花のない花屋

カフェ成功の陰に、「ドラえもん」の存在

一見キザなことをサラリとやってくれるオジサマへ贈るバラの花束

一見キザなことをサラリとやってくれるオジサマへ贈るバラの花束

〈依頼人プロフィール〉
桐澤 智子さん 33歳 女性
静岡県在住
カフェ「cucurucu」店主

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静岡・三島に開いたカフェが昨年末、2周年を迎えました。30代になって会社を辞め、地元に戻って開いたお店です。ゼロから一人で始めたお店がここまで続いているのには、ある人の存在がありました。

以前勤めていた広告会社の先輩だったキジマさん(59)。出会ってから、かれこれ10年になります。仕事での接触はほとんどなかったのに、いまだに折に触れて手紙やメールをかわし、食事に連れて行ってくれることもあります。

私が会社を辞めたときは、「これで、本当の友達付き合いになるね」といって、バラの花束とバラの形をした大きなチョコレートをくれました。恋人でもないのに、一見キザなことをサラリとやってくれるオジサマです。年の離れた親友といった方がいいかもしれません。

キジマさんが連れて行ってくれるレストランやバーは派手さはないけれど上質で、オーナーのこだわりが感じられるお店ばかり。飲み始めると、「ドラえもんのポケット」と名付けている自分の懐から、おすすめの本や新聞記事、広告の切り抜きなどをどんどん出してきます。正直、「そんなに感動するか?」と思うような若い女性が好みそうな小説だったり、「昔のものをよく保存しているな~」という程度の記事だったりします。

でも、それらを見ているとキジマさんが心を動かされた瞬間がわかるのです。「あ、いいな」と思ったものを、その瞬間にコレクションしておく。そして、私に会うときには、私が喜びそうなものを選んでポンポン出す。自分の素直な気持ちや、心の高まりをとても大切にしているのが伝わってきます。還暦近く、会社でも重役についているような男性にはなかなかできないことだと思います。

いま、私がカフェを営みながら大切にしているのは、自分が素直にいいと思うものをすすめる感覚です。展覧会やイベントなどを通して、情報発信も積極的にやっています。そんな「ドラえもんのポケット」感覚は、キジマさんから学んだことです。

お店が2周年を迎えられた感謝を込めて、ぜひキジマさんにお花を贈りたいです。できれば、バラの花を。

花束の花材。30本のバラの周りに20種類の花が散りばめられている

花束の花材。30本のバラの周りに20種類の花が散りばめられている

花束を作った東さんのコメント

“ドラえもんのポケットを持つおじさま”ということだったので、まず頭に浮かんだのは、いろいろな花を使うということ。古今東西様々なアイディアを持っている、というのを多国籍な花で表現しようと思ったんです。

赤いバラを使ってほしいというご希望があったので、中心に赤いバラを30本ほど集め、その周りに約20種類の花をバランスよく散りばめました。菊、アネモネ、ラン、ゼンマイ、ハイドランジア、エクメア、アンスリウムなど・・・。上質なものがお好きとあったので、珍しい植物も入れるようにしました。

真ん中の“チランジア”はパイナップル科の植物で、お花が枯れてしまった後も、植え替えればずっと持ちます。大切な方に感謝の気持ちを贈るので、もらったあとも育てていけるものがいいかなと思ったんです。

“カラフル”と一言で言っても、“ポップなカラフル”や“キュートなカラフル”などいろいろあります。今回は年配の男性だったので、シックな“渋いカラフル”でまとめました。

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

カフェ成功の陰に、「ドラえもん」の存在

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


30歳のひとり娘から57歳の父に贈る花束

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