リノベーション・スタイル

<1> 3部屋つなげ、光あふれるLDKに

 Iさん夫妻は、都心部に住みたいとのことだったので、築年数が古くても比較的手頃で良いマンションの多い泉岳寺、品川、目黒エリアを中心に物件探しからお手伝いしました。10軒ほど内覧をしたところで、ちょうど希望と合うようなヴィンテージマンションが見つかりました。コンパクトなんですが、エントランスが広くて雰囲気がよく、階段がヨーロッパのアンティーク風。奥様がすごく気に入られたんです。

 実は、それって中古マンションを購入する際の大切なポイントなんですよね。極端にいえば、内覧で見るべきは、部屋そのものではないんです。「共用部分はどんな雰囲気か」「部屋から何が見えるか」「どこにあるか」「どんな管理、運営をしているか」といった点。駐車場やゴミ置き場、掲示板などを見るだけで、なんとなくどういうコミュニティーなのかわかるんですよ。

 つまり、「自分では変えられない部分」をチェックするのが大切なんです。部屋の中は見なくてもいいくらい。どうせ全部変えるわけですから。

 このリノベーションのポイントは、まず、コンパクトな部屋をいかに広く見せるかということでした。そこで、3部屋をつなげて大きめのLDKにし、バルコニーからの光が全体にまわるようにしました。その分、ベッドルームは思い切ってシングルベッドがふたつ入るだけの大きさに。その代わり、LDKとベッドルームの間仕切り壁の上部を回転窓にして、外の光と風を寝室にも取り込むように工夫したのです。

 コンセプトは家の名前にある通り「Eclipse(月食)」。月と太陽、陰と陽が夫婦を表しているのですが、両者の世界観をうまく出そうと考え、LDKの両脇にある壁をそれぞれの壁にしたんです。入って右側が、ご主人の壁。「倉庫のような雰囲気」をリクエストされたので、内装をはがしたあとのラフな感じに仕上げています。本、CD、テレビやプロジェクターのスクリーンなどはすべてご主人の趣味のもの。反対側の左は、奥さんの壁です。広いキッチンが欲しいとのことだったので、4メートルほどの長さのキッチンを作りました。外に見せながらも収納を確保して隠せるよう、バランスを配慮しました。

 バスルームは、ホテルタイプでいいということだったので、一室にまとめました。「雰囲気をがらっと変え、色っぽくしたい」というご主人からの要望があり、白とゴールドのタイルでまとめています。ドアはわざわざ探してきたアンティークで、けっこう凝っているんですよ。

 将来的には住まいを移すことを考えていらっしゃるので、全体的にシンプルにして、売却や賃貸に出しやすいようにも配慮しています。 私たちが手がけるのは単なるリフォームではありません。住む人それぞれの人生観や好み、スタイルにあわせて暮らし方を「編集」する。そんな思いで、世界にふたつとない家づくりをお手伝いしています。(談)

(構成・宇佐美里圭)

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

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<2> 本、テレビ、食器も納まる壁一面の棚

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