あの街の素顔

直行便でラクラク! “南太平洋の楽園”フィジーで伝統文化を体験

  • 文・写真 江藤詩文
  • 2019年1月15日

ゆったりした島時間が流れるフィジー。透明感抜群の海にくっきりと姿を見せるサンゴ礁が美しい

「エンジョイ、フィジータイム」
フィジーの国際的な玄関口・ナンディに着陸する機内に、機長の声がやわらかく響きました。“南太平洋の楽園”の愛称で親しまれているフィジーは、南太平洋にある300以上の島からなる国です。

そんなフィジーの国営航空会社フィジーエアウェイズが、2018年7月、9年4カ月ぶりに日本への運航を再開。成田とフィジー最大の島ビチレブ島西岸のナンディを、週3便・約9時間で結ぶ直行便の就航により、ぐっと行きやすくなりました。

部族の村やホテル、観光地などさまざまな場所で体験した「カバ」の儀式。ちなみにフィジーでは英語が公用語(フィジー語とヒンディー語も一般的)なので、儀式の解説もわかりやすい

太平洋に浮かぶ島嶼(とうしょ)国は、「ミクロネシア」「メラネシア」「ポリネシア」の三つの地域に分かれます。フィジーが属するのは、「黒い島々」という意味の「メラネシア」地域。

先住民族は、メラネシア人とポリネシア人が混血したフィジー系の人々で、人口の6割弱を占めます。次いで4割弱のインド系のほか、中国系、ヨーロッパ系など、さまざまなルーツを持つ人々で構成されています。

日本では、まだあまりなじみのないメラネシア文化。けれどもフィジーに行ったら必ず遭遇するのが、フィジー系の人々に受け継がれてきたメラネシア文化のひとつ、「カバ」という伝統的かつユニークな儀式です。

ローカルな市場には、「カバ」の専門店がいくつもありました。完成したカバは茶色く濁った液体で、飲むと唇がちょっとピリピリして、何とも不思議な味

「カバ」の儀式とは、コショウ科の「ヤンゴナ」という木の根を乾燥させてすりつぶし、水で戻したしぼり汁を酌み交わすこと。ココナッツの器を使うのが伝統的で、かつては部族間での戦闘後、平和を誓うために行っていたそうです。

現在は、歓迎や友好のシンボルになったとか。旅行者の場合は、村にお邪魔するとき、敬意を示すためにカバの材料を“おもたせ”として部族長に差し上げ、歓迎の儀式でそれを一緒に飲むかたちで体験することができます。

アルコールは含まれないそうですが、フィジー人はこれが大好き。杯を空けるごとに手拍子を打ち、延々と飲み続けて楽しみます。

ナンディにある新しい観光施設「フィジー・カルチャー・ビレッジ」。フィジーを中心に、さまざまなメラネシア文化を学ぶことができます。南国らしい民族衣装のポップな色使いがかわいい

「カバ」の儀式を終えると、もう訪問者は村の人々のお客様であり友人です。私の印象では、フィジーは南国らしくおおらかでのんびり、人なつこくフレンドリーな人々が多いような。「ブラー」「ブラー」と笑顔で歌うように言いながら、民族衣装をまとい、先住民族から伝わる歌や踊りを披露してくれました。

伝統芸能は、部族ごとに歌や踊りが少しずつ異なり、口伝で継承されることが多いそう。村の青年たちによる戦いの踊りや女性たちの華やかな舞いのほか、フィジーでよく採れるココナッツの早割り競争なども行われました。

「ジャン・ミッシェル・クストー・リゾート・フィジー」からバスで訪れた地元の部族の村。青年たちが戦いの踊りなどを披露してくれているその横では、子どもたちが見よう見まねで踊っていました。こうやって自然に伝統文化を学び育っていくそう

ちなみに「ブラ」とは、フィジー語で「こんにちは」とか「ようこそ」といった意。「ぶらぁー」とちょっと柔らかな発音に、ほっこりと心が和みます。

また、フィジー語で「ありがとう」は「ヴィナカ」。これを言うとフィジー系の人々はすごく喜んでくれるので、カバを飲ませてもらったり、伝統芸能を見せてもらったりしたら、お礼を言ってみるのもおすすめです。

