花のない花屋

離婚した今、熊本にいる「男友達」へ

  

〈依頼人プロフィール〉
守本祐子さん(仮名) 32歳 女性
東京都在住
公務員

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私には、とても大切な男友達がいます。

彼と出会ったのは、中学校3年生のとき。2人とも合唱部でした。学校は違いましたが、県の合唱コンクールで歌っている彼の姿を見たとき、なぜかとても気になりました。

すると本選のとき、彼が声をかけてくれたのです。ピアノの伴奏をしていた私のことが気になっていた、と。

それから私たちは、付き合うようになりました。お互いの学校はバスで1時間ほど離れていたので、やりとりはもっぱら文通と電話です。真夜中に親に隠れておしゃべりをしたりしたり……。ちょっと甘酸っぱい思い出です。

そんな関係が1年間ほど続きましたが、高校も別々だったので、いつしか自然に距離が離れていきました。とはいえ、大切な友達としての縁が切れることはありませんでした。

大学生になると、私は上京し、彼はそのまま熊本に。初めてのひとり暮らしで寂しくて彼に電話をすると、すぐに飛行機で飛んで来てくれたこともありました。精神的につらくなり、ご飯を食べられなくなったときも、真剣に話を聞いてくれました。

就職をしたとき、仕事で落ち込んだとき、病気になったとき……。今思えば、何かある度に、真っ先に報告をするのは彼でした。でも、彼は熊本、私は東京。あまりに遠いので結婚を考えたことはなく、2人とも友達としての関係を大切にしてきました。

お互い別々の人と結婚し、彼には子どもが2人できたので、最近はあまりやりとりをしていません。でも、お盆に帰省すると食事にいったり、時間があれば阿蘇までドライブに行ったりします。私たちの関係はあくまでプラトニック。一緒にいるだけで、私は満たされます。

今年に入って、私は離婚することになりましたが、そのときも真っ先に彼に連絡しました。彼は東京まで来てくれて、話を聞いてくれました。彼がいなかったら、ここまでこられなかった。今までの感謝の気持ちを、東さんのお花で伝えたいです。

彼はクールだけど、繊細で優しい人。IT関係の仕事でリーダーを務めています。初めて出会ったのも、年に1度会うのも夏なので、彼との思い出はいつも夏の空の下。イメージはブルーです。ご家族が驚かれるといけないので、事務所に届けたいと思います。

  

花束を作った東信さんのコメント

夏の空のイメージでまとめました。アガパンサス、リンドウ、ルリタマアザミなど、青や紫色のお花の中に、青いアジサイを小分けにして全体に散りばめています。アジサイの花弁の淵の白がまるで雲みたいでしょ?

リーフワークは、ドウダンツツジの枝を切って入れました。アクセントに大きなシロシマウチワの葉を加えています。

女性から男性に花を贈る場合は、仰々しくならないようにいつも気をつけています。あまりに華やかすぎると男は照れますしね。特に今回は、精神的に支えてくれてありがとう、という“目に見えない二人の絆”がテーマだったので、みずみずしいアレンジを心懸けました。気に入っていただけましたか?

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

離婚した今、熊本にいる「男友達」へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


薬剤師を目指している「彼の妹」に

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