book cafe

<3>真っ赤でポップ、NYのアート書店のように

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 神宮前交差点や原宿のにぎわいを背にしてしばらく歩き、路地を曲がった奥にその店はある。

 鉄骨とガラス張りの男性的なファザードから一転して、店内は壁一面が真っ赤に染まる。その中に、アート、音楽、写真集、画集、料理レシピ集など、多様なジャンルの洋書が所狭しと並んでいる。

 本棚をじっくりと眺め、手に取ってはページを繰る人、本棚の横にあるカフェスペースでランチのチキンオーバーライスを食べながら談笑している外国人、カウンターでコーヒー片手にオーナーと世間話をする人など、だれもが勝手気ままに時間を過ごしている。

「BOOKS BUNNY」には、地元の常連客がよく集まる、ニューヨークの小さな書店に紛れ込んでしまったかのような雰囲気がある。

「元々絵を描くのが好きで、アート系の洋書も好き。自分の好きなことやモノを集めて、ひとつの空間で表現したかったんです」

 オーナーの伊藤沙帆さん(27)はいわば、この空間のクリエイター。その世界観を形づくるのに欠かせない洋書は、年に2回ほど訪れるニューヨークの本屋でフィーリングや直感でセレクトしたものだ。「ジャケ買いもあり。題名や色づかいなど、何か一つでも心に刺さるