花のない花屋

私の応援団長、94歳の祖母に

  

〈依頼人プロフィール〉
前田朋美さん 33歳 女性
愛知県在住
非常勤講師

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今年11月に94歳になった祖母は、介護保険のお世話にもならず、東京で元気に暮らしています。15年以上前に祖父が亡くなってから1人ですが、みんなから好かれる性格で、母の友達からも私の友達からも「おばあちゃん元気?」と聞かれます。

数年前に足を骨折しましたが、大好きなコーラスの練習に行きたいと言って、見事に回復しました。たまに杖を使うくらいで、新宿の京王デパートに遊びに行ったりしています。歯も丈夫で、今でも自分の歯で食事をしています。

また、新聞やテレビ、週刊誌が大好きで、政治にも文化にも興味津々。クイズや歴史番組、海外ドラマから刺激を受け、日々の暮らしを楽しんでいるようです。もちろん海外への関心も強く、なんと80歳を超えてから海外旅行に行き始めました。今でも10年パスポートを持っています。

どうしてこんなに元気なのだろうと思うのですが、祖母は自然と長生きするような日常生活を送っているのでしょう。外の世界に好奇心を抱き続け、自分で食事を作って食べ、ポジティブで優しい。そしていつもまわりに感謝を忘れません。朝晩欠かさず、1時間くらい仏壇の前でお経を唱え、孫、家族、みんなの健康を祈っているのです。

私は地方に住み、非常勤講師をしながら美術史の専門家を目指しています。まだ目標に向かって進んでいる途中なので、頻繁に祖母に会うことができません。それでも、2、3週間に一度電話でおしゃべりとすると、「大器晩成型だから大丈夫」「そんな難しいことをやっているなんてすごい! おばあちゃんにはやりきらん~」などと、いつも柔らかい大牟田弁で力強く応援してくれます。先日は「友達と人の噂話ばかりしちゃって、後味悪かったなあ」と言ったら、祖母は「あら、いい口の運動になったわね~」と言ってました(笑)。何があっても前向きな祖母と話すと、不思議なパワーがみなぎってきます。

祖母は、私を含めて6人の孫をいつも心から慈しみ、成長を見守ってくれています。祖母の存在は孫にとっては大きな心の拠り所。今の私があるのは、両親や家族のお陰ですが、ただひたすらあるがままを受け入れてくれる祖母は私の一番の応援団長です。

そんな祖母に、少し遅くなってしまいましたが、94歳の誕生日のお祝いとして盛大なお花を贈りたいです。どうぞよろしくお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

94歳のお誕生日おめでとうございます。盛大なお祝いを、とのことですので、94本の深紅のバラでまとめました。

バラは年齢を重ねた人が持つしっとりとした落ち着きを、深紅は生命力のほとばしるエネルギーを表しています。

中心には6種類の多肉植物を差しました。“おばあちゃんに寄り添う6人のお孫さん”というイメージです。すべて色や形が微妙に違っていて、見ているだけでもおもしろいですよね。

周りのバラが枯れてしまっても、多肉植物は水につけておけば、根っこが出てきます。土に植え替えれば、鉢植えとして育てることもできます。多肉植物が6種類並んでいたらかわいいかもしれませんね。

大きくなると葉がぽろっと落ちることがありますが、それも水につけておけば、葉からまた根が出てきます。ですので、ある程度伸びたら切っても大丈夫。おばあちゃんに喜んでもらえたらうれしいです。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

私の応援団長、94歳の祖母に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


念願の新しいキッチンに立つ母に

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