花のない花屋

保育園長になった親友へのサプライズ

新しい人生を歩み始めた若き園長先生へ贈る花束

新しい人生を歩み始めた若き園長先生へ贈る花束

〈依頼人プロフィール〉
中村 建吾 31歳 男性
東京都在住
コンサルティング会社勤務

    ◇

2年ほど前、僕の親友は福井に帰って家業の保育園を継ぐことを決意しました。僕も彼もコンサルティングの仕事で、国内外を飛び回っていたころのことです。

30歳を目前に、やりたいこともあっただろうし、葛藤もあったと思います。それでも決断した彼を、こちらも全力で送り出そうと考えました。

そこで、「合コンだ」と彼を誘い出してサプライズ送別会を開きました。急な呼びかけにもかかわらず、彼の友人や同僚ら50人ほどが集まりました。

そのとき彼は、みんなの前で決断の理由をこう語りました。

「実は父がガンで。いま帰らなきゃ後悔すると思った」

こうして、保育園の園長としての人生を歩み始めたのです。

そんな園長先生には、僕が一生かかってもかないそうにない魅力がひとつあります。それは、「人を惹きつける力」。

決してマメなタイプではありません。むしろ筆不精で、メールの返信もおろそか。それなのになぜ、あれほどまで人を惹きつけるのか。答えは、決して人のまねをしない、オリジナリティーを持っているから。

中学1年で初めて出会ったときは、坊主頭に大仏のリュックサック姿で登場。ついたあだ名は「マルコメ」。インパクトが強すぎるそのいでたちに、友人になることはないと内心思ったはずが、振り返れば、僕は彼からたくさんの刺激を受けてきました。

耳慣れない洋楽のロックを知ったのも、深川水かけ祭りでみこし担ぎをしたことも、彼の影響でした。

そんな彼にはいつもサプライズを贈ってきました。

誕生日には、プリン好きという彼の家に忍び込んで冷蔵庫をプリンで埋め尽くしたり、高級ホテルのエステ体験をプレゼントしたり。男同士だと多少誤解を招きそうなものもありますが、いつも新しい世界を見せてくれる彼に対する、僕なりのちょっとした恩返しなのです。お互いの恋人に「あなたたちの関係って、大丈夫なんだよね?」と心配されることだけが弊害でした。

気がつくと、いつも人の中心にいて笑顔を光合成する男。そんな若き園長にあらためて贈りものを。そう思って、花束を選びました。

男が男に贈るにはインパクトが大事。「時限爆弾的な」花束に使われた花材

男が男に贈るにはインパクトが大事。「時限爆弾的な」花束に使われた花材

花束をつくった東信さんのコメント

男が男に何かを贈るというのはいいですよね。しかも、それが花だというのがかっこいいじゃないですか!

個人的には、男性へ贈るお花を作るのはけっこう好きなんです。男の部屋にあっても様になるように、かっこよく仕上げたいと気合いを入れました。

キーワードは、“人を惹きつける力”“光合成する男”。太陽のような彼の存在を大きなエアープランツのキセログラフィカで表しました。全体はグリーンやライムグリーンのグラデーション。キセログラフィカの下には、実は松を敷き詰めています。男っぽいでしょ?

ただ、それだけだと男臭くなりすぎるので、ハーブの葉を入れて“癒し”を加えています。手で葉を軽く揉むと、いい香りがしますよ。キセログラフィカの脇にあるのは、ガーベラのマリモという種類。僕はよく使いますが、けっこう珍しいものです。そのほか、トルコキキョウ、カーネーション、なでしこ、ラナンキュラス、チューリップ、パフィオペディラム、フリチラリア、リュウカデンドロンなどを入れています。

実ものや葉っぱは素材感を重視して選び、柔らかいものと固いもの、異質な形をしたものをミックスして、触ってみたくなるようなアレンジにしました。

エアープランツは、空気中の水分を吸って生きているので、水をやる必要はありません。そのまま室内の窓辺などに置いたり、吊るしたりしておくだけ。1週間に1度くらい霧吹きをすればOKです。

男が男へ贈るものは、インパクトが大事。贈られた人が「何これ!」と思わず叫びだしそうなもの、時限爆弾的なものにしたいなと思って作りました。

  

  

  

  

(ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

保育園長になった親友へのサプライズ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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