花のない花屋

人の心を贈る、オートクチュールの花屋(後半)

東さんがアレンジした花束

東さんがアレンジした花束

一つの花束に使った植物

一つの花束に使った植物

東さんがアレンジした花束

東さんがアレンジした花束

一つの花束に使った植物

一つの花束に使った植物

東さんがアレンジした花束

東さんがアレンジした花束

一つの花束に使った植物

一つの花束に使った植物

東さんがアレンジした花束

東さんがアレンジした花束

 いまは、拠点となる事務所を南青山に構える。実際に花をアレンジする部屋はやはり、地下にある。コンクリート打ちっぱなしの無機質な空間。壁にかかる大きな黒板には、スケッチやアイデアが書きつけられ、ガラス瓶がずらりと並ぶ。白衣の東とは異なり、10人いるスタッフは黒のワーキングコートをまとい、花屋というより科学の実験室のようだ。

「パリでコンクリート打ちっぱなしの肉屋を見たときに、“これだ!”と思ったんです。肉にいい環境なら、花にもいいはずでしょ。花屋も肉屋と同じで、生き物を“殺して生かす”のが仕事ですから」

 花の扱いには細心の注意を払う。鋏(はさみ)は京都の老舗「金高刃物」のオーダーメイド。室温は常に15度前後で、湿度は約65%。花をもっともいい状態で客に届けるため、人間よりも植物を優先する。

「花は、『1日で10歳年をとる』と言われるほど、時間が命なんです。大袈裟に言えば、一時間ごとに表情が違う。変化していくということそのものに僕は惹かれます」

 だから、枯れていく姿も美しく見せたいと思う。

「一つの花の裏にもう一つ花を隠しておくなど、花束がいっぺんに枯れてしまわないように気をつかったりします」

 花のアレンジは日に20件ほど。オーダーの内容はこと細かに聞く。

「『華やかなブーケを』と言われても、いろんな華やかさがありますよね。だから、贈る目的や花のイメージだけでなく、相手の趣味や好きな音楽、好きな食べ物など、まずはヒアリングするんです。それを聞いた上でスケッチをし、花を仕入れ、アレンジメントをつくっていきます」

 最近は、誕生日や結婚記念日といった特別な日以外にも花を買う人が増えたという。たとえば、「海外出張に行ってる間に妻が寂しくならないように」「船長だった祖父の命日に、舟の形の花を」「たくましく生きて欲しいので、雑草でつくった花束を贈りたい」など、多彩なリクエストに応えてきた。そして、3・11後は、花の需要が高まったと感じている。

「花に実用性はない。なにかを変えることはできないかもしれないけど、確実に心の栄養にはなっている。花にしか伝えられないことがあると思う」

 人にはきっと、命あるものが必要なのだ、との思いを強くしている。
「花を通じて、人の心を送る。それが僕の目指している花屋なのです」

(ライター・宇佐美里圭)

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

人の心を贈る、オートクチュールの花屋(後半)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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人の心を贈る、オートクチュールの花屋(前半)

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