戻した今、気がつけば大通りは行き交う観光客でいっぱいだ。

「実は、大通りで古くからやっているお店はだいぶ少なくなってしまいました。もう一度、観光客だけでなく神戸の人も来たくなるような魅力ある南京町にしたいと思っています」

そう語るのは南京町商店街振興組合理事長で、「豚まん」発祥の店「老祥記(ろうしょうき)」の3代目店主の曹英生(そうえいせい)さんだ。

開店後と閉店前の30分間は比較的行列が短いという「老祥記」

屋台で賑わう南京西道から1本入った「群愛茶餐廳(ぐんあいツァツァンティン)」で話を聞いた。店主の施蓮棠(シーリェンタン)さんも、曹さんを見つめて口を開く。

「こいつに『いい南京町にしたいから帰ってこい』って頼まれてまた店を始めましたよ。今までになかった香港スタイルの飲茶店をね」

施さん(左)と曹さんは保育園の頃から一緒の幼なじみ

施さんは以前、別の場所で店を営んでいたが、身体をこわし閉店したそうだ。いまは経過も良く、南京町を魅力的にしたいと意気込む。

「茶餐廳」とは香港発祥のカフェスタイルのこと。スイーツから飲茶(ヤムチャ)、おかゆなども提供し、気軽に利用できる。

点心5点盛り合わせは1人前から注文できる

「神戸ではあらゆる国の本格的な料理が楽しめます。それならば本場の香港スタイルも体験して欲しい。せいろや乾物は香港から買い付けていて、こだわりを持ってつくっています。香港についても質問があったらなんでも聞いてください!」と、施さんは話す。

「これから」のランドマーク「BE KOBE」

美しい街並みを歩いて、最後に眺めるのはやっぱり夜景だろう。デートスポットの定番「ビーナスブリッジ」は街に近い山の中腹にあり、神戸のランドマークがよく見える。

8の字を描くスロープ状のビーナスブリッジ

遠い昔の記録映像ではなく、今起きている被災映像がテレビで流れたことで衝撃を受けた人も多い「阪神・淡路大震災」。

2011年にあった東日本大震災では、被災地支援の原資となる「震災復興特別交付税」ができたが、1995年の阪神・淡路大震災ではこうした特別措置はなかった。神戸市では預金にあたる財政調整基金を全額取り崩し、借金である市債を発行して復旧資金を調達する一方、新規事業を抑制し職員数を削らすことなどで財政再建を進めた。そのかいあって、がれき撤去などのため市が一般会計で発行した災害復旧債を2016年度で完済。都心部再開発などの新たな事業に、ようやく踏み出せるようになったという。

神戸市役所前のフラワーロード

神戸市は2012年に夜間景観形成実施計画を策定している。これを手がけたひとりが、照明デザイナー長町志穂さんだ。

たとえば、新神戸から港をつなぐフラワーロードの照明は「光のミュージアム」のイメージだという。昼間は立派なクスノキ並木と手入れの行き届いた花壇が見事だが、夜は真っ暗で見えなかったという。

木を切る声も上がったが、長町さんが出した答えは植物に光を当てること。クスノキを下からライトアップし、花壇にも花を照らす光を入れることで昼間とは違う魅力が浮き出てきた。

夜のメリケンパークににぎわいを

メリケンパークは美しく整備され、2017年にリニューアルオープン。震災被害を保存展示し、港街らしいオシャレな雰囲気を醸し出す。だが、リニューアル前は、夜は暗くて近寄りがたい雰囲気だったというから驚きだ。

BやOの間から顔を出すと照明がキレイにまわりいい写真が撮れる

フォトスポットとして人気の「BE KOBE」のモニュメントは、神戸港開港150年を祝って昨年設置された。夜のライトアップカラーはランダムで変わるという。

今年始まった遊べる噴水ショー

日本の噴水は眺めるだけのものが多いが、世界の主流は「遊べる噴水」だと長町さんはいう。

2018年4月にメリケンパークにお目見えした噴水は、広場からいくつもの水柱が吹き上げるというもの。暑い夏の日に子どもたちが大喜びで飛び込む姿が目に浮かぶが、夜になると雰囲気が一変する。

音楽に合わせて噴水の高さと彩りが変わる

神戸らしさを象徴する「JAZZ」「海辺」「さわやかな風」をイメージした照明に染まった噴水が、音楽とともに舞い踊る。鮮やかな水しぶきの向こうにはポートタワーのKOBEの文字が誇らしげに輝いていた。

力強く立ち上る噴水は神戸の勢いそのものだ

震災から23年、着実に復興し、まちづくりに一層力を入れていく神戸。

鮮やかにいろどりを変え立ち上る幾筋もの噴水は、神戸のこれからを象徴しているかのようだ。

<神戸の写真をもっと見る>

PROFILE

コヤナギユウ
デザイナー・エディター
1977年新潟県生まれ。「プロの初心者」をモットーに記事を書く。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。
公式サイト https://koyanagiyu.com/

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ

Pickup!