• 宇賀なつみさん「旅と私の人生は、切っても切れない関係」

宇賀なつみさん「旅と私の人生は、切っても切れない関係」

2019年4月からフリーランスに転身した、元テレビ朝日のアナウンサー・宇賀なつみさん。20歳の時に初めて経験した海外一人旅以来、世界を旅するおもしろさに目覚めてしまったそうで、毎年どこかしらに出かけています。「旅に出ないなんてもったいない!」ときっぱり言い切る宇賀さんに、旅の魅力を伺いました。

(文・渡部麻衣子 写真・松嶋 愛)

フリーになって変わったこと

――フリーになりましたが、局アナ時代と今とでは、旅の仕方も変わりましたか?

レギュラーのお仕事や単発の収録、イベントの合間に何日か空いたら、直前にバーッと決めて旅に出ています。4月は上海、5月はハワイ、7月は長野の山に6日間こもりました。

急に思い立って行けるのは会社員時代にはなかったこと。日々の生活サイクルから解放されるために年に1、2度のご褒美として海外旅行をしていましたが、今ではもう旅が日常になりました。

ただ、会社を辞めたら移動に時間がかかる南米やアフリカにも行きたいと思っていたのですが、まだそこまでの日数をお休みする勇気はなくて。フリーになると、お仕事を断るのにかなり勇気がいるものなんだなぁと感じています。

――旅行の計画は事前に細かく立てる方ですか?

旅のスケジュールを組んだり調整したりするのがすごく好きで、手配は全部自分でやっています。観光情報については一応ガイドブックで事前に調べはしますが、現地では基本、自分の嗅覚(きゅうかく)を頼りに動きます。観光する日もあれば、無理せずホテルでゆっくりする日もある。旅で大切にしているのは、いかに自分が気持ちよく過ごせるかということ。やっぱり、楽しくなければ旅に出る意味がないですからね。

――出発前の空港ではどのような過ごし方をしているのでしょうか。

空港の雰囲気がすごく好きで、いつもなるべく早めに行って飛行機を眺めています。航空会社のラウンジでは、仕事のメールをチェックしたり、これから行く国が舞台になっている本を読んだり。一通り済んだらお酒を飲んで、飛行機に乗った瞬間に眠ってしまいます。そうすると、向こうに着いた瞬間から元気いっぱいに動けるので。

――10月末から成田空港の運用時間は今より1時間延長されて、午前0時までとなります。旅の選択肢も広がりますね。

夜発は、時間が有効に使えますよね。夜まで仕事をしてから空港に向かって、空港のお手洗いでメイクも落として、楽な格好に着替えて。で、トランクを預けてそのまま旅立てる。夜9時の便と11時台の便では便利さがぜんぜん違いますよね。

――国際線の時刻表を見ていただいてもいいですか?

成田発の遅い時間帯の便の行き先は……、あ、やっぱりハワイが多いんだ。イスタンブール、クアラルンプール、ドバイ、ゴールドコースト……。結構、世界中どこにでも行けますね。特に東南アジアはオススメかも。向こうに着いたらちょうど朝だから、すぐに動けるし。

2013年の南仏旅で、いつかフリーでやっていこうと決意

――初めて海外旅行をしたのは、いつのことですか?

20歳のとき、1人で1カ月ほどアメリカのロサンゼルスにホームステイしました。就職活動を前にプレッシャーに耐える練習というか、試練を与えようと思って。お金がないからロスでの移動はほとんどバスでしたが、美術館とか有名なロケ地とか、当時『地球の歩き方』に載っていたところは全部回りました。

――初めての海外一人旅にしては、ものすごく充実していましたね。

怖い目にも何度か遭いましたよ。ホームレスのおじいさんに追いかけられたり、夜道を歩いているときにクラクションを鳴らしてきた車に横付けされ、「あ、もう、死ぬかも……」と思ったり。その車は結局私のことをからかっただけだったんですけど。

いろいろあったので、最後空港から飛び立つときは感動して泣きました。「あー、私無事に帰れるんだ」って。そこからですね、一人旅が好きになったのは。意外と飛び込んじゃえば平気なんだなっていう度胸もつきました。

――その後、テレビ朝日への入社が決まりました。

入社前にも、1人でシドニーに行きました。絶景で知られるボンダイビーチの丘の上から見た景色は、特に素晴らしかったです。4月から大きく環境が変わるのを前に不安もあったのですが、「自分はなんてちっぽけなことを考えていたんだろう!」と、感動して涙が出ました。……必死の形相の警備員のおじさんに「Life is beautiful!」と声をかけられたことにはびっくりしましたが。実は、そこは自殺の名所としても有名なのだそうです。そんな場所で泣いていたから、勘違いされたんですね。

――社会人になってからはどのような旅をしてきましたか?

