京都ゆるり休日さんぽ

目利きが厳選した素材が織りなす究極の朝ご飯 すし処「満」

  • 文・大橋知沙
  • 2019年1月11日

朝ごはん(2500円・税込み)は土日のみ。要予約

粒がピンと立ち、つやつやに炊き上がった白いごはん。炭火でじっくり焼かれた脂ののったサケに、半熟卵がぷかりと浮かぶおみそ汁。和食の朝ごはんと聞いて誰しもが思い浮かべるそんな献立を、シンプルに、ストレートに追求したのが「満」の朝食です。お膳にピシリと並ぶ定番の品々は、思わず姿勢を正し、「いただきます」と丁寧に手を合わせたくなるすがすがしさ。お正月の食べ疲れた胃を癒やし、気持ち新たに一日をスタートさせてくれる朝ごはんです。

麻のれんの向こうに無垢(むく)の木の格子が目印

「満」は、麩屋町通に店を構え、京都の食通がこぞって通う高級すし店。なぜ朝食を始めたかとたずねると、大将の梅原章さんは笑って言いました。「お客さんのリクエストですわ。和食の朝ごはんをやってるところがほかにあんまりないですからね」。モーニングを提供する老舗の喫茶店やスタイリッシュなカフェが数多く点在するこの近辺で、すし店ならではの目利きを生かした食材の和朝食はたちまち評判を呼び、雑誌などで京都の朝食の特集が組まれると必ず名前が挙がるように。上質な素材と確かな技術が生かされた正統派の和の味に魅了され、朝食をきっかけに夜の食事に訪れる人も少なくありません。

きめ細かで脂が濃厚なトキシラズ。炭の香りも香ばしい

献立は、すし飯に使っているものと同じ山形の有機栽培米「つや姫」を炊き上げたごはん、濃厚な脂のりで知られる高級サケ「トキシラズ」の炭火焼、じゃことうがらし、湯葉しぐれ、鯛山椒(たいさんしょう)のふりかけ3種に、季節の一品と香の物が付きます。焼いているとじわり、じわりと脂がにじむサケに、しょうゆを垂らし、ごはんと一緒に頰張った時の極上のハーモニーは言わずもがな。ごはんはおかわり自由で、京都らしいごはんのおともに箸が進みます。みそ汁の半熟卵に好みのタイミングで箸を入れ、とろりとあふれる黄身をあわてて口に運ぶ幸福も、しみじみと和食のおいしさを実感する瞬間です。

甘みの凝縮した中央部だけを炊いた「淀大根のくずあんかけ」

季節替わりの副菜は、冬は「淀大根のくずあんかけ」。くつくつと煮えた土鍋のまま供され、立ちのぼる湯気とユズの香りで一気に体が温まります。春先にはふきのとうの天ぷら、夏はハモなど、朝の目覚めにうれしい旬の一品が定番の献立に季節の色を添えます。

大将の梅原章さん。すし職人として40年以上経験を積んできた

「毎日食べても飽きない、日本の朝食。自分やったらこういうもんを食べたいなぁと思う献立を、シンプルに表現しました。外国の方も来はるかと思ったけど、やっぱり日本人が多いです。なんか安心するんでしょうね」と梅原さんは言います。ごまかしの利かないストレートな献立だからこそ、自分自身の目で見て納得した食材だけを使い、手を加えすぎることなく素材の持ち味を生かす。すし職人としての実直なその姿勢は、朝食になっても変わりません。

薬味や刺し身のツマに至るまで食材はすべて自身の目で選ぶ

端正な一枚板のヒノキのカウンターの向こうで、梅原さんは鮮やかな手さばきですしを握ります。京都のすし店で経験を積み、店を構えて15年。素材を見抜き、最高の状態で提供する確かな目と技術が評価され、海外から呼び声がかかり、催事やレストランなどに出張することもしばしば。食材によって包丁の入れ方やシャリの量まで繊細に気を配ったすしは、梅原さんの美学の結晶。「朝食でうちを知って、夜も来てもらえたら一番うれしいですわ。ネタの味が力強いうちのすしは最高においしいですよ」と自信をのぞかせます。

ヒノキの一枚板カウンターが凛(りん)としたたたずまい

誰しもが食べたことのある日本の朝の献立を、厳選した素材と磨き抜かれた技術でシンプルに形にした朝食。一口頰張れば、なじみの献立が見せる、これまで食べたことのない味わい深さに驚くでしょう。研ぎ澄まされた素材が織りなす和食の底力を味わったら、さらなる職人の技ともてなしにふれる食体験の扉をたたいてみたくなるはずです。(撮影:津久井珠美)


www.kyoto-man.com
*2019年1月10日(木)〜23日(水) 海外出張のため臨時休業


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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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