病みつきになった伝統料理「ロボ」。準備に手間がかかるため、普段食べる料理ではなく、お祝いやおもてなしの席で振る舞われる特別な料理です

完成した「ロボ」は、リゾートホテルではスタッフがきれいに取り分けて盛り付けてくれます。豚肉や魚もありましたが、蒸したて熱々のチキンとキャッサバがとりわけ美味

私にとっては、何もかも初めてのメラネシア文化。もっとも魅了されたのは「ロボ」という伝統料理です。これは、地面に大きな穴を掘り、底に熱々に焼いた石を置き、その上にバナナやタロイモの葉に包んだ食材を乗せ、上に再び焼いた石を乗せ、さらにふたをするように土をかけて、地中でじっくりと蒸し焼きにしたもの。

使われる調味料は、塩コショウときどきココナッツミルクという素朴な料理です。けれども石焼きの効果で、肉も魚も野菜も、うまみを閉じ込めたままふっくらとジューシーに蒸し上がり、しみじみと優しい味わいに。

数年前、サハラ砂漠で、砂中で蒸し焼きにした肉料理を食べたことがありますが、それに勝るとも劣らないおいしさ。フィジーでは、食材として肉だけでなく島でとれた新鮮な魚も使い、サハラ砂漠のスパイスの代わりにフレッシュなココナッツミルクをふりかけます。これ絶品!

インド系の人々が多く住む土地柄ゆえ、スパイスをふんだんに用いたインド料理も美味。インドの伝統的な調理技術とフィジーの食材が融合した、ココナッツミルクを使ったフィジー風のインド料理も楽しみのひとつです

もうひとつ、おすすめしたいのが“フィジー風セビーチェ”とも言われる「ココンダ」。これはクセの少ない白身魚を、生のまま角切りか薄切りにして、ココナッツミルクとレモンなどかんきつ類のしぼり汁、トウガラシや玉ねぎのみじん切りなどを加えた液でマリネしたもの。南国らしい、身がゆるめでやや大味な白身魚も、こう調理することで身がしまり、フレッシュで食べやすく仕上がるのです。

フィジー語で「ブレ」と呼ばれる独立したヴィラが建ち並ぶ「サバシ・アイランド・ブティック・リゾート・フィジー」。ビーチを望むガーデンには、プライベートハンモックも

「サバシ・アイランド・ブティック・リゾート・フィジー」で私が滞在した客室。ツーベッドルーム(2棟)やスリーベッドルーム(3棟)で、プライベートプールも付いていました

島嶼国であるフィジーでは、島から島への移動を気軽に楽しめます。日本からの国際線が発着するのは、前出のビチレブ島。他の島へは、フィジーエアウェイズのパートナー会社フィジーリンクが国内線を飛ばしています。今回はこれを利用して、バヌアレブ島のサブサブ空港まで飛び、個性の異なるふたつのリゾートホテルに滞在しました。

ひとつは、世界的に有名な海洋探検家で、潜水用の呼吸装置スクーバの発明者のひとりでもある故ジャック=イヴ・クストーの息子、海洋学者として活躍するジャン・ミッシェル・クストーが手がける「ジャン・ミッシェル・クストー・リゾート・フィジー」、もうひとつは、バヌアレブ島と橋で結ばれているサバシ島にあり、すべてデザインの異なるユニークなヴィラが点在する「サバシ・アイランド・リゾート」です。

手付かずの自然に包まれた無人島へ朝食ピクニック

各リゾートでは、演出に工夫を凝らしたプライベートディナーも体験できます

「ジャン・ミッシェル・クストー・リゾート・フィジー」は、海洋学者がスタッフとして働くリゾートで、マリンアクティビティが充実しています。また、敷地内にオーガニックファームやハーブ園があり、専門知識を持ったガイドによるウォーキングツアーも開催されています。ここは家族連れやアクティブにマリンスポーツを楽しみたい人におすすめ。一方、ヴィラが7棟しかない「サバシ・アイランド・リゾート」は、こぢんまりとしてスタッフのサービスが行き届き、プライベート感が新婚旅行などカップルにぴったり。