年に一度の夏休みは、10年間毎年必ず海外へ行っていました。私は行ったことのない国に行きたいタイプで、毎回行き先はバラバラ。アラブ首長国連邦、スペイン、スリランカ……いろいろな国へ行きました。

――中でも印象に残っている旅は。

2013年の南仏への旅です。ニースやモナコ、コートダジュール、マントンを巡りました。カラッとした気候で雨もめったに降らないし、日差しが強くて人も陽気。その上ワインもすっごくおいしくて! その旅の最中でした、東京オリンピック・パラリンピック開催決定を知ったのは。

――当時は「報道ステーション」でスポーツキャスターを務めていましたよね。

そう。だから東京開催の一報を聞いて、「オリンピック取材をしたい!」と思ってもよかったのに、頭をよぎったのは「その頃には独立していないとなぁ」。フリーランスへの憧れというのは漠然とありましたが、はっきり意識したのがこのときでした。ただ、会社でやり残したことがあるうちは辞められないと思っていたので、今すぐにという話ではありませんでしたが。

――実際に独立したのは2019年4月。思い立ってから6年が経っています。

具体的に決めたのは前年の夏休み。ベトナムに行ったときでした。「あ、もう今年いっぱいで辞めよう」とはっきり決めました。思えば、旅行中に自分の将来に思いを巡らせることが多いですね。やっぱり日々仕事に追われていると今日明日のことで手いっぱいで、自分と向き合ってゆっくり考える時間がないですから。

ベトナム旅行(宇賀なつみさん提供)

ベトナム旅行は6月でしたが、9月に朝の情報番組「羽鳥慎一 モーニングショー」でMCの羽鳥さんの代役を1週間やりきって、その週の金曜日の午後に部長に自分の意志を伝えました。

――代役をやりきったことで「もう会社でやり残したことはない」と。

入社以来、天気、スポーツ、報道、情報バラエティーと一通りやらせていただいて、インタビューやロケも数え切れないくらいして。これ以上続けてもキャリア的には足踏み状態になるという気持ちもありました。

宇賀流、旅の楽しみかた

――旅を楽しむために心がけていることはありますか?

やたら調べすぎないこと。例えば誰かにインタビューするときって、事前に相手のことを調べるじゃないですか。でも知りすぎちゃうと、せっかくお話を聞いても新鮮なリアクションがとれなくなる。

旅も同じで、「あーこれね、写真で見た」と、答え合わせのようになっちゃうとつまらないから、情報を集めるだけ集めたら一回忘れることにしています。自分が見てどう思うかを大事にしたいから。

――写真で見るのと実際見るのとでは全然違いますか。

ぜんぜん違います! 絶対に、実際に現地に行くべきです。飛行機の便も増えて世界はこんなにも狭くなったし、ネットはどこでもつながるし、ホテルの予約も簡単だし。こんなに便利になったのに行かないのはもったいないですよ。

――一人旅と、誰かと行く旅。どちらが好きですか?

1人旅ですね。誰かと一緒だと、海外にいても東京のカフェにいるときと同じ話をしてしまう。でも一人だと明らかに現地の方とのコミュニケーションが増えるから楽しいんです。

目の前を行き交う人たちをただ眺めているのも好き。例えば朝食の風景でも、アジアはみんなグアーッと食べてバーッといなくなりますが、ヨーロッパはのんびりしていて、スペインなら、お昼過ぎたらすぐにシエスタも。街によって空気が違うので、いくら見ていても飽きません。

――そんな旅好きの宇賀さんは、9月から「&TRAVEL」で旅エッセー「わたしには旅をさせよ」の連載をスタートさせました。

タイトルは「可愛い子には旅をさせよ」からとったものですが、私はこの言葉が大好きなんです。実際、旅の経験はその人の魅力になりますよね。あと、「いくつになっても、結婚しても、たとえば母親になっても、私には旅をさせてくださいね」というアピールも込めています。

――どなたに向けてのアピールなんですか?

家族や仕事関係の方、友達、世の中に向けてのアピールです。ときどき「結婚しているのにそんなに一人で遊び歩いていて大丈夫?」と言われちゃうことがあるので。でも、私の家族は「どんどん行って、どんどん人に会っておいで」と言ってくれるし、旅の経験が仕事にも生きているし、ハッピーなことしかないと自分では思うんですけど……。

――宇賀さんの旅好きはご家族公認なんですね。

5月に行ったハワイも、たまたま1週間予定が空いて「ここしかない!」と思って行きました。だけど……、私、夫の誕生日をすっかり忘れていて。

――えっ!

行く直前になって気づいて「ごめん!」って言ったら、「33のおっさんの誕生日なんていいから行っといでよ」って言ってくれて。おわびと言うには足りないですが、一応共通のお友達に夫のお誕生日のお祝いをお願いして旅立ちました。

――宇賀さんの旅は、いろいろな方に支えられているんですね……。

本当にありがたいです。これからもコラムを名目に(笑)、私には旅をさせてもらえたらと思います。旅にまつわるお話のストックはいっぱいあるので、連載を楽しみにしていてくださいね。

(撮影協力:ハイアット セントリック 銀座 東京 衣装協力:Velnica.

PROFILE

宇賀なつみ(うが・なつみ)

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビュー。同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年にフリーランスとなり、現在はテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか!!」や、自身初の冠番組「川柳居酒屋なつみ」を担当。TBS ラジオ「テンカイズ」やTOKYO FM 「SUNDAYʼ S POST」など、ラジオパーソナリティーにも挑戦している。