花のない花屋

15の夜を越えよ 息子への進学祝い

何があっても「離婚したせいだ」とは言わなかった息子へ

何があっても「離婚したせいだ」とは言わなかった息子へ

〈依頼人プロフィール〉
香さん 44歳 女性
千葉県在住
エンジニアリング会社勤務

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今年の1月で、めでたく(笑)離婚10周年を迎え、11歳の長女と15歳の長男との母子暮らしもすっかり板についてきた今日この頃。長男は無事受験を終え、この春から高校生になります。

ムズカシイ年頃になった長男が「15の夜」のごとく学校でちょっとした問題を起こし、心理的な距離を感じた時期もありました。見た目は素朴な田舎の少年。テニス部に入っていますが、どちらかというとインドア派です。

これまで問題など1度も起こしたことがなかったのに、ある日突然、学校から電話があったのです。それだけで私は心臓が止まりそうなほどびっくりしたのに、息子と友達がクラスの女の子をいじめて泣かせてしまったとのこと。いろいろとストレスを抱えていたのかもしれませんが、「まさか、うちの子が!」という心境でした。何度も話し合い、反省していると最後は本人が言いましたが、自分の子とはいえ知らない一面を見た思いでした。

また、進路でも意見が対立し、険悪な雰囲気が続きました。昔なら私の意見を聞いていたのに、「俺はそう思わない」とはっきり言われ……。ああ、もう私の話は100%受け入れてもらえないんだ、と少しショックでした。

でも、何があっても「お母さんが離婚したせいだ」とは言わないのです。父親が奪われた家庭で育つことになったのは私たちのせいなのに、離婚について責められたことは1度もありません。言葉にはしなくても、心の中で思うことはあると思うのですが……。

両親のもとで育った私には、本当の意味で彼らの気持ちはわかりません。口下手でマイペースな息子ですが、私をののしることもなく、ここまでついてきてくれたことに感謝しています。

まだまだ高校、大学と脛(すね)はかじられますが、義務教育が終わってとりあえず一区切り。当たり前ですが、遅刻することなく、毎日学校に通って部活に勉強に頑張ったことを母から表彰したいと思います。口うるさく気性の激しい母から、高校生活がんばってね、という意味でもお祝いの花束を贈りたいと思います! 離婚によって少年の心を少なからず傷つけたことへのお詫びの気持ちもちょっぴり混ぜて。

私自身、会社の送別会や両親など、大人への花束を注文することはよくありますが、子どもへ贈るのは初めてです。これまで、クリスマスに「お花を買って」と長女に言われたことがありましたが、花を買うお金があったら、食べ盛りの子どもたちのためにお肉を買ってしまう、“花より団子”な日々を過ごしています。それだけに、思春期のニキビ面の少年に、東さんがどんなお花を作ってくれるのか楽しみです。

美しいだけじゃなく、力強い花を

美しいだけじゃなく、力強い花を

花束を作った東信さんのコメント

15歳というのは多感で、難しい年頃ですよね。僕自身、3人兄弟の中でやんちゃに育ち、高校生のときは絵に描いたような野球少年。花といえば、プロレスラーが投げつけるもの、みたいなイメージしかありませんでした(笑)、でも、あのときもし誰かから花をもらっていたら、人生は少し違ったかもしれない……。だから、若い人に花を贈るときは、いつも背筋がぴんと伸びるような気持ちになるのです。

応募の文章を読ませていただくと、オレンジ、イエロー、緑など“青春してる”という感じの色が浮かんできました。息子さんは花をもらうのは初めてでしょうから、美しさだけじゃなく、力強さも感じられ、花に興味を抱いてもらえるような花材を使いたいと思いました。

まず目を引くのが大輪のガーベラです。だれが見ても「うわ、すごい!」と思うほどのインパクトがありますよね。まわりにあしらったのは、チューリップ、ラナンキュラス、トルコキキョウ、アネモネ、サンタンカ、ハイドランジア、菊、ドラセナなど。菊は花が開いている状態と花が閉じている状態を混ぜています。同じ花には見えないでしょう? こういうのは僕の得意技です。

葉の先端が面白い形をしているのはポリポジウム。花の一番下にはドラセナをたくさん入れました。ぐるりと伸びているのは、つる性多肉植物のリネアリスです。エアープランツも二つ。お花が枯れたら、息子さんと娘さんにぜひ育ててもらってください。

高校生は、もしかしたらお花よりお金をもらう方が嬉しいかもしれないけど(笑)、「俺、花をもらったよ。ワオ!」というインパクトを与えられたらうれしいです。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

15の夜を越えよ 息子への進学祝い

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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