リノベーション・スタイル

<7> 古道具の存在感を引き立たせる

 最初にリノベーションのご相談にいらしたとき、奥様が「こういう家具をこういう店で買います」とはっきりおっしゃっていて、すでに部屋の世界観ができあがっていました。そのため、モノを探しながら同時進行で設計を進めていくことになりました。

 家の名前、「doux」とはフランス語で“穏やかな”とか“あたたかな”という意味。その名の通り、山田さんご夫婦がセレクトした家具はどこかほっとできるアンティークが中心です。すりガラスの窓や菱形の文様の入った引き戸など古建具がいたる所で使われており、キッチンの食器棚などはタバコ屋さんのショーケースです。モノ自体の存在感があるので、部屋は家具がなければ物足りないくらいシンプルにしました。

 キッチンはこちらで作りましたが、色はすべて家具に合わせています。意外と大変だったのは古い扉の立て付け。高さや幅を調整しながらやりましたが、年代ものだとけっこう難しいですね。

 奥様の趣味が書なので、お部屋には書をするためのワークスペースがあり、床の間のような空間の玄関には作品が飾ってあります。小さな子どもがいると、そういった装飾的なスペースを諦めてしまう方もいるかもしれませんが、実際は逆のような気がします。新しい家に引っ越すと、子どもは意外とモノを壊したり汚したりしないんですよね。親の緊張感が伝わるのかもしれませんが(笑)、子どもも「すてきだな」と思ったら、汚さないものです。

 大事なのは、まず自分たち親が好きな暮らしを優先し、もし子どもが何かをやったら、叱るなり許すなり対応すればいいのです。子どもと一緒に、暮らしって何だろうと考え、感性を育てていく。そんな「住育」も必要なんじゃないかと思います。(談)

(構成・宇佐美里圭)

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

<6> 1万枚のCD収納、寝室はなし

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<8> 部屋のなかに自転車をつるして

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