リノベーション・スタイル

<6> 1万枚のCD収納、寝室はなし

 今回はラジオDJをやっているご夫婦のお宅です。もともと都内の団地に住んでいらっしゃったのですが、CDなどが多く、もう少し広い部屋に引っ越したいと、新しいマンションを探していらっしゃいました。仕事柄、夜も遅いので、都内の中心部で物件を探していたようですが、たまたま同じ棟の上の階が空いたんです。

 早速、見に行ってみると景色が素晴らしかったんですね。目の前が公園なので、視界が開けていて明るいんです。「絶景だね!」「他のマンションに引っ越す必要はないね」とおふたりとも盛り上がり、自分たちの住んでいた場所に改めて価値を見出されたようです。

 そこで、まず奥様がリノベーションを提案されましたが、ご主人は「リノベーション? なにそれ? 要はリフォームでしょ」と最初は消極的なようでした。でも、私たちと打ち合わせを重ねるうち、ご主人の方がかなり入れ込んできてくださって(笑)。

 第1のテーマはとにかく「収納」でした。1万枚におよぶCDをどうするか。しまったままの収納ではなく、頻繁に出し入れする収納なので、そこをいちばん考えましたね。部屋の壁すべてをCDの棚にする案もあったのですが、「どこへ行ってもCDに囲まれているのは嫌かも・・・」と奥様が反対。結局は1カ所の棚に収めることになりました。幅4メートルほどある棚で、前後2列になっています。一番上の棚はボックスセットの大きさに合わせました。

 このお部屋の特徴は寝室がないことです。当初は寝室もあるパターンも作ったのですが、話を進めていくうちに、ご主人が「畳の部屋が欲しいな」とおっしゃって。そこで小上がりを作る案を検討していると、「2人だから寝室はいらない」となり、畳に布団を敷くことに落ち着きました。小上がりの壁にある右側の引き戸が布団の収納です。

 左側の引き戸を開けると、ウォークイン・クローゼットへつながり、そこを抜けるとサニタリーエリアを経て、バスルームへ。お風呂に入って、着替えて、寝室へという動線があり、それと平行して、土間、キッチン、ダイニングをつなぐ動線があります。

 ウォークイン・クローゼットは先にIKEAの家具を選び、それがぴったりと収まるように設計しています。そうすることでかなりコストを抑えられました。

 お風呂は、入り口手前にシャワールーム、その奥に浴槽がある作りになっています。これは、お風呂の壁が壊せないという建物の事情があったため。体育座りでしか入れない小さな浴槽と、洗い場をくっつけて一つの大きな浴槽にし、シャワールームを外へ広げました。ご主人は「ほとんどシャワーしか浴びない」とおっしゃるので、おふたりの用途にもあっています。お風呂は異空間にしたかったので、白いカプセルのような空間に。シャワールームはタイルをふんだんに使っています。扉はガラス張りにして、広さを感じられるようにしました。

 同じ間取りの部屋なのに、リノベーションによって生活がまったく違うものになった、と喜んでいただいています。(談)

(構成・宇佐美里圭)

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

<5> R壁で生まれた、新しい廊下

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<7> 古道具の存在感を引き立たせる

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