リノベーション・スタイル

<25>押入れを地中海カラーのパントリーに

 ご夫婦は結婚を機に家を買うことになり、通勤に便利な都内で部屋を探していらっしゃいました。偶然出会ったこちらの物件は1階で庭付き。マンションというより戸建ての感覚です。

 ただ、壁式構造のため、リノベーションをしても間取りはほとんど変えられません。そこで、部屋ごとに雰囲気をがらりと変え、つながりを感じながらも違う世界観の部屋を作っていくことになりました。

 一番大きく変えたのはLDKの位置です。現在の寝室の位置にあったキッチンを、窓側の明るい空間にもってきました。奥様がイギリスのブランドの食器がお好きだったので、キッチンは青と白を基調にした地中海カラーでまとめています。タイルやパントリー、取っ手の瀬戸物の青は渋めの青なので、かわいらしくも、少し大人っぽい雰囲気です。ちなみにパントリーはもともと押し入れだったスペースです。

 キッチンはII型で比較的ゆったりさせつつ、シンクはテーブルに合体させ、コンパクトにしています。

“コンパクトにできるところはコンパクトに。ゆったりさせるところはゆったりと”。それが今回のテーマの一つでもありました。

 例えば、バスとトイレは一室にまとめ、玄関のシューズインクローゼットは扉をなくして、パイプだけで靴をたくさん収納できるように計算しています。一方、庭のデッキは幅1メートルくらい取り、小さなテーブルや椅子が置けるくらいの広さにしています。どこをコンパクトにして、どこを広く使うか。一つ一つ吟味しながら造りました。

 以前キッチンだった空間は主寝室になりました。普段はガラスの扉で仕切り、ぼんやりと中が見えるようにしています。室内は、ご主人の希望で一部をグリーンにペイントしました。間接照明を入れたことで、グリーンが光に反射して、部屋全体がうっすらとしたグリーン色になっています。

 壁式構造なので、どうしてもそれぞれの部屋が分かれてしまいますが、それを逆手に取り、部屋ごとに違う世界観を出すようにしました。同時に、窓を介して他の部屋と視線で繋がったり、ガラス扉にしたり、扉を開けるとつながったりという工夫をしています。

 スケルトンにして全面的にリノベーションできる場合は、動線を作って空間で操作しますが、壁式構造の場合は、スタイルや色など世界観で操作することによって、より魅力的な住環境を造ることができます。

(構成・宇佐美里圭)

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

<24>シャープな「独房」にレンガのアクセント

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<26>間取りはそのままでも、“広場”で一変

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