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再び「12万円で世界を歩く」赤道編2

  • 文・下川裕治、写真/動画・阿部稔哉
  • 2018年12月26日

  

1990年に刊行された『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)。12万円という費用で、どこまで行って帰ることができるか……という旅だった。費用には飛行機代はもちろん、滞在費、食費など旅にかかったすべての費用が含まれていた。『週刊朝日』での連載は1988年にはじまり、旅は12エリアに及んだ。

それから30年──。その旅のルートを再び歩いてみようという旅がはじまった。赤道編はタイのバンコクからインドネシアのスマトラ島を縦断し、赤道をめざす旅。今回はマレーシアのバターワースからペナン島のジョージタウンまで。

【前回のタイのバンコクからバターワースまでの旅はこちら】

  

今回の旅のデータ

バターワースからペナン島に渡るにはふたつの方法がある。ひとつはペナン大橋をバスやタクシーで渡る方法。もうひとつはフェリー。ペナン大橋は、ときどき渋滞も起きるが、島までの所要時間は、バスとフェリーで大差はない。旅の味わいといったらフェリーだろうか。海風が気持ちいい20分ほどの船旅だ。

以前、フェリー乗り場まではバターワース駅から歩いていくこともできた。しかしいま、その通路は閉鎖。専用の無料シャトルバスが、バターワース駅前の広場とフェリー乗り場までを結んでいる。バスは頻繁に来るので待ち時間は少ない。ペナン島に渡るフェリーは、片道1.2マレーシア・リンギ、約32円。

フェリーが着くのはペナン島のジョージタウン。ホテルはフェリーの港近くにもあるが、数が多い一角までは、歩いて20分ほど。バスも走っている。ペナン島のホテルは多いので予約なしでもOK。安宿は1000円前後から。僕らはジョージタウンの中級ホテルに泊まった。ツインで1泊、96.8リンギ。ひとり48.4リンギ、約1307円だった。

長編動画


【動画】マレーシアのバターワース駅からフェリーに乗ってペナン島、そこから歩いてジョージタウンにあるインド人街へ。その1時間を。


短編動画


【動画】ペナン島の朝。朝食屋台から。パラタというインド風パンケーキをつくっている。


バターワースからペナン島のジョージタウンへ「旅のフォト物語」

Scene01

  

バターワースの駅を出て、フェリー乗り場に歩いて向かおうとすると、通路が閉鎖されていた。「ん?」。近くにいた人に聞くと、無料シャトルバスだけになったという。バスは10分後にフェリー乗り場に着いたのだが……。歩けば5分ほどの距離なんだけど。

Scene02

  

フェリーは約20分。正面にペナン島のビル群を眺めながらゆっくり進んでいく。船旅というには短すぎるが、潮風を受けながら甲板に座っていると、旅をしている気分になるから不思議なものだ。ペナン大橋ができても、僕はいつもフェリー。運賃も1.2リンギ、約32円と安いし……。

Scene03

  

フェリーの甲板にはこんな座席が。ほかにあるのは売店とトイレ、設備は簡素だ。運航は早朝から深夜まで。昼間は20分おきといった感じだが、夜も9時をすぎると、1時間に1本程度になってしまう。その時間帯になると、タクシー運転手が駅やフェリー乗り場に集まってくる。

Scene04

  

ペナン島にフェリーが着き、ぷらぷら歩いてジョージタウンにあるインド人街へ。バスもあるが、歩いて街に入っていくこの感覚が気に入っている。港を中心に島が広がっていった感じがよくわかる。30年前もこうしてジョージタウンの安宿街に向かった。すごいスコールに遭った記憶がよみがえってくる。

Scene05

  

ペナン島は中国系の廟(びょう)も多い。かつてイギリスは、ペナン、マラッカ、シンガポールというエリアで構成される海峡植民地をつくった。そこでは自由貿易を標榜(ひょうぼう)し、移民も受け入れていった。混乱が続く中国から、多くの人々が移り住む。彼らは海峡華人とかプラナカンと呼ばれるようになっていく。

Scene06

  

