花のない花屋

女家族の「大黒柱」だった5歳上の姉に

  

〈依頼人プロフィール〉
藤巻好子さん 28歳 女性
米・カリフォルニア在住
会社員

    ◇

我が家は母と姉2人と私の、女だけの4人家族です。私が10歳のときに両親が離婚したので父はいませんが、父の不在を寂しいと思ったことはあまりありません。むしろ、何かが欠けているから、それを補うために家族みんなで一致団結して生きてきたような気がします。

そんな中、誰よりも家族のことを心配し、私たちをひっぱってきてくれたのが、5歳上の長女です。どこかに母子家庭という“引け目”もあったのかもしれません。とても努力家で、ときにおせっかいに度が過ぎて喧嘩(けんか)をすることもありましたが、いつもよき相談相手でした。

その姉は10代の頃からとても活発でした。高校生の頃はアメリカへ留学し、結婚後は、旦那様を引き連れて(笑)、イギリスの大学院で修士号を習得しました。今は2歳半になる子どもを育てながら、都内で人事系コンサルタントの仕事をしています。

そんなパワフルな姉の影響を受けて、いつしか私も「自分の道は自分で切り開きたい」と思うようになりました。高校生の頃は、トルコへ1年間交換留学に行き、大学では比較文化学を専攻。就職も海外赴任のある今の会社を選びました。

トルコ留学のときは、周囲から「英語圏の方がいい」と反対されましたが、姉は「他の人が行かない道を進んだ方がいいのでは」と背中を押してくれました。その姉の一言で、私は踏み切れたのだと思います。

今、私は日系企業のアメリカ支社に駐在しているため、なかなか会うことはできませんが、いつもスカイプやメールでいろいろな話を聞いてもらっています。

そんな姉に昨年7月、腎臓に動脈瘤(りゅう)が見つかりました。自覚症状はまったくなかったのですが、すぐに手術しないと破裂して危ないと言われました。

幸い見つかった時期が早かったので命に別条はありませんでしたが、大手術だったため、体に大きな負担がかってしまいました。手術は無事に成功し、今は仕事にも復帰していますが、これからは頑張りすぎず、少し肩の力を抜いて前に進んでいってほしいです。

手術が無事に終わっておめでとうという気持ちと、これからも憧れの姉として力強く生きていってほしいという気持ちを込めて、東さんの花束を贈りたいです。母として、また1人の社会人として、前向きに生きていけるような花を作って頂けるとうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

前向きに、元気に、ポジティブに……そんな気持ちになってもらえるよう、イエローのお花でまとめました。

チューリップって、すぐに伸びるんですよ。短く切ってアレンジしても、数日経つと頭一つ分くらいは伸びてしまいます。そんな「上へ上へ」という勢いのある気分を表現しました。

とはいえ、肩の力を抜いたやわらかさも感じてほしかったので、バラやラナンキュラス、マム、カーネーションなどやわらかいイメージのお花もチューリップの根元に使っています。小さな花がたくさんついたランの一種、オブリザダムも、かわいらしい雰囲気を添えています。

アクセントとして大きな多肉植物を置きましたが、これはもちろん花が咲き終わった後もずっと育てられます。

リーフワークにはガーデニングでもよく使われる品種を短く切って、たくさん入れました。黄色みを帯びたグリーンが全体になじんでいます。

「憧れの姉」なんて、いいですね。とてもエネルギッシュで生命力にみちた女性なんだなと感じました。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

女家族の「大黒柱」だった5歳上の姉に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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