テイストはそれぞれ個性的ですが、いずれのリゾートも自然に囲まれ、プライベートビーチに面していて、他のリゾートや街とは離れているため、食事は基本的にすべてホテルで取ることになり、アクティビティにもホテルから出かけることになります。そのため、好みに合ったリゾートを選ぶことが滞在を楽しむコツです。リゾートではフィジー産のビールなどもあり、透明な海を眺めながらの一杯は格別でした。

「サバシ・アイランド・ブティック・リゾート・フィジー」の宿泊客しか訪れないというブローホールは、すごく魅力的な撮影スポットなのに、旅行者でごった返すこともない観光の穴場スポット。地球のパワーを全身で体感できます

森を流れる川を抜け、塩湖まで行くカヤッキングツアーに参加。潮の満ち引きにより、水が流れる上流と下流が入れ替わるという不思議な川でした

リゾート内でのんびり過ごすのもよいのですが、この美しい海を舞台に、ダイビングやシュノーケリング、カヤッキングなどさまざまなアクティビティも楽しめます。メニューは、宿泊料金に含まれていて、初心者でも参加しやすい気軽なものから、学習要素が強いもの、別料金でほぼ一日がかりの本格的なものまでさまざま。私は、ボートで無人島へ渡り、シュノーケリングでサメのあかちゃんを見たり、部族の村を訪問したり、南半球ならではの植物が生い茂ったジャングルを眺めながらカヤックをしたりしました。

なかでもエキサイティングだったのが、ブローホール(潮吹き穴)探検。リゾート専属のネイチャーガイドの案内で、遠浅の透明な海をカヤックで渡り、いつ吹き出してくるかわからないブローホールがあちこちに潜むエリアへ。突然背後から潮が吹き出し、頭からずぶぬれになることがあるので気が抜けません。地球のミステリーで、一部は温泉のように温かい海水が湧き出しているエリアも。温水であったまりながら360度広がる海を眺めると、潮が吹くたびに足元から空へ向かっていくつもの虹がかかります。ほかでは見たことのない美しい光景でした。

さまざまなフレーバーのラムのテイスティング。2年もののはちみつフレーバーはとろりと甘くて香りがよく、印象深い味わいでした

「フィジアナ・カカオ」の工場はショップを併設していて、観光客も訪れることができます。いまやフィジー土産の定番になりつつあり、空港の免税店でも見かけました

さてさて、最後にフィジーのおみやげを。私のおすすめはフィジー産ラム。フィジーでは南国らしくサトウキビがたくさん栽培されています。それを原料にしたラムは、フィジーの特産品のひとつ。透明なホワイトラムや、たるで熟成されたヴィンテージもののほか、バナナやホワイトチョコレート、コーヒーといった香り付けが豊富なのも特徴です。

応援したいのは、日本人の図越(ずこし)智仁さん、治美さんご夫妻がフィジーで立ち上げたプレミアムチョコレート「フィジアナ・カカオ」。カカオ豆の買い付けから製造まで一貫して手がける「ビーン・トゥ・バー」チョコレートは、いま世界のトレンド。「フィジアナ・カカオ」は、さまざまな事情により地元のカカオ農家が栽培を放棄し、絶滅しかけていたカカオを地域と協力して復活させ、フィジー産のカカオだけを使ってつくりあげています。

食べ物以外なら、ココナッツやフランジパニの香りが南国らしいコスメ「ピュアフィジー」もおすすめ。リゾートのアメニティとしても使われていました。

のんびりとくつろいだフィジーの旅。到着時に機長が言った「フィジータイム」は、南の島特有の、時間に追われないゆとりのこと。知り合ったフィジー人ビジネスパーソンによると、かつては時間を守る約束はあってないようなものでしたが、近ごろはフィジー社会でも時間にルーズなことを嫌う傾向が強く、「フィジータイム」とは「積極的に時間を忘れて、リラックスした時間を過ごす」といったポジティブな意味で使われているそう。

寒い日本とは正反対の南半球の南国リゾート。ゆるやかな「フィジータイム」を楽しみに、直行便でひとっ飛びしてみませんか。

取材協力:フィジー政府観光局
https://www.fiji.travel/jp

PROFILE

江藤詩文(えとう・しふみ)
トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト、コラムニスト。その土地の風土や人に育まれたガストロノミーや歴史に裏打ちされたカルチャーなど、知的好奇心を刺激する旅を提案。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~」シリーズ3巻。

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