花のない花屋

共働きで鍵っ子にしてしまった兄妹へ

 

〈依頼人プロフィール〉
竹内富希子さん 49歳 女性
東京都在住
会社員

    ◇

結婚をしても、子どもが生まれても、私はずっとフルタイムで働いてきました。息子は高校生に、娘は中学生になりましたが、2人が小さかった頃は「働き続けていいのだろうか」と悩んだこともありました。

初めて息子を保育園に預けたときは、「泣いていて、何も食べない」と電話がかかってきて、「子どもと一緒にいるべきなんじゃないか」と自問自答しました。子どもがインフルエンザにかかったときも、私は会社を休めず、実家の母に長期できてもらったり、姉に助けてもらったりなど、常に綱渡り。出張も多く、飛行機に乗る直前に保育園から「けがをしたので救急病院に運ぶ」と電話をもらったこともありました。

夫が単身赴任しているので、仕事を諦めようかと思ったことは何度もありました。でも、夫や同僚、友人たちに相談するたびに、「何もしないで家にいるより、仕事していた方がいいよ」と励まされ、なんとかここまでやってくることができました。

今では、「辞めようかな」とつぶやくと、子どもたちに「辞めて何するの? 仕事を続けることで、お母さんはいろんな経験できているんだから、がんばりな」と励まされています。仕事は大変ですが、それなりに楽しそうに見えているのかもしれません。

今も夫は単身赴任中で、私は地方への日帰り出張が多く、子どもたちと接する時間は限られています。2人が学校から帰ってきたときに、家にいてあげられないことは、悪いなあと思っています。

でも、ケンカをしながらも頑張って支え合い、時に私たち親を支えてくれる子どもたちに感謝の気持ちを伝えるお花を贈りたいです。

息子は赤、娘は水色が好きです。誰もいない家に帰ってきたときでも、ほっとできるような、明るく華やかな感じの花束を作っていただけないでしょうか。花が終わった後も育てていけるものを入れていただけるとうれしいです。

 

花束を作った東信さんのコメント

うちも両親が働いていたので、鍵っ子でした。家に帰ると誰もいなくて寂しい思いをしましたが、今、自分が親になってみると、母の気持ちもわかります。今回は、お母さんの気持ちをぎゅっと込めて作りました。

使用したのは、この時期にきれいなガクアジサイとカーネーション、エピデンドラム。全体を円にして“兄妹の絆”を表しました。なんとなく優しいイメージですよね。

実はこのアレンジのトップには、花の中に小さなエアプランツが二つ隠れています。かくれんぼしている兄妹みたいでしょ(笑)。周りの花が枯れると、エアプランツが出てくる仕掛けです。

リーフワークは、色の違う葉を2重にして扇状にしてみました。初めてやってみましたが、フリルみたいでかわいいですよね。

お子さんへ贈る花だったので、手入れも簡単に水だけあげれば長く鑑賞でき、そのままきれいに枯れていきます。

 

 

 

 

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

共働きで鍵っ子にしてしまった兄妹へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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