book cafe

<2>世界地図のような空間で「旅」を読む

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 天井から床まで壁いっぱいに広がる本棚には、国名が刻まれた古びたタグが並ぶ。それはさながら、大きな世界地図のよう。

 アメリカの棚に目を向けると、アンディー・ウォーホル作品集、マンハッタンの伝説的ライブハウス「CBGB」について綴(つづ)られた本、ジェイ・マキナニーの小説「ブライト・ライツ・ビッグ・シティ」などが並び、ニューヨークの息づかいが伝わってくる。

 早稲田大学の正門前を走る早稲田通り沿いにある「CAT’S CRADLE」。2007年にオープンした、このブックカフェのテーマは“旅”だ。30カ国以上も旅したオーナーの渕上進さん(49)が夫婦で営んでいる。

 フリーランスで広告関連の仕事をしている渕上さんはその前年、新婚旅行で訪れたニューヨーク・ブルックリンで、ある古書店の前を通りかかった。

「手作りの温もりが感じられる空間で、そのたたずまいがとてもよくて、こういう店をやりたい!って思ったんです」

 偶然、築60年近い雑居ビルを見つけ、通りにケヤキが連なる1階の落ち着いた雰囲気に惹(ひ)かれた。ブルックリンの古書店の写真を手にオーナーに掛け合った。

 水道と電気の工事以外は、友人たちの手を借りて自分たちで仕上げた。足場として使われていた古材をコンクリートの壁に固定して本棚をつくり、床にも敷きつめた。店内のところどころに小さな本棚や箱があり、アンティークのソファや椅子に座ってゆったりと本を読むことができる。蔵書は2千冊ほどという。

 渕上さんは旅先でふらりと書店に立ち寄り、その国の雰囲気が見て取れるような本を買うのが好きだ。

「ここでは旅の準備をするのではなく、実際に旅先に出かけているような感覚を味わってもらいたいんです」

 世界中のさまざまな国を感じるには、ガイドブックよりもむしろ、その土地を切り取った写真集や画集、そこに生きる人々を描いた小説やエッセイの方がふさわしい。ぬくもりに満ちた小さな空間で旅するように本を読みたい。

(次回は11月6日に掲載する予定です)

■オススメの3冊

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『モスキート・コースト』(ポール・セロー)
ハリソン・フォード主演の映画が有名。文明に背を向け、ジャングルで理想の生活を築こうとする父親とその家族を描いた小説。「こういう考え方があってもいいんじゃないかとも思う」

『銀河ヒッチハイク・ガイド』(ダグラス・アダムス)
銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。最後の生き残りとなった英国人が宇宙人と宇宙でヒッチハイクをするハメに――。「ギャグ満載で、ドタバタが奇想天外で楽しい1冊!」

『心やさしく』(ロバート・コーミア)
家出をくり返す15歳の少女と、両親を殺し、別の殺人容疑もある18歳の少年が出会い、旅をする。その先にあるものは――。「設定が理解されにくいかもしれませんが、ピュアな恋愛小説に昇華された作品です」

(写真 石野明子)

  ◇

CAT’S CRADLE
新宿区早稲田鶴巻町538 岩田ビル1F
03-3205-4356
http://www.facebook.com/catscradle2007

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

<1>音と言葉、そして少しの好奇心を

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<3>真っ赤でポップ、NYのアート書店のように

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