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読めば腹鳴る 異色の食『B級恋愛グルメのすすめ』ほか

読めば腹鳴る 異色の食『B級恋愛グルメのすすめ』ほか

異色の食エッセイ2冊

食欲の秋到来! ダイエットが頭にあるけど味の誘惑には勝てません。今回は代官山 蔦屋書店らしく、異色の食エッセイ2冊を紹介いたしましょう!

まずは島本理生さんの『B級恋愛グルメのすすめ』。本書の特色はタイトルから予想されるように、恋の話がついてくること。女性同士で、後輩の男の子と、仲間たちと、おおいに食べながらおおいに恋を語るエッセイです。

のろけではなく、うまくいかない恋の話の方が多いです。でも「食べ物ものどを通らないほどの深刻さ」はなく、レストランで、家飲みで、鍋をつつきながら、話される恋は、ある意味方向が見えている。会食相手に容赦なくつっこみ、つっこまれながら、彼女たちはきちんと食事をします。食べ終わったら立ち上がり、前に進むんだ! と言うように。

もっとも興味をひかれるのは、ラストに出てくる島本さんの2度目の結婚のエピソードでしょう。ファンならご存知と思いますが、なんと彼女は同じ相手と再婚したのです。

夫も小説家。別れて一年目に再会したお昼どき、お互い間髪いれずにオムライスを頼み、食べながら話したのは愛の思い出でも別れの苦しみでもなく「一緒に暮らしてたとき何を食べたか」。そんな関係だからこそ、自然とまた一緒になろうか、という方向になったのかもしれません。ハート以上に舌が結んだリフレイン婚には、不思議な感動があります。

もう一冊は久住昌之さんの『野武士、西へ』

近年散歩ブームで、おススメコースの本が出たりテレビの散歩番組が増えたり。でも情報に従って歩くなんて! と憤った久住さんは、大阪まで散歩しようと思い立ちます。東京から東海道もしくは太平洋沿いに西へ歩けば大阪に着く。「旅」ではなく散歩なので、一日で歩けるところまで歩いたら、電車で東京に戻る。次はその駅まで乗車して、散歩の続きをする。

こんな2年がかりの散歩ですが、本書の読みどころは食事のシッパイ談。久住さん、お腹がすくとすぐラーメン屋に入っちゃう。で、あとから一本向こうの通りに新鮮な海産物をふんだんに使った食堂がたくさんあることに気付く! こんな失敗がたくさん出てくるのですが、それでも情報ツールに頼らない潔さと「目的なくぶらぶら」の臨場感にあふれ、散歩のみならず人生そのものを見ているよう。

読めばおなかがグウと鳴る、味わい深い2冊です。

(文・間室道子)

>>おすすめの本、まだまだあります

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蔦屋書店 コンシェルジュ

そのとき一番おすすめの本を、週替わりで熱くご紹介します。

●代官山 蔦屋書店
間室道子(文学)
●二子玉川 蔦屋家電
岩佐さかえ(健康 美容)/北田博充(文学)
嵯峨山 瑛(建築 インテリア)/中田達大(ワークスタイル)
松本泰尭(人文)/柴田あすか(デザイン)
●湘南 蔦屋書店
川村啓子(児童書 自然科学)/藤井亜希子(旅)
八木寧子(人文)/若杉真里奈(雑誌 ファッション)
●柏の葉 蔦屋書店
大川 愛(食)

間室道子(まむろ・みちこ

代官山 蔦屋書店の文学コンシェルジュ。
テレビやラジオ、雑誌でおススメ本を多数紹介し、年間700冊以上読むという「本読みのプロ」。お店では、手書きPOPが並ぶ「間室コーナー」が人気を呼ぶ。

人として生きるために。辰巳芳子が示すもの

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