book cafe

<1>音と言葉、そして少しの好奇心を

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 静けさに包まれた青山の裏路地。黒い階段を昇り、そっとドアを開ける。コンクリート打ちっ放しの吹き抜け空間に、心地よい音楽が流れ、コーヒーの香りが漂う。「HADEN BOOKS:by Green Land」は、都会から切り離されたような、不思議で居心地のいい場所だ。
 オーナーの林下英治さん(37)さんは、学生時代から男性ファッション誌でライターとして活躍。その後14年間、出版社で編集者として働き、うち7年間は同社が直営するブックストア&カフェで店長を務めた。

 林下さん曰く、ブックカフェには二通りの客がいるという。

「本好きな人は、本屋として店に足を運び、一人でゆっくり読書に浸ります。一方、カフェ好きな人はドリンクやフードを楽しみ、友達と語らいたい。ブックとカフェは融合できそうでいて、実はそうではないのかも、と思ったんです」

 二つが溶け合うような空間を自分の手でゼロから作ってみたい、と林下さんは思うようになった。それは、それは一つの雑誌を作るようなイメージだったという。そして、単に飲食店としてのカフェではなく、表現を渇望する好奇心旺盛な人たちが、出会う文化的な情報発信基地としての集う場所「サロン」を作ってみたいという熱意が沸き上がった。

 独立を決め、1カ月後に退社が迫ったころ、1人の女性がふらりと店に訪れた。

「ここには、あなたの気持ちや感性がいろんなものの隅々に入っている。すごく気に入ったわ。ここに通ってもいいかしら?」

 林下さんはもうすぐ店を辞めることや青山で人が集う場を作りたいと考えていることなどを語った。

「それなら、いい場所があるわよ」

 女性は、かつて私設美術館として建てられ、いまは自身が所有する建物を紹介してくれたのだ。林下さんはこうして導かれるようにこの空間にたどり着いた。

 店内には、付き合いのある作家や写真家、出版社などから預かった新刊の棚と、林下さんが自ら集めた古本の棚がある。店内で自由に読み、購入することもできる。

「僕自身、図書館などで本を借りるのは苦手で、気に入った本は自分のものにしたくなるから、ここで出合った本は連れて帰れるようにしたかったんです」

 表参道駅からハイブランドの路面店などが並ぶ通りを経て、根津美術館の近くにひっそりとたたずむ。

「もしかしたら、気軽に入れる店じゃないかもしれません。でも、好奇心を持って足を踏み入れてほしい。この空間が、好きなものや好きな人を見つけるきっかけになればいいですね」

■オススメの3冊

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『CIRCLE エンボカ京都 料理と風景』(今井義浩)
「エンボカ京都店」の元シェフで、今はフリーランスの料理人・今井義浩さんが、同店で生まれた料理と自然を綴った1冊。「写真集と料理本の間のような、彼の生き方が見える本です」

『CURIOSITY』(YU YAMAKI)
24歳の青年が世界中を旅し、自分が会いたい著名人へのインタビューをまとめた雑誌。「文章に若さが感じられるものの、世界中の人に会いに行くという好奇心があり、読んでいて刺激になります」

「疾駆/chic」(YKG Publishing)
雑誌でありながらハードカバーの装丁を施し。本文にはタブロイド紙を用いた、実験的な生活文化誌。1号は「根室」、2号は「博多・福岡/太宰府」を特集。「今の時代感を落とし込んでいて、ある場所への思いを大事にしています」

(写真 石野明子)

    ◇

HADEN BOOKS:by Green Land
港区南青山4-25-10
03-6418-5410
http://www.hadenbooks.com

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

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<2>世界地図のような空間で「旅」を読む

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