• 危険をリアルに描写、歌舞伎に思わず注目――。機内安全ビデオにアテンションプリーズ

危険をリアルに描写、歌舞伎に思わず注目――。機内安全ビデオにアテンションプリーズ

飛行機が離陸する前に機内で流す安全ビデオに、航空各社が力を入れている。日本航空(JAL)は13年ぶりにリニューアルしたビデオで、乗客が緊急時に適切な行動をとらないと、どんな危険が起こるかをリアルに表現。全日本空輸(ANA)は昨年12月から、ビデオに歌舞伎俳優を登場させて乗客の興味を引く工夫をしている。

(文:&編集部)

海外、自社の事例を教訓にしたリアルな表現

スーツケースを持ち出そうとして通路をふさぐ男性、ハイヒールで脱出用スライドを破損する女性――。日本航空が9月から機内で上映している3分あまりのビデオには、こんなシーンが描かれている。

通路がふさがれ、脱出が遅れる様子=日本航空の機内安全ビデオ
荷物やハイヒールでスライドが破損する様子=日本航空の機内安全ビデオ

同社はリニューアルに際し、世界の航空機事故を検証し、緊急脱出時に乗客が手荷物を持ち出そうとして脱出の妨げになった例が多く報告されていることに注目した。実際に同社便でも、2016年2月、北海道の新千歳空港で右エンジンから煙が出てスライドで緊急脱出する際、乗客3人がけがをした。第三者の視点を取り入れるため設けた「安全アドバイザリーグループ」(座長=ノンフィクション作家・柳田邦男さん)からの助言も踏まえ、「起こりうる危険を具体的に表現することで、その行動の目的を理解し、必要性を認識してもらえる」と考えたという。

緊急脱出すれば実際に体験する視点でスライド滑降が体感できる描写や、援助の方法を複数の角度から説明するシーンなども盛り込まれている。

同社広報部の担当者は「お客様からも、『イメージしやすく分かりやすい』といった声が寄せられている」と話している。

乗客の目を引く、歌舞伎俳優監修の独創的な映像

全日空の機内安全ビデオの冒頭のシーン

昨年12月、約4年ぶりに刷新した全日空の機内安全ビデオは、隈取りのお面をした客室乗務員が登場するシーンで始まる。歌舞伎俳優の尾上松也氏の監修と、歌舞伎座を運営する松竹株式会社の全面協力を得て、歌舞伎俳優が機内の安全を説明する独創的な映像に仕上げた。歌舞伎を演出に取り入れることで、興味を持って最後までビデオを視聴してもらうことと、訪日外国人に日本の伝統芸能や文化に触れてもらうことを狙ったという。

歌舞伎俳優が出演する全日空の機内安全ビデオ

安全に関する表現も、従来より一歩踏み込んだ。例えば、脱出時に手荷物を持ち出さないように呼びかけるシーンでは、その理由(速やかな脱出の妨げになることと、救命衣の損傷を防ぐため)まで映像に盛り込み、乗客の理解を深めることを目指したという。

同社広報部によると、「楽しく最後まで見られた」「歌舞伎の所作なども忠実に再現されている」「日本の伝統文化を知っていただける良い機会」など好意的な反応が寄せられているという。

日本航空の機内安全ビデオ

全日本空輸の機内安全ビデオ