リノベーション・スタイル

<31>築48年でも、高級スイートルームに

 Tさんには、最初から「ホテルのスイールームのような部屋にしたい」というテーマがありました。ホテルが好きで、国内外いろいろなホテルに泊まっているとのこと。なので、「こんなバスルームにしたい」「家具はこんなものを置きたい」と、細かいところまで明確に部屋のイメージを描いていらっしゃいました。

 職場から30分圏内という条件で探した末に出会った物件は、昭和38年に建てられた低層マンション。角部屋の2階で、リビングからは駐車場の奥にある木々が望めて、とても落ち着きます。

 初期の打ち合わせで、個室や仕切りはすべてガラスにするという案が出ました。そうすることで、視覚的には広々としたワンルームでありながら、音はしっかり遮断され、機能としては1LDKにできます。外の緑のある風景も、どこからでも目に入ります。

 最終的にガラスの壁で囲んだのはベッドルーム。玄関を抜けると、まずベッドが目に飛び込んできます。でも、ガラスの壁越しに、奥にあるリビングや外の風景まで見通せて、「うわあ!」となるはず。あえてぐるりとベッドルームの周りを歩いてから窓のあるリビングへ導くように設計しました。回遊性を持たせたというよりは、強制的に通る動線を作ったのです。

 玄関横の壁には鏡があり、そのままベッドルームの強化ガラスに続いています。廊下側のガラスだけハーフミラーのシートを貼りました。鏡からハーフミラー、そしてガラスの壁へゆるやかに移行するようにしています。

 ベッドルームの天井に開けた円形の穴がアクセントになっていますが、これは現場で決めたんですよ。天井に梁(はり)があったため思ったより天井高が低くなってしまい、圧迫感があったんです。そこで、真ん中だけ厚さ50cmほどの円形を切り抜き、落ち着く空間にしました。ちなみに強化ガラスはかなり厚いので、音はしっかり遮断しています。ガラス越しでは会話ができないほどです。

 カーテンはやわらかいリネンを選びました。それがガラスに映り込み、やさしい雰囲気を醸し出しています。ガラス同士も反射して映り込んでいるので、どこまでがリアルでどこからが映り込みなのか迷ってしまうような、不思議な空間です。

 バスルームの壁もガラスです。唯一トイレだけが、この部屋で閉じている空間なので、思い切ってショッキングピンクにペイントしました。そこだけ別世界ですよね。

 収納は、すべて壁収納ですっきりと。パソコンのあるワークスペースも収納扉の中に入っています。「ホテルのスイートルーム」という非日常空間が、築48年の中古マンションで現実のものになりました。

 ちなみに、Tさんはリノベーションの過程をフェイスブックで詳しく紹介しています。興味のある方はのぞいてみてはいかがでしょうか。

(構成・宇佐美里圭)

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

<30>家具の高さを70cmに統一して広さを

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<32>わがまま満載 でもスムーズな動線

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