花のない花屋

人の心を贈る、オートクチュールの花屋(前半)

「花を通じて、人の心を贈る」という東信さん

「花を通じて、人の心を贈る」という東信さん

壁にある黒板にイメージを描いていく

壁にある黒板にイメージを描いていく

花をアレンジする空間は科学の実験室のよう

花をアレンジする空間は科学の実験室のよう

はさみもオーダーメードのこだわり

はさみもオーダーメードのこだわり

人間よりも植物を優先。室温は常に15度前後

人間よりも植物を優先。室温は常に15度前後

アレンジする部屋は地下にある無機質な空間

アレンジする部屋は地下にある無機質な空間

アレンジは日に20件ほど

アレンジは日に20件ほど

 いま世界中で注目を集める、フラワーアーティストの東信(あずま・まこと)さん。彼の手にかかると、植物がこれまで私たちが目にしたことのない姿に変わる。自然の姿とはまた別の、まるで新たな生命を吹き込まれたかのようによみがえる。

 海外の高級ブランドショップのショーウィンドウや蜷川実花監督の映画「さくらん」に登場する絢爛(けんらん)な花々。テレビや野菜系飲料のCMでの印象的なフラワーアレンジメントに、百貨店の広告ポスター……。活躍の場は、広告、アート、出版から企業の緑化事業まで年々広がりをみせている。しかし、出発点であり、仕事の原点でもあるのは「花屋」だ、と東さんは言う。

 もともとは、花とはなんの縁もないバンド少年だった。1998年、21歳のときに福岡から上京したのもミュージシャンになるためだった。演奏活動のかたわら、食べるために働き始めたのが大田市場だった。

 まもなく、なじみの客から認められ、麻布十番のスーパーの店先にある小さな花屋を任されるようになった。

「仕事を覚えていくうちに、市場で仕入れた在庫から売るというシステムに疑問を抱くようになったんです。古いものから売ったり、余ったものは捨てなきゃいけないのが嫌で」

 東さんは、花をただの“モノ”として扱いたくなかったという。

「もっとお客さんの顔を見て、誰かのためだけの花束を作りたくなったんです」

 そして、出した答えが、世界で初めての「オートクチュールの花屋」、つまり「花のない花屋」だった。今から11年前のことだ。

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人の心を贈る、オートクチュールの花屋(後半)

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