花のない花屋

メジャーデビューした、21歳の青年に

  

〈依頼人プロフィール〉
伊藤さん 46歳 女性
東京都在住
看護師

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2011年の秋に、友人からメールが届きました。「素敵なアメリカンがいるの。ニコラス・エドワーズってYouTubeで検索してみて!」と。さっそく調べてみると、彼は19歳の美しいアメリカ人青年。YouTubeではMr.Childrenの「innocent world」を熱唱していました。身長186センチ。すらりとした長身のブロンドで、王子様のような風貌。歌唱力もあり日本語も驚くほど完璧です。

夢中になってすぐに彼のことをネットで検索すると、日本テレビの「のどじまん ザ!ワールド」で優勝した人だとあります。アルマーニなどのモデルとしても活躍しているようです。アメリカのオレゴン州出身で、愛称はニック。両親ともアメリカ人ですが、14歳から日本語の勉強を始め、アメリカでは高校4年間で取る日本語の単位を2年で習得したそうです。東京と静岡に短期留学をしたこともあり、高校を卒業する半年前に日本への片道航空券を買って、卒業式の翌日に来日したことも知りました。今では、日本語検定1級も持っているそうです。

当時、私は神経系の病気療養のため、都心から郊外に転居したばかりでした。とても寂しくて、たびたび虚無感に襲われていましたが、ニックのYou Tubeの動画やブログ、ツイッターを見ると、とても励まされ、力がわいてくるようでした。

彼は日本人じゃないのに、とても日本人的な感覚を持っていて、古風な日本語も自在に操ります。「閃(ひらめき)きという漢字が好き」と言ったり、ちょっとを「一寸」と書いたり。日本語の単語帳も実家に山のようにあるそうです。伝統芸能にも興味を持ち、野村万蔵先生に弟子入りして、狂言まで習っているそうです。

ものすごく努力家なのに、とても謙虚。そんなニックの姿を見るたびに、「私も頑張らなくちゃ」と思える。彼の歩む道程に、いつも追いついていくように応援してきました。活躍を見ているだけで、心が明るくなっていくのです。

そんな彼が、21歳の誕生日となる7月31日にメジャーデビューしました。この数年間、私の心の支えとなっているニックに、メジャーデビューと誕生日のお祝いを贈りたいです。彼の出身地・ポートランドの花はバラだそうです。バラの王子様のようなイメージで作っていただけると嬉しいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

ニコラス・エドワーズさん出身のポートランドは、アメリカで最大規模のバラ試験場がある街。バラがとても有名なので、バラづくしでまとめてみました。全部で12種類のバラが入っています。

バラは、種類や色を組み合わせすぎるとお互いぶつかってしまい、アレンジが意外と難しい花です。なので、今回は黄色、赤、濃いピンク、オレンジといった暖色系の間に、ところどころ発色の鈍い色を入れて全体をなじませました。あまりない色合いのブーケになったかな、と思います。

咲き方も、カップ咲きや八重咲きなど、いろいろな種類のものを入れました。なかでも珍しいのは、バラの花の中から、もう一つバラが咲いている「エキサイティング・メイアン」。フランスで生まれた品種です。

花の上にあしらったベゴニアの葉は、全体のバランスをとるために模様の強いものを選びました。大中小の3枚の葉を重ねています。多肉植物のドラゴンフルーツは、オレゴン州の砂漠をイメージして加えました。

バラのアレンジは女性的になりがちですが、今回は、贈られる人の「バラの王子様」というイメージに合うよう、男性でも楽しめるアレンジにしました。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

メジャーデビューした、21歳の青年に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


40年育てた梅の木が枯れないように

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