リノベーション・スタイル

<32>わがまま満載 でもスムーズな動線

 畳の小上がり、土間、オーダーキッチン、壁一面の本棚、段差を使った空間の仕切り、独立したシャワーブースとバスタブ、外とつながっているバスルームやタイル貼り……。「これまでブルースタジオがやってきたことを全部やりたい!」というのが、おふたりのご要望でした。

 これまでのテクニックが集積され、宝物があちこちに埋蔵している。そんなイメージから、この部屋は「Ruins」(遺跡)と名付けました(笑)。

 ご要望を実現するにあたって、まず大きく変えたのは部屋の間取りです。部屋の真ん中に梁(はり)があったので、その下をすべて本棚にしました。裏表の両面使用ができる本棚で、それを境にして部屋を東西に分割しています。片方はキッチン、ダイニング、リビングがあるパブリック空間。もう片方はベッドルーム、クローゼット、水回りなどがあるプライベート空間です。

 玄関から中に入ると、部屋の半分くらいまで土間の廊下が続き、畳の小上がりがあります。昔の長屋の形式に近い感覚ですね。そして、土間の横にはキッチンがあり、回遊できるようになっています。木製のキッチンの土間側には引き出し収納もあります。取っ手はおふたりが買ってきたもので、全部違うんですよ。

 キッチンの後ろの棚だけガラス戸になっていて、開くと裏側にあるバスタブにつながります。お風呂につかりながら、「ビールとって~」なんてことも可能です。

 おふたりは通常はシャワーで済ませることが多いようなので、カラフルなタイル貼りのシャワーブースも作りました。洗面所、トイレ、洗濯機など水回りはすべて1カ所に集めています。そこからアーチ型の入り口をくぐると、ウォークスルー・クローゼットです。真っ赤にペイントしてあり、ちょっと異国のバザールのような不思議な空間です。部屋によってシーンが切り替わっていて楽しい感じがします。そして、そこを通り抜けるとベッドルームへ。生活動線がスムーズです。

 ベッドルームは広くないのですが、プライベート空間全体がひとつの部屋のようになっているので、狭苦しい感じはしません。各部屋の入り口は引き戸になっており、必要な場合は閉めることもできます。 

 バスルームには洗い場がなかったり、ダイニングとキッチンが一体になっていたり、ところどころ、おふたりが「いらない」と決めたところは省略しています。そうすることによって、長い土間を作ったり、大きめのクローゼットを作ったり、おふたりが実現したいことをすべて満たすことができました。

(構成・宇佐美里圭)

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

<31>築48年でも、高級スイートルームに

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<33>日本人がロンドンで造ったような和モダン

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