花のない花屋

息子と2人暮らし 前を向くために

  

〈依頼人プロフィール〉
堀川さゆりさん(仮名) 41歳 女性
岡山県在住
看護師

    ◇

訳あって3年前に夫と別れ、今は6歳の子どもと2人で暮らしています。子どもに発達障害があるため、看護師の仕事は昼間だけのパートです。

35歳のときに結婚しましたが、相手は先天性の病気があり、対人恐怖症のためか女性と付き合ったことのない人でした。彼はあるときから母親のように私を慕うようになり、半分ストーカーのようでもありました。
なんとなく付き合い始めましたが、しばらくすると暴力をふるうように。別れ話をすると、意識が朦朧(もうろう)とするまで私を殴り、さらに髪の毛を引っ張ってベッドまで引きずり、洋服をずたずたにされたこともありました。

子どもができたので籍は入れましたが、私は実家に帰って出産。しばらくは別居していましたが、少し落ちついてきてからは3人で暮らすようになりました。でも、今度は勤務先で暴力をふるうようになったのです。子どもがいたので危機感を抱き、警察や役所などあちこちに助けを求め、私はなんとか離婚を成立させました。

今の生活は大変といえば大変ですが、そうは思わないように淡々と暮らしています。これまで、他の男性と再婚するチャンスもありましたが、うまくいきませんでした。人生のパートナーを得ることは叶いませんでしたが、私には最愛の息子がいます。

ただ、時折、ベッド・ミドラーの「ローズ」を聞くと、最後の「種子は春 おひさまの 愛で 花ひらく」というフレーズで涙が出てきてしまいます。

子どもと2人で頑張っていこう、と思っていたとき、ちょうどこの連載を知りました。我慢ばかりの人生でしたので、東さんの作ったお花をいただけたら、こんなに幸せなことはありません。赤いバラが憧れです。

お花からもらう力を、仕事や周りの人たちに還元して生きていきたいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

とても大変な経験をされたのですね……。それでも、しっかりと前を見つめて生きていこうという堀川さんの力強さを感じました。

そんな意思の強さを表現するために、深紅のバラを1種類だけ使うことにしました。周りを囲んだ赤い実はバラの実です。しっとりとした雰囲気で、じんわり気分が高揚してくるアレンジになったのではないでしょうか。

水を少なめにして、風通しのよいところに置いておけば、このままドライフラワーにもなります。みずみずしい花を楽しんだあとにドライフラワーにすれば、花を見る度にいまの「決意」を思い出すことができるかもしれません。頑張ってくださいね!

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

息子と2人暮らし 前を向くために

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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