花のない花屋

41歳、結婚決めたバリキャリの友へ

  

〈依頼人プロフィール〉
川口麻美さん 41歳 女性
兵庫県在住
会社員

    ◇

彼女とは、医薬系の会社に事務として入社して以来、21年の付き合いになります。入社したばかりの頃、人事担当者から「結婚したらすぐ辞めたい人?」と問われ、何のためらいもなく手を挙げたのが彼女と私でした。

でも、彼女は頑張り屋さんで、恋愛も仕事も一生懸命。頭にハゲができてしまうほど仕事に打ち込んでいた時期もありました。とはいえ、いつも明るく、ワインなどのお酒も大好きな人です。

バイタリティーあふれる彼女は、30代前半で会社を辞め、アメリカの大学に2年間ほど留学していました。「英語が下手で」と自分では言っていましたが、英会話スクールにも通って勉強していました。

日本に戻ってからは別の会社に就職し、今は医薬業界のプロモーターとして、発売前のガンの薬を担当しています。マネジャー職なので、海外との会議もしょっちゅう。忙しいのに愚痴も言わず、夜中も土日も仕事をしています。

「結婚したらすぐ辞める」と言って働き始めたのに、気がついたら仕事一筋(笑)。1年ほど前は、「誰かと知り合う時間なんてないし、結婚なんてまったく考えられない」と言っていました。

昨年末、入社20周年の記念に一緒に沖縄へ行きました。そこで、「入籍することになったんだ」と打ち明けられました。

聞けば、相手は小学校の同級生とのこと。同窓会で再会したとき、お互い仕事が忙しくて結婚していないことがわかり、とんとん拍子に交際が始まったそう。彼も日本とアメリカを行き来する仕事で、話も合ったようです。再会してから半年足らずで結婚が決まりました。

びっくりしたと同時に、うれしい気持ちでいっぱいになりました。2人とも多忙なので式を挙げる予定はないそうですが、いつもお世話になっている彼女に記念になるようなお花を贈りたいです。

新居にはまだ遊びに入っていませんが、昔はブルー系のシックな感じの部屋に住んでいました。いつも仕事で忙しいので、少しでもほっとできるような、気持ちが癒されるようなお花を贈れたらうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

ご結婚おめでとうございます。お友達はワインが好きとのことだったので、思い切ってボルドー色の花束にしました。

エピソードを読んでいると、彼女は自ら道を切り開いていくかっこいい女性ですよね。知的な印象を受けたので、こういうクリエティブもわかってくれるかなと思って、モダンなアレンジにしました。

全体的にシックな色合いですが、使ったのはブラックバッカラというバラやラン、チューリップ、カラーなど華やかな花です。ランの淵の黄色が効いていますよね。

暗いトーンで質感がマットだと沈んでしまうので、リーフワークはコンパクターという艶のある葉を使いました。花束の上でクロスさせたカラーの茎の光沢感もアクセントになっています。カラーの茎の束は、結婚することになったおふたりの人生が交差しているところを表しています。

いかにも“ウエディング”というアレンジではありませんが、知的で大人な女性だからこその花束。よろこんでもらえるとうれしいです。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

41歳、結婚決めたバリキャリの友へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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