京都ゆるり休日さんぽ

からりと揚がった旬をいただく「串揚げ 万年青」

  • 文・大橋知沙
  • 2018年12月14日

定番に旬の食材を織り交ぜて。一本151円〜(税込み)

皮ごとの里芋や、肉厚のしいたけ、ジューシーな赤身肉に、たっぷりのモッツァレラチーズを挟んだトマト。これらはすべて、「串揚げ 万年青(おもと)」の串の素材です。一本一本揚げたてが供され、どんな食材がどんな順番で出てくるかはお楽しみ。黄金色の衣をまとった一本が目の前に置かれるたび、驚いたり、うなったり、塩かタレか、はたまたレモンや山椒(さんしょう)でいただこうかと迷ったり。素材を通して店主と会話するかのようなライブ感に、気がつけば驚くほどの数の串を平らげてしまうことも少なくありません。

目の前で揚げてくれるカウンター席。奥にテーブル席も

西陣にオープンして6年目を迎えた万年青は、青木嗣(つぐ)さん、裕子さんがご夫婦で営む店。串揚げ一筋で料理人として歩んできた嗣さんの技と、インテリアの仕事に携わった経験を持ち、生け花をたしなむ裕子さんの空間やうつわのセンス、そして夫婦ともに関心の高かった、オーガニックでおいしい食への思いを形にした料理店です。洗練された空間で、ボリューム感もヘルシーさも兼ね備えた夕食をいただけるとあって、男性にも女性にも人気。駅からは少し離れた地元商店街の一角ながら、週末は予約客ですぐ満席になります。

揚げたてのさつまいもにはバターを添えて

一番絞りの圧搾菜種油で揚げた串は、さっくりと歯切れよくとてもかろやか。大根おろしを添えただし、オリジナルのソースだれ、塩、七味、山椒、レモン、和がらしとさまざまな薬味がセットで置かれ、一本揚がるたびにどう食べようかとワクワクさせられます。素材によっておいしい食べ方を提案して出される串は、嗣さんがコースの組み立てを考え、その日の仕入れによって順番が変わります。次に何が出てくるのかわからないのも、食事の楽しみの一つ。ほくほくのさつまいもには、角切りバターをちょこんとのせて。はまぐりは、揚げたてにだしをジュワッとかけ、仕上げに山椒をぱらり。その小さなひと工夫に、青木さんご夫妻が素材の一つひとつに向き合い、最もおいしく味わえる食べ方を吟味していることが感じられます。

はまぐりは、殻を受け皿にしてだしをたっぷりと

仕上げに山椒を。だしを含んだ衣と貝の相性が絶品

「可能な限り無農薬、無添加の食材を選び、素材そのものをシンプルに味わっていただくようにしています。例えば、和がらしはこうして目の前ですり鉢で練ってお出しして……。市販のからしは着色料や辛み成分を足しているものがほとんど。こうしてその場ですりつぶすと、素材そのものの香りや風味を知ってもらえるのはもちろん、うつわや道具の魅力にも気づいていただけるかな、って」と裕子さんは話します。

季節の白和えやポテトチップスなど4品がのった箸休め

万年青の食事は、串だけでなく合間に出される「箸休め」も楽しみの一つ。揚げ物続きの口にうれしい、野菜主体のみずみずしいおかずが絶妙のタイミングで出されます。柿ときくらげの白あえ、野菜の素揚げ、ぶどうのはちみつおろしあえなど、季節の味覚をちりばめ、濃厚で滋味深い有機野菜の味を引き出した品ばかり。「この時期はどんな箸休めかな?」と、食事を進めながら期待がふくらみます。

ぶどうのはちみつおろし和え。こちらも箸休めの一品

コースは、箸休め2〜3品を含み、お好みの本数でストップできる「おまかせコース」、串12本におかわり自由のサラダと箸休め、ごはん、おみそ汁、デザートが付いた「万年青コース」(3,780円・税込み)など。また、コースとは別メニューに「特選串」があり、絶妙なレア加減に揚げた「牛かいのみ串」は、ひと目見ると追加でオーダーせずにはいられない垂涎(すいぜん)のビジュアルです。

「牛かいのみ串」(3本972円・税込み)

出される串、箸休め、タレや薬味の一つひとつにまで、すべてに生産者の顔と食材の物語をお話ししてくれる青木さんご夫妻。納得のいく素材を見つけるため「仕入れに時間を割いて、農家さんに会いに行ったりすることが楽しみです」と言います。次々と出される串を前に、驚きや幸福の笑顔を目にするのが2人の喜び。「どんな食材も揚げると茶色なのでインスタ映えはしませんが(笑)、自然とともに歩み、作られた素材の力強さを感じていただけたら」。

食後に自家製デザートが付く

自然と対話しながら育まれた素材を、真摯(しんし)に選び、丁寧に下ごしらえをして、からりと揚げる。衣をまとった料理は、そんな手間や時間を全く感じさせないほどサクッと軽く、リズムよく次々とおなかに収まります。食事を終えてじんわりと体に残るのは、たっぷりの揚げ物をいただいた後とは思えないほど、優しく穏やかな満足感。シンプルな串揚げに詰まったまじめすぎるほどの手間ひまが、豊かな味の記憶となって心に残る料理店です。(撮影:津久井珠美)

モダンな外観。錆びた鉄を文字加工した看板が目印

串揚げ 万年青
https://www.instagram.com/kushiage.omoto/

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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