花のない花屋

東信を目指す、フラワーデザイナーの彼に

  

〈依頼人プロフィール〉
津島千夏さん 20歳 女性
東京都在住
専門学校生

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私の彼は、いま専門学校でフラワーデザインを学んでいます。もともとは4年制の大学で経済学を専攻していたのですが、昔から好きなのは物作りや植物。花をやりたいという夢をあきらめきれず、大学卒業後に専門学校に入り直しました。私もその専門学校で勉強をしていて彼と出会いました。

彼が進路で悩んでいたときに、偶然テレビのCMで見たのが、東さんの作品だったそうです。初めて見る変わった植物、独特な色遣い、どこか毒のある雰囲気……。これまでに見たことのない作品に衝撃を受け、一気に東さんの世界にのめりこんでいったようです。そして、「自分も花を使って表現したい」と花の道に進むことを決心しました。今でも東さんは彼の憧れであり、目標とするフラワーアーティストです。

今年2月に、彼は初めて全国のプロ・アマが参加するフラワーデザインのコンテストに参加しました。「出るなら絶対に賞をとってみせる!」と、気合いを入れて臨み、小さなオブジェのような作品を出展しました。“自然”にこだわり、大半の植物を公園や河原などに生えているものを使って作りました。そして、初出場ながら奨励賞をいただくことができたのです。ベテランの参加者に比べて完成度は少し落ちますが、フレッシュな感じが私も気に入っています。

受賞はスタートでしかありませんが、「切磋琢磨しながら、これからもお互いがんばろうね」という気持ちを込めて、東さんにお祝いのお花を作っていただけないでしょうか。

彼は24歳で、趣味は美術館巡りです。休みの日は、よく2人で展覧会に行ったり、あちこちに花を見に行ったりします。好きな色は黒、緑、青。彼の部屋にはドライフラワーや観葉植物、エアープランツなど植物がたくさん飾ってあります。

もともと2人の趣味や好きな花は違いましたが、最近ではだんだん似てきたような気がします。私は多肉植物が苦手でしたが、彼は昔から大好き。「えー、ありえない!」とよく言っていましたが、今では私も大好きです。花を見ても絵を見ても、私がいいと思ったものは彼もいいと思っていることが多く、お互いに影響されまくりです(笑)。

あと1年で私たちも卒業。彼の最終的な目標は、東さんのように完全オーダーメイドの花屋を開業することだそうです。私も花屋に就職をしたいと思っています。彼の輝く未来と活躍を期待して、東さんの個性が爆発するような、生命力溢れる花束を贈ることができたら嬉しいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

彼は多肉植物が好きとのことなので、大きなディックスピンクを中心にまとめました。この多肉植物、僕も好きでよく使うんです。淵が赤いフリンジ状になっていて、お花みたいですよね。根っこがちゃんとついているので、このまま水に差しておいても長生きしますよ。

多肉植物以外は、思い切ってすべてリーフワークだけでアレンジしました。使ったリーフワークは3種類。“つんつん”“重ね”“重ねウェーブ”と僕らは呼んでいるのですが、その3種類を組み合わせています“つんつん”と“重ねウェーブ”がルスカスの葉、“重ね”がシキミアの葉を使っています。ぜひ、葉っぱも抜いてみて、リーフワークの作り方を勉強してみてくださいね。

彼は僕を目標にしてくれているとのことですが、僕なんかを目指してちゃだめですからね(笑)! そんなちっちゃい目標じゃなくて、もっともっと大きい目標を早く見つけて頑張ってください。今回のアレンジは、僕からのそんなエールも込めています。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

東信を目指す、フラワーデザイナーの彼に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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