花のない花屋

出産を前に、ウェディングプランナーの母へ

バリバリ働く仕事人。でも、しゃべるとコテコテの大阪のおばちゃん。そんな母へ

バリバリ働く仕事人。でも、しゃべるとコテコテの大阪のおばちゃん。そんな母へ

〈依頼人プロフィール〉
尾崎 友香さん 28歳 女性
東京都在住
レコード会社勤務

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私は5月に母になります。母に妊娠を報告したとき、「これまで何もしてあげられんくてごめんな。でもお母さんの誇りは、兄妹みんながいい子に育ったこと。お兄ちゃんのお嫁さんには専業主婦になってもらいたいけど、あんたにはお母さんみたいに働き続けてほしいわ」と言われました。そのどこか矛盾した言葉に、母の愛情を感じました。

ウェディングプランナーとして働く母は、カラフルなヴィヴィアンタムの洋服が好きで、見た目も気持ちも若くて元気。60歳近くなったいまも、結婚式場の支配人としてバリバリ働く仕事人。でも、しゃべるとコテコテの大阪のおばちゃんです。

母は、私が小学校低学年の頃からこの仕事一筋。朝8時に家を出て、夜10時に帰ってくる生活なので、私はいわゆる鍵っ子でした。京都の中高一貫に通うことになり、大阪からより京都に近い祖母の家に引っ越し、高校卒業後はすぐに上京したので、両親と暮らしたのは小学生のときだけです。周りの友達を見ると、お母さんはご飯を作ってくれたり、恋愛相談に乗ってくれたり。私は忙しそうな母を見て、「仕事が大事なんやろうなぁ」と感じながら、どこかで母娘の関係を諦めていました。

私はレコード会社で働くようになり、毎晩、日付の変わるころに帰宅する日々を送るようになりました。でも知らず知らずのうちに母の背中を見ていたのか、いつしか「自立したかっこいい母親になりたい」というのが私の夢になっていました。

いま、子どもを産む立場になって初めて、こう思うのです。母なりに育児と仕事の間で葛藤しながら、私を大事に育ててくれていたんだなあ、と。結婚前には、子どもを産んだら仕事を続けようか迷っていましたが、いまは続けたいと考えるようになりました。母には妊婦としての相談より、仕事を今後どうしていきたいか、という話をよくします。

親族のなかでも、兄(34歳)以来となる男の子の誕生に、母も喜んでくれています。これまで育ててくれた母への感謝と尊敬の気持ちを伝えられるような花を贈りたいです

ウェディングプランナーの母に贈る花束に使った花材

ウェディングプランナーの母に贈る花束に使った花材

花束を作った東信さんのコメント

“自立したかっこいい女性”であるお母様にはシックな花が似合うはず。そう思い、オドントグロッサムというランの一種と、アルストロメリアオバレイという珍しい花をアクセントにしてまとめました。ヴィヴィアンタムの洋服には黒地に赤い牡丹などオリエンタルなものが多いので、そんな雰囲気も取り入れています。“コテコテの大阪のおばちゃん”という言葉にも惹かれたので(笑)、シックにまとめすぎず、華やかさも足しました。赤いダリアやアンスリウムを差した側が“シックでかっこいい世界”。赤のオールドローズやスカシユリ、黄色い菊などを差した側が“派手で華やかな世界”。見る方向によって表情が違います。

ポイントは黄色い菊。これをはずしてしまうと、男性にプレゼントしてもいいくらいかっこよくなってしまいます。この黄色が入ることで、全体として華やかな雰囲気になっているんです。

その他にも、中心が突起状になっている黒っぽいラナンキュラスや一重咲きのバラなど、珍しい花がアクセントに隠れています。結婚式場でたくさんお花を見てきているお母様にも楽しんでもらえるはず。

一番下をぐるりと囲んだリーフワークはブラックタイという葉で作っています。全体に赤い花を、縁取る黒で引き締めました。一枚60cmくらいの大きな葉を6等分くらいに切って、数枚重ねてから波のように織ったものを60個くらい、ワイヤーでまとめて差しています。

ダリアは枯れやすい花ですが、中心に差したランは長持ちします。ぜひ時間差で楽しんでください。枯れた花を抜いて、そこにご自分で新たに花を差すと、世界にひとつしかないオリジナルのアレンジにもなりますよ。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

出産を前に、ウェディングプランナーの母へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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