花のない花屋

いじめを受けている14歳の息子に

  

〈依頼人プロフィール〉
森山多佳子さん(仮名) 51歳 女性
東京都在住
会社員

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私はシングルマザーで、14歳になる息子と都内で暮らしています。普段は仕事が忙しく、なかなか息子とゆっくり話す機会がないのですが、先日、2人で出かけようとエレベーターに乗ったとき、少し様子がおかしいのに気がつきました。

問いただしてみると、「学校でみんなに汚いと言われる」とぽつり……。どうやら数人にいじめられているようでした。私に言うとおおごとになるので、我慢していたのでしょう。

思い返せば、2カ月ほど前からお風呂がやたらと長かったり、仕草が少しおかしかったりしていました。小学校の頃から、少し大きめの体型をからかわれたりしていましたが、言い返せないのでターゲットになりやすいのかもしれません。

原因はいろいろとあるのでしょうが、離婚した父親から幼い頃、激しい叱責(しっせき)を受け続けたことが今も尾を引いているような気がします。彼はキレると誰も止められなくなり、息子が吐くまで怒り続けていたことがあります。息子にとっては、とにかく「父親を怒らせないこと」がすべてにおいて優先されるようになりました。父親から頭ごなしにすべてを否定され続けた結果、自分に自信が持てず、自己肯定できなくなってしまったような気がするのです。

小学校3年生になったとき、私は我慢できず、息子を連れて家を出ましたが、その後、父親とは家裁で会ったきりです。今も息子は「父親には絶対に会いたくない」と言います。私がもっとかばってあげられれば……と後悔していますが、そのときは私も離婚するだけで精いっぱいでした。

父親が医者だったので、幼い頃からまわりに「医者になるんでしょ?」と言われていましたが、その度に息子は「医者にはならない。エンジニアになりたい」と言っていました。中学2年生になった今はロボットを作るのが好きで、将来の夢はやはりエンジニアだそうです。

そんな息子のために、少しでも気分が明るく、前向きになれるようなお花を作っていただけないでしょうか。どうぞよろしくお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

この花は僕からのエールです。とにかく前を向いて頑張れ! 人生悪いことばかりじゃない。そんな気持ちを込めて作りました。エネルギーの塊の花束です。

若者へ贈るとなると、どうしても力が入ります。特に若い男の子への花なので、僕が一番好きな花を集め、純粋に「わあ、すげえ!」と思ってもらえるようなものを作ったつもりです。

使った花はおよそ23種類。とにかくいろいろな植物をふんだんに入れました。食虫植物も多肉植物も、珍しいランもあります。まるで酸いも甘いもある人生のような、それでいて“楽園”のようなイメージです。

君はこんな花束をもらう価値のある人間です。だから自信を持って生きていって欲しい。応援しています。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

いじめを受けている14歳の息子に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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