花のない花屋

故郷・沖縄を離れて歌い続ける妹へ

  

〈依頼人プロフィール〉
城間靖子さん 45歳 女性
沖縄県在住
会社員

    ◇

東京で、ひとりで頑張っている妹がいます。今年で42歳。独身です。彼女は小さい頃から音楽が大好きで、18歳のときに音大に入るために沖縄を離れました。あれから23年。彼女は人生の半分以上を東京ですごし、沖縄はもう故郷じゃないのかも……。

妹が上京して、私もすぐに就職するために東京へ行きました。2年ほど一緒に住んでいましたが、私は都会の水が合わず、沖縄へUターン。でも、子どもができるまでは、毎年東京へ行っていました。

妹は音大の声楽科を卒業後、ピアノ講師やIT関係の仕事など、職を転々としました。どの仕事もしっくりこなかったようですが、30歳を過ぎたころ、本当に自分がやりたかったことを見つけたようです。それは歌を教えるという仕事でした。

当初は苦労も多かったようですが、辛くても好きなことだったから続けてこられたのでしょう。今では生徒も増え、仕事は順調なようです。持ち前の明るい性格が人を呼んでいるのかもしれません。

最近は、教室の仕事と並行して、ジャズバーで歌ったりもしているようです。一昨年、ライブを見に行きましたが、とても生き生きとしていて、「本当に歌うことが好きなんだなあ」と感じました。きっと、東京で知り合ったたくさんの素敵な友達も妹を助けてくれているのだと思います。

兄や弟、親戚もみんな沖縄にいるので、お盆とお正月は妹も帰ってきます。そのたびに、「早く沖縄へ帰っておいで~」「いつ結婚するの?」などと聞かれ、「今さら戻って何するの? 仕事もないし、相手もいないしー」という会話が繰り返されています。
妹にしてみたら、ここまで積み上げてきたものを捨てるなんて、という思いもあるのでしょう。東京へ発つときには、寂しい表情を浮かべて「帰りたくない~」と言ったりしますが、今のところ沖縄へ戻ってくるつもりはないみたいです。

「妹、チバリヨー!」(沖縄方言で“頑張れ”)
私たち家族は妹が心配だけれど、まだまだ頑張りたいという彼女を応援したいと思います。沖縄から愛を込めて、「家族はいつも温かく見守っているよ」と感じられるようなお花を作っていただけたらうれしいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

「チバリヨー!」の気持ちをそのまま花にしました。

沖縄や南国の花をたくさん使っています。真ん中の大きな花はエクメア。城間さんの妹さんをイメージしています。そして、その周りでエクメアを支える花々が沖縄にいるご家族です。

使用したのはストレチア、アンスリウム、ジンジャー、ピンクッション、ダリア、パフィオなど、およそ18種類。リーフワークはコンシンネです。色とりどりの花は、見ているだけで元気になりますよね。

一人暮らしの部屋には大きすぎるアレンジかもしれませんが、ご家族のエールを込めた花ですから、これくらい景気良くしないとね(笑)。

もうひとがんばりして、ぜひ大きな花を咲かせてください。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

故郷・沖縄を離れて歌い続ける妹へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


ギクシャクしている夫ともう一度

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