ファッショニスタの逸品

エンタメや文化を通して“真実”を伝えたい アンドレア・ポンピリオさん

  


アンドレア・ポンピリオさん。NHK WORLD「DESIGN TALKS」の収録現場で(撮影 合田和弘)

おおらかで軽妙な語り口の中に、つねにシビアな視点が光る。
今回のゲストは、テレビやラジオの司会進行役で知られるアンドレア・ポンピリオさん。「文化と文化をつなぐフィルター役になりたい」と、自らの肩書を「ナビゲーター」と称す。

  

イタリア人の父と日本人の母のもとに生まれ、幼い頃から父親の生き方に強く影響されたという。
「ジャーナリストである父は、子どもの僕によく、どんどん世界に出ていけ、現地を見てこい、と言っていた。そして世界から日本を見るんだ、と」

  

13歳の夏休みに、少年はひょんなことからフォトグラファーの広川泰士さんの取材に同行することになった。行き先は旧ソ連。目的は毛皮の撮影取材で、ハバロスクからレニングラードへ。役割は当然、荷物持ちとレフバン係。
「父と広川氏は旧知だったので、僕に世界を経験させようとしたんだと思います。当時は冷戦の時代。ソ連を怖い国だと思っていたので、現地に行くまでは本当に帰ってこられるのか不安でした。でも実際は、みんな温かくて親切な人ばかりだった」
テレビや新聞で報道されていた世界とは違う現実を知り、メディアへの不信感が芽生えはじめた。そして素直に真実を伝えたいと思った。

  

現在は、日本や海外の番組制作などに携わり、話し手としてもその才能を発揮する。いわば二足の草鞋(わらじ)を履きながら世界を行き来する日々。

  

そんな多忙なアンドレアさんに、ファッションのことからプライベートのことまで聞いてみた。

  

――海外に行かれることも多いと思いますが、日本人のファッションをどんなふうに感じていますか。

 いろいろな国に行きますが、そのたびにやっぱり日本人はおしゃれだなあと感じます。ほかの国と比べても圧倒的にファッションのセンスはいいし、情報量も持っている。もちろんファッションの国ってイタリアだったり、フランスだったり、イギリスだったりしますけど、日本人はここ20年くらいでファッションのレベルが急激に上がったと思う。しっかり自分で着こなせるようになってますよね。最近の日本人デザイナーもカッコいい。痩せていたら絶対に着てるのになぁ。

――ふだんは買い物によく行かれますか。
 たまに六本木の「エストネーション」とか、ふらっと行きます。ぱっと行ってぱっと買う感じですね。昔から靴好きで、なかでも〈J.M.ウエストン〉がしっくりときます。パリに行くとフィッティングをていねいにしてくれるので、必ず買っています。もう7足くらいあるかな。でも最近は昔ほど買い物をしなくなりました。むしろ知り合いのアーティストの個展に行って、作品を衝動買いしてしまうケースのほうが多いかな。

――ふだんの服もいまとそんなに変わらない感じですか。
 そうですね。ふだんもこんな雰囲気ですよ。とくに最近はスーツを着なくなりました。ネクタイもテレビに出るとき巻くくらいです。10年前の僕はスーツばかりだったので、それに比べたら想像できないくらいラフなスタイルになりました。

――なにがアンドレアさんを、そうさせたんでしょうね。
 結婚して子どもができてから価値観が変わったと思います。あと、やはり「3.11」によって自分の気持ちが確実にシフトしました。あの出来ごとを機に「どうこの子たちを守れるのか」「家族をどう守れるのか」っていうことを深く考えるようになりましたね。毎日、「家族を犠牲にしていないか」と自問自答しています。

――オンとオフの時間はどんなふうに過ごしていますか。
 いや、僕の場合、つねにいまはオン状態です。オフがない。いわゆる仕事のオンではなくて、子どもがいるのでテンション的に帰宅してもずっとオン。僕は毎朝、子ども三人分のお弁当を作ります。どんなに仕事があろうと、それを日課にしています。だから、むしろ出張があったほうが、オフなのかも。お弁当も夕飯も作らなくていいから。でもね、いまは、眠れないほど目まぐるしい家族との生活に、ものすごい幸せを感じているんです。家族のために生きていると実感しています。

――ジャーナリストであるお父様の子育てとはどのようなものでしたか。
 彼は自分のことよりも家族が大切だという価値観で、僕と姉を育ててくれたと思っています。その偉大さが最近ようやく分かってきた。当然やりたいこともあったはずだけど、いろいろ犠牲にしながら僕らのことを世に送り出してくれたんだと。自分もそうあるべきだと思っています。

――現在のお仕事も、お父様の影響が大きいですか。
 そうですね。父がジャーナリストだったので、報道という世界の中で僕も育ってきたように思います。物心がついた頃から、ジャーナリズムそのものに対して本当にこのままでいいのかなという疑念があって、そういう思いで飛び込んだのがこの世界でした。いまの僕はどちらかというと、政治や社会の問題をエンターテインメントや文化を通して伝えることで、そこにある「真実」に目を向けてもらえればという思いでやっています。

――今後も制作者と演者の両方の役割を続けていきますか。
 先のことは分かりませんが、もともと番組やイベントを制作する裏方の仕事がメインだったので、それは続けたいですね。あと、終わったときの達成感がたまらなく好きです。「ナビゲーター」になったのは、急きょ僕が企画していたJ-WAVEの番組で司会がどうしても見つからず、「じゃあアンディやってくれないか」ってことで始まったのがきっかけでした。たぶん三カ月くらいで終わるだろうと思っていたら8年も続きました。自分が必要とされれば、ナビゲーターも続けていくと思います。今後もここらへんをバランスよくやっていけたらと思っています。
(文 宮下 哲)

    ◇

アンドレア・ポンピリオ
1969年、東京生まれ。イタリア人の父と日本人の母、オランダ国籍を持つ“ワールドシチズン”。報道写真、PR・イベント制作業などさまざまな分野での活動を経て、2005年、J-WAVEのナビゲーターに。「MODAISTA」「360°(Three-Sixty)」のナビゲーター、NHK BS1「エルムンド」のメインMCを歴任。現在は、日本のデザイン美を世界に届けるNHK WORLD「DESIGN TALKS」、NHK 総合「BSコンシェルジュ」、NHK Eテレ「きょうの料理~栗原はるみのふたりの週末ごはん」のMC/進行役などを担当している。 ラジオ、雑誌、イベント等でも幅広く活躍中。
アンドレア・ポンピリオ オフィシャルHP http://www.andreapompilio.net/ja/

(アンドレア・ポンピリオさん愛用品は、下のページへ)

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