花のない花屋

新店舗を開いたおもちゃ屋の叔父へ

  

〈依頼人プロフィール〉
片桐慶子さん 41歳 女性
東京都在住
会社員

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小さい頃から私をかわいがってくれた叔父は、長野県飯田市でおもちゃ屋さんを営んでいます。60代のイケメンおじさまで、美人で底抜けに明るい奥様、甘いもの大好きなおばあちゃまの3人で暮らしています。

おもちゃ屋さんは、ひな人形や五月人形を主に扱う創業115年の老舗で、駅前の一等地にずっとお店を構えていました。叔父は奥様のお父様から引き継ぎ、私の小さい頃からいつも“おもちゃ屋さんのおじさん”でした。

お店の中は、ぐるりと日本人形に囲まれ、小さい頃はちょっと怖い感じもしましたが、真ん中にはぬいぐるみや小さいおもちゃの車、ボードゲームや花火など子どもが好きなものがたくさんありました。お店に行くと、棚に並んでいるおもちゃや花火をもらえたので、年に数回遊びに行くのが楽しみでした。1度、お店にあった等身大の大きなクマのぬいぐるみをもらったことがあり、すごくうれしかったのを今でも覚えています。

高校生になると、夏休みに1週間ほど店番のアルバイトをさせてもらったり、数年前までは、1月2日のダルマの初売りを手伝ったりしていました。私にとってはたくさんの思い出がつまったお店です。

でも、ここ数年は低価格が売りの新しいお店に押され気味でした。そこで、叔父は心機一転、昨年末に思い切って郊外に引っ越し、今までより広い店舗をオープンさせました。

新しいお店でも、そのあたたかい人柄と高品質の商品で、地域の人にかわいがってもらえたらいいなあと思います。そんな思いが伝わるようなお花を作っていただけないでしょうか。

叔父は工学部出身の理系人間で堅いところもありますが、とても優しい人です。今はリウマチがあって闘病しながら働いています。おもちゃ屋さんにいることが多いので、お店に飾ることができて、小さな子ども達にもよろこんでもらえるような、楽しげな花束をアレンジしていただけたら幸せです。

  

花束を作った東信さんのコメント

おもちゃ箱をひっくり返したようなアレンジにしました。ラケナリア、エピデンドラム、スカイビオサなど春の小花を中心に、ピンク、イエロー、オレンジ、グリーンなどやさしい色をたくさん使っています。

また、子どもたちが楽しめるように、サボテンなどの多肉植物やエアープランツも加えました。特に目立つのが、中心に据えたうさぎの耳のようなふわふわの葉っぱ。これは「断崖の女王」という、面白い名前の植物です。質感もいろいろあって、思わず触ってみたくなる花束ですよね。この葉っぱや多肉植物はすべて植え替えて育てられます。

リーフワークの葉はルスカス。ふだんは折って重ねることが多いですが、今回はくるくると巻いて、“ラッパ巻き”にしました。

おもちゃ屋さんに来たお客さんが、楽しんでくれるとうれしいです。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

新店舗を開いたおもちゃ屋の叔父へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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