花のない花屋

結婚した長女と、仲良しの次女に

  

〈依頼人プロフィール〉
吉田ひとみ 56歳 女性
愛知県在住
自営業

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私には26歳と24歳の娘がいます。上の子が2歳半のときに下の子が生まれました。上の子はもともと甘えん坊だったのですが、お姉ちゃんになってからは、妹が泣くと「自分のことより妹を先に」というので驚きました。

以来、我が家では長女を「お姉ちゃん」ではなく、名前で呼ぶようになりました。「お姉ちゃん」と呼ぶことで、彼女に重いものがのしかかるような気がしたのです。年齢など気にせず、自然に自分らしくいてほしくて。

そのかいあってか、娘たちは互いを名前で呼び合い、まるで友達同士のように成長しました。もちろん、小競り合いは日常茶飯事です。シャワーの順番、洗面台の取り合い、部屋のレイアウトなどささいなケンカは絶えません。でも、旅に出ると、必ずお土産を買ってきたり、進学や就職の相談をしあったり。仲が良いのか悪いのかよくわかりません。(笑)

大学を出て、姉はお堅い仕事に、妹はインテリア関係の仕事について奮闘中です。社会人になってからも2人はずっと家に住んでいたのですが、1度だけ、姉が研修のため3カ月間いないときがありました。研修が終わって姉が帰って来ると、2人は再会した瞬間に、ぱっと抱き合いました。「ああ、大人になってもそういう気持ちが残っているんだ!」と印象に残ったことを覚えています。

そんな姉妹ですが、とうとうこの5月、長女が結婚しました。姓も変わり、家も出て、夏からはステキなお婿さんとの新しい生活が始まります。妹もいつかはパートナーを見つけ、家を出て行くことでしょう。

四半世紀近く一緒に暮らしてきた私たちですが、その生活にも終止符が打たれます。でも、親がいなくなっても、生活環境が変わっても、長く生活をともにして、支え合ってきた時間が消えるわけではありません。かけがえのない姉妹のつながりを大事に、これからも仲良く支え合ってほしいと願っています。

2人の娘たちにエールをこめて、東さんの素晴らしい植物世界を贈りたいです。東さんの作品には、花が枯れても、生命がまたつながっていくような印象を受けます。だから、離ればなれになっても2人のつながりを大切に、というメッセージを込めた花束を作っていただけないでしょうか。

  

花束を作った東信さんのコメント

リーフワークにお母さんの思いを込めました。赤い色が入ったコンシンネの葉を一つひとつ束ねてぎゅっと結び、娘さんたちの固い絆を表しています。どことなく女の子っぽいリーフワークでしょ?

おふたりのイメージがなんとなくオレンジとイエローのような気がしたので、その2色で全体をまとめています。

エピデンドラム、カーネーションなどに囲まれて真ん中に鎮座しているのが、大きな7本のカラー。額が二重についている特殊な種類です。額にうねりがあって、アレンジ全体に動きが出ますよね。

交わらなくても調和する二つの色と、ぎゅっと結んだリーフワーク。そんなところから娘さんたちの絆を感じ取ってもらえたら。結婚生活がスタートするまでの残りの時間、楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

結婚した長女と、仲良しの次女に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


もうひと踏ん張りしたい自分に

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