東京の台所

〈57〉パーティー用に大型食洗機入れてリフォーム

〈57〉パーティー用に大型食洗機入れてリフォーム

〈住人プロフィール〉
ピアノ教師・53歳(女性)
戸建て・2LDK+地下+納戸・西武新宿線 新井薬師前駅(中野区)
入居1年・築25年・夫(会社員・53歳)との2人暮らし

    ◇

 ピアノ教師をしている。年に1度は子どもたちを招いてお楽しみ会を開く。それ以外に、毎月1回、外資系企業に勤める夫の同僚や友だちを招いてホームパーティーを開く。それがもう20年も続いている。

 「2人暮らしなので、そういうことでもないと生活にメリハリがつきませんし、食生活もついつい簡単になってしまいますから。お客様が来ると、片付けたり、ディスプレイを替えたり、部屋を見直すいい機会になります。旅先でも今度はこんなカトラリーを出そうかしらと買い求めたり、楽しみも増える。定期的に人をお招きするのっていいですよ。うちはもう、生活のリズムに組み込まれている感じです」

 招くのは、多いときは十数人。メニューを2~3日前に決めておけば、料理は2時間前からの準備で間に合うとか。当日、人数が増えたり減ったりしてもいいように、大皿でとりわけられるスタイルにしている。

 「豪華な手みやげはいりませんよ、と伝えています。そんなことしたら、次に来づらくなっちゃいますし、逆に私が招かれても行きにくくなっちゃうから」

 気負わないスタンスが、長続きの秘訣のようだ。

 そんなホームパーティーを重ねるなかで、長年不便を感じていたのが食洗機だ。もっと大きければ、大量の食器だけでなく、調理道具や鍋も、ついでに水切りかごもガンガン洗えるのに。夫の仕事の関係で6年間住んでいたニューヨークには、エレクトロラックスの大型食洗機が多くの家庭にあった。

 中古で購入した今の家にあるのは、いただきものの卓上型食洗機。

 「どうしてもエレクトロラックスを入れたかったのですが、業者さんに聞いたら、台所が古すぎて、サイズが合わないと。だったら、この機会に台所をリフォームしようと思いたったのです」

 ワイン色の木目のシンクは暗かったので、台所は白で統一することにした。キッチンメーカーは、好みの面材のほか、収納スペースも1センチ単位でオーダーできて、リーズナブルなイケアに依頼した。

 海外生活で、DIYやインテリアには多少興味があったが、今回のリフォームで、その楽しさに目覚めた。

 「少しでも費用を抑えて満足度を高めようとネットで調べ、モデルルームの展示品を半額で売っているサイトでガス台を購入したり。壁紙も床材も自分でやろうと思えばできる。デザインも豊富で、日本のDIYも進化しているなあとびっくりしました。時間があれば自分でもっとあれこれやってみたいと、すごく思いましたね」

 工事で余った木材を譲り受け、小さな棚を自分でとりつけた。設計に2カ月、工事に1週間。リフォームは設計に時間がかかるのだと学んだ。

 家の隅でいちばん暗かった台所がリフォームによって一面オフホワイトの、いちばん明るい場所になった。

 「イケアは、機能性だけでなく、工夫する楽しさやデザインの楽しさがある。そこがいいですね。おかげで、いままでよりももっと料理がしたくなる場所になりました」

 次は台所の壁紙を替え、料理は味噌や梅干しに挑戦したいそう。台所という限られたエリアのリフォームだけでも、やりようによっては暮らしの楽しみ方が大きく変わる。そのためには、労を惜しまず、妥協をせず。少々面倒でも、予算の中で最大の満足を得るための努力をすること。

 さて、懸案の洗い物は楽になった。気楽なホームパーティはこれからも途絶えることなく続きそうだ。
 

>>台所のフォトギャラリーへ  ※写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます。

PROFILE

大平一枝

文筆家。長野県生まれ。失われつつあるが失ってはいけないもの・こと・価値観をテーマに各誌紙に執筆。著書に『東京の台所』『男と女の台所』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)、『あの人の宝物』『紙さまの話』(誠文堂新光社)、 『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)、『昭和式もめない会話帖』(中央公論新社)、『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)など多数。HP「暮らしの柄」。
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〈56〉27歳、映画監督。勝負かける1DK

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〈58〉 ピカピカの台所とおばあちゃんの片手鍋

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