にっぽんの逸品を訪ねて

「みなみの桜」と駿河湾の味でひと足早い春 静岡県・南伊豆町

  • 文・写真 中元千恵子
  • 2019年2月12日

桜並木と菜の花の競演(画像提供:南伊豆町観光協会)

伊豆半島の最南端にある南伊豆町では、桜の季節が2回訪れる。

町の中心部にある下賀茂温泉を流れる青野川の両側には、4.2キロにわたってさまざまな桜が植えられ、「青野川千本桜」とよばれる。

2月上旬から3月上旬に、いち早く見ごろを迎えるのは早咲きの「みなみの桜」(品種はカワヅザクラ)だ。青野川の宮前橋から前原橋にかけて800本の桜並木が続き、あでやかな濃いピンク色の花をつける。同じころ、菜の花も見ごろを迎え、町では「みなみの桜と菜の花まつり」を開催する(2019年は2月10日~3月10日)。

ライトアップされた夜桜も幻想的(画像提供:南伊豆町観光協会)

期間中は18時~21時まで夜桜のライトアップを実施し、メイン会場となる道の駅「下賀茂温泉 湯の花」ではさまざまなイベントがある。

3月下旬からは青野川沿いのソメイヨシノが花を咲かせ、2度目の花見の時期を迎える。

夕食も桜が満開 春の食材を使った「桜会席」

桜のシーズンにぴったりのメニューが味わえるのが、弓ケ浜温泉にある休暇村南伊豆だ。「日本の渚(なぎさ)100選」にも選ばれた弓ケ浜海岸の近くに建つ温泉リゾート。全国に37ある休暇村の中でも有数の人気を誇る。

季節限定の「桜会席」(画像提供:休暇村南伊豆)

夕食は「バイキング」、季節限定の「会席料理」、地元の逸品素材を使った料理にバイキングをプラスした「逸品三昧(ざんまい)」から選ぶ。

2月1日~3月31日限定の「桜会席」は、春に旬を迎える食材をふんだんに使っている。お造りやサラダに登場する桜鯛(サクラダイ)は、産卵前で栄養を蓄えた春のマダイのこと。脂がのり、見た目も桜色で美しい。桜鍋に使う馬肉も、桜の季節は脂のバランスが良く、特に美味だ。

桜エビはかき揚げで(画像提供:休暇村南伊豆)

ほかに、国内では駿河湾でしか水揚げされない貴重な桜エビを、カリッと揚げたかき揚げや、金目鯛(キンメダイ)の桜蒸し、桜ちらし蒸しずしや潮汁など。見た目も華やかで、テーブルの上にも桜が咲いたかのよう。桜をめでる旅をいっそう思い出深いものにしてくれる。

色どりも美しく(画像提供:休暇村南伊豆)

本館3階の温泉大浴場には、内湯のほかに庭園露天風呂や壷(つぼ)湯があり、やわらかな肌触りの弓ケ浜温泉を楽しめる。露天風呂では、潮騒が響き、海から吹く風も心地いい。

7階には、白い砂浜が続く海岸を見晴らす「潮騒テラス足湯」もある。

リゾートホテルらしい開放感のある大浴場(画像提供:休暇村南伊豆)

岩と一体となったような神社が建つ石廊崎

白い石廊埼灯台を目指して歩く

翌日は石廊崎(いろうざき)へ。伊豆半島の最南端に近い海岸線にあり、そそり立つ断崖や海に突き出た岬など、“海の秘境”とよびたくなる風景が広がる。

青い空に映える白亜の石廊埼灯台を見ながら坂道を下ると、視界が開けて光る海と水平線が現れる。遮るもののない風景は爽快だ。

岬の突端からは晴れていれば伊豆七島も見える

ひと際目を引くのが、断崖絶壁に建つ石室(いろう)神社。古くから石廊権現や石廊崎権現とよばれ、海上安全や商売繁盛、学業成就の神として信仰されてきた。創建時期は諸説あるが、701(大宝元)年に最初に堂が建てられたと伝わり、現在の社殿は1901(明治34)年の再建。

岩に包まれたように立つ石室神社

石室神社は、海面から30メートル以上の断崖絶壁の上に、千石船の帆柱を基礎に建っている。これについては、伊豆七不思議のひとつ「石廊権現の帆柱」の話が伝わる。

昔、播磨国(現在の兵庫県)の千石船が江戸へ塩を運ぶ途中に石廊崎沖で嵐に遭い、難破しかけた。そこで、帆柱の奉納を誓って祈ったところ、無事に江戸に到着。その帰途、石廊崎沖で船が進まなくなったので、千石船の帆柱を斧(おの)で切り倒すと、帆柱はまるで供えたかのように断崖絶壁にある社殿あたりまで打ち上げられたという。

帆柱は今も社殿の基礎として使用され、ガラス越しに一部を見ることができる。

神社は千石船の帆柱の上に建つ

岬の先端には縁結びに御利益があるという熊野神社もまつられている。

石廊崎には2019年4月1日に休憩所や駐車場、地形の成り立ちなどを解説する「石廊崎オーシャンパーク」がオープンする。

金目鯛にタカアシガニ 伊豆の味ならこの店

昼食に立ち寄ったのは、「伊豆の味 おか田」。純和風の落ち着いた店内で、伊豆の食材をゆっくり味わえると評判の店だ。

看板メニューは金目鯛の煮付け

豊富なメニューの中でも看板料理は「金目鯛の煮付け」。漁場煮(りょうばに)という漁師の調理法を取り入れ、水を一切加えずに煮ている。「味が濃いのでは?」と思ったが、とんでもない。大ぶりで脂ののった金目鯛にほどよく甘辛さが染みて、おいしいこと。煮汁をご飯にかけて残さず食べる人が続出した。「金目鯛煮つけ定食」には、小鉢3品やミニ刺し身も付く。

タカアシガニは一匹丸ごと蒸しあげる(画像提供:伊豆の味 おか田)

12月から2月末までは「タカアシガニ」が味わえる。漁期が短く、あまり出回らないので知名度は高くないが、とろりとしたカニみそがたっぷり入った知る人ぞ知る人気の品だ。

店内にあるいけすから揚げるので新鮮そのもの。1匹丸ごと蒸し焼きにすると、うま味がぎゅっと濃縮される。

大きくて味もよいタカアシガニ。食べごたえ十分(画像提供:伊豆の味 おか田)

「お客様が『おいしい』と喜んでくださるのが何よりうれしい」と話す主人の岡田正司さんはじめ、スタッフの方が温かく朗らか。心のこもった接客に心が和む。

【問い合わせ】
南伊豆町観光協会
http://www.minami-izu.jp/
*花の見ごろは気候で変化するので問い合わせを
休暇村南伊豆
https://www.qkamura.or.jp/izu/
伊豆の味 おか田
http://izu-okada.co.jp/

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PROFILE

中元千恵子(なかもと・ちえこ)フリーライター

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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