京都ゆるり休日さんぽ

一年の終わりに暮らしを整える 京都「内藤商店」の掃除道具

  • 文・大橋知沙
  • 2018年12月28日

7代目おかみ・内藤幸子さん。ほがらかな笑顔が印象的

「文政元年、1818年の創業ですから、今年でちょうど200年目だったんですよ。そやけど今年は災害の多い年でしたねぇ。京都があんなに台風の被害に見舞われたのは、私の経験では初めて。山の方では、まだ復旧作業したはるところもありますね」。優しい笑顔を浮かべながら、穏やかな口調でそう話すのは、内藤商店の7代目おかみ・内藤幸子さん。三条大橋のたもとにたたずむ棕櫚(しゅろ)のホウキやタワシを扱うこの店で、毎日元気にお客様を迎えています。

店頭に並ぶ美しい道具が看板代わり

周りにコンビニやコーヒーチェーン店などが次々と建つなか、内藤商店の簡素な店構えはそのまま。創業時から看板もありません。「いいものを作っていれば、自然とお客様がやってくる」というのが、代々当主に受け継がれてきた信念。その言葉通り、偶然通りかかった観光客が足を止め、引き寄せられるように美しい道具類を手に取ることも少なくありません。

5〜11玉まで、棕櫚の束数によってサイズが違うホウキ

「うちのホウキは、棕櫚や竹など自然のもんを使って職人さんが手作りで作っています。だから、見た目にもきれいで実用的。こうして掛けておいても素敵でしょう。丈夫で使い込むほど味が出るんですよ」。そう話しながら、店の床をササッとひと履き。こちらの店のホウキは7年ほど、自宅用のホウキはなんと50年以上使っているのだとか。使い続けるうちに棕櫚にツヤが出て、いっそう味わい深いたたずまいに変化します。

床に押し付けず、なでるように掃くのがコツ

棕櫚の毛の硬さによって、ホウキやタワシ、ブラシなどさまざまな用途に仕立てられます。竹、い草、豚毛、馬毛などの素材で作られた道具も。暮らしの変化やニーズに合わせてさまざまな形やサイズを増やしてきましたが、「自然素材を手仕事で」という姿勢は変わりません。こちらは「キセルぼうき」。キセルのように曲がった形状で、手の届かない桟や鴨居(かもい)の上を掃除するのに役立ちます。

キセルほうきは高いところの溝汚れに

外国人観光客も多く訪れますが、内藤さんは知っている英語を交えながら、使い方を実演して巧みに接客します。購入いただいたらサッと薄紙に包み、年季の入ったそろばんを弾きます。「そろばんは、実は外国のお客様にだけ。喜んでくれはるのでね。普段は筆算なんですよ」と、スラスラとメモ用紙で計算をはじめました。

包装は薄紙で。レジがなくても勘定はお手のもの

「先代のご主人は職人で、おかみさんが店を守っていました。私の夫は商社マンでね、先代が亡くならはったことをきっかけに、長男やったんで帰ってきたんです。それから私も、先代のおかみさんの姿から、教わったというより見て覚えてきました。店に立つようになってもう40年以上になりますね」と振り返ります。その間、電化製品は驚くほど進化し、使い捨てできる安価な掃除道具も市場にあふれました。それでも、内藤商店を訪れる人は、華美ではなく便利な機能が備わっているわけでもない掃除道具を、「美しい」と言って暮らしに取り入れます。

屋外用の竹ボウキ、ブラシやマット類なども豊富

「電気も使わないし、音もしない。ホコリも立ちにくいです。赤ちゃんがいるおうちや、マンション住まいの方、昼間はお仕事で夜にお掃除しなくちゃならない女性が買ってくれたりするんですよ」。そう話す内藤さんの口調からは、時代の変化を見守りながらも、人間の生活の芯にある「変わらないこと」を捉えるしなやかさが感じられます。暮らしを整えるだけでなく、使う人の心地よさや、家族や隣人への思いやりに寄り添う。内藤さんとの会話は、その人の暮らしを大切にしながら、道具にできることを伝える温かさに満ちています。

両端を切りそろえた「キリワラタワシ」は昔ながらの形

一年の終わり。大掃除のとき、いつも汚れ役になってがんばる掃除道具に、長く愛せる美しい道具も加えてみませんか。たくさん働いてくれたあと、リフィルやフィルターのごみも出さず、片すみに掛けても美しい姿に気持ちまですがすがしくなるはずです。生活をともに歩む道具があれば、新しい年もまた、日々を大切に暮らせそうです。(撮影:津久井珠美)

内藤商店
075-221-3018
京都市中京区三条大橋西詰
9:30〜19:30
不定休(1月1日〜3日休)

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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