花のない花屋

フリーランスとして歩き始めた夫に

  

〈依頼人プロフィール〉
鈴木のりこさん(仮名) 30歳 女性
東京都在住
出産のため休職中

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彼と結婚し、一緒に暮らすようになって2年。庭のある新居に引っ越したので、2人で少しずつ植物を集めてきました。

庭いじりが好きな両親の影響か、私は昔から植物が好きで、一人暮らしの頃からマンションの小さなベランダで植物を育てていました。そんな私に影響されたのか、今では夫も植物好きになりました。

ガジュマル、ジャスミン、ローズマリー、ゼラニウム、アイビー……。植えてあるのは私たちが好きなグリーン系が中心です。去年の秋に息子が生まれたときには、「春に庭が明るくなったらいいな」と思い、チューリップを植えました。少しずつ庭も緑豊かになり、毎朝の水やりの時間がとても楽しい今日この頃です。

私はもともと音楽関連の仕事をしていましたが、子どもが生まれたので、今はいったん仕事から離れています。夫は映像製作の会社を辞めて、6月からフリーランスとして働くことになりました。

乳飲み子を抱えながら、家族みんなで頑張っていかねば、と気が引き締まる思いですが、同時に夫にはのびのびと楽しんで仕事に取り組んでもらえたらいいなと思います。今の時代、フリーランスとして働くのは大変かもしれませんが、自分で選んだ道で思う存分、羽ばたいて欲しい。

新しい一歩を踏み出した夫にエールを込めて、東さんのお花をプレゼントしたいです。

彼の趣味は映画鑑賞や写真。陶器や家具などは、デザイナーものより民芸や老舗のものが好みです。独身時代の彼の部屋には、生花こそありませんでしたが、ドライフラワーがありました。「花は好きだけど、忙しくて世話はできないから、もらった花をドライフラワーにした」と言っていました。

そんな当時の思い出も込めて、ドライフラワーとしても楽しめるお花を入れていただけたらうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

全体のイメージは、庭造りが好きなおふたりに合うようハーブガーデン風に。ゼラニウム、スイートマジョラムなど、いい香りのするグリーンをベースにちりばめました。

それ以外はほとんどそのままドライフラワーになるお花です。ユーカリトレリアーナ、スターチス、千日紅、アザミ、アストランチア、クマヤナギ、アスチルベ、カンガルーポーなどなど。お子さんが生まれたばかりということなので、子株がついている多肉植物も加えました。

ところどころに2種類のバラも隠れています。バラはカップ咲きなど種類によってドライフラワーになりにくいものがありますが、このブラッドピンクは花弁が固く、ピタハヤはピンポン球のように花全体が硬いもの。両方とも持ちが良く、きれいに形が残るはずです。

ドライフラワーは、水分量が少ないか、水分が抜けやすい花が作りやすいですね。生花として十分に楽しんだら、乾燥しやすいところに置いてください。直射日光に当てると色素が抜けやすいので、日陰がオススメです。首が長い花は天井から吊すと、真っすぐのまま乾燥させられますが、今回は首が短いものなのでこのままでも大丈夫です。

ドライフラワーにしやすい花は色味がどこかノスタルジック。なんともいえない色合いで素敵ですね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

フリーランスとして歩き始めた夫に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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