マレーシアはマレー系、中国系、インド系の人々が暮らす多民族国家。そのなかで、ペナン島は中国系が多い。この日は彼らの祭りが開かれていた。廟の裏では京劇の準備が進んでいた。このすぐ隣がインド人街。そこでも祭り支度……。旅人にとっては飽きがこない島ですな。

Scene07

  

ペナン島にはプラナカン建築といわれる家並みが続く。中国系の人々がつくった街だ。1階が店舗で2階が住居という構造。壁には明るい色彩の陶器がはめ込まれている家が多い。どこか可愛らしく映るが、1階の店舗では、かつてアヘンの商売が繰り広げられていたとも。そのギャップにちょっと悩む。

Scene08

  

ペナン島は観光地だから、こういうリキシャも。マラッカではド派手な照明と音楽ガンガンのリキシャが人気だが、ペナン島のそれはかなり地味。といっても、僕の旅には縁がない乗り物。ましてや、今回は『12万円で世界を歩く』の旅……。一度は乗ってみたいという思い、あまりありません。

Scene09

  

ここまでかかった費用をざっと計算した。総額で5万円にも達していない。やはり飛行機代の安さは圧倒的。「これなら12万円は楽勝……」とペナンでは中級ホテルに泊まった。ジョージタウンの安宿街の入り口にある。中国系の宿だが、1階はイスラム教徒向けのハラルフードレストランという不思議。

Scene10

  

ホテルのすぐ近くにモスク。部屋からの眺めはいいのだが、早朝、ガツーンときます。アザーンといわれる礼拝への呼びかけが巨大スピーカーから大音量で響いてくる。心の準備を怠ると、「なんだ!」とベッドで跳ね起きることになる。目覚まし代わり……といえるようになるにはかなりの経験が必要?

Scene11

  

ジョージタウンの道は、夕方から夜にかけて屋台が並ぶ。近年、アジアでは屋台への風当たりが強い。シンガポールではほぼ姿を消し、タイのバンコクでも激減している。どちらも政府の方針なのだが。そこへいくとマレーシアは大丈夫。屋台好きならペナン島といったところだろうか。

Scene12

  

安宿街の食堂で、マレーシア風焼き飯。「ローストポーク入りでおいしいよ」と商売上手な女性店主にすすめられて注文してしまった。9リンギ、約243円。ビールを飲みたかったが、1本17リンギ、約459円と聞いて我慢しました。しかしマレーシアはビール高すぎです。

Scene13

  

マレーシアはホーカーズと呼ばれる屋台村が多い。屋内にあるのが一般的だが、ペナン島では路上ホーカーズもかなりある。屋台で注文してからテーブルについてもいいし、テーブルについてから店員に頼んでもいい。精算は店員が受けもっていて、いつも彼らの記憶力には舌を巻く。1リンギの間違いもない。

Scene14

  

ペナン島では朝も屋台。コーヒーか紅茶に、焼きそばかパラタというインド風クレープもどきが定番。コーヒーと紅茶はたっぷりと練乳が入っているから、のけぞるぐらいに甘いが、しばらく滞在するとやめられなくなる。「南国の朝はこれじゃないと……」などといいながら1杯。

Scene15

  

僕はいつもインド系屋台でミルクティーとパラタを注文。必ず小さめの皿に盛られたカレースープがついてくる。パラタをちぎって、カレーに少しつけて食べる。朝からカレー? でもさっぱりとした味わいで癖になる。これで3.5リンギ、約95円。パラタをつくる様子は、短編動画をご覧ください。

【次号予告】次回はペナン島からスマトラ島のパラパトへ。1月16日(水)配信予定です。

※取材期間:2018年9月24日

※価格等はすべて取材時のものです。

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PROFILE

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)ライター

下川裕治

1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「『裏国境』突破 東南アジア一周大作戦」(新潮社)、「僕はこんな旅しかできない」(キョーハンブックス)、「一両列車のゆるり旅」(双葉社)など。「週末アジアでちょっと幸せ」(朝日新聞出版)に続く、週末シリーズも好評。最新刊は、「週末ソウルでちょっとほっこり」(朝日新聞出版)。

阿部稔哉(あべ・としや)フォトグラファー

写真

1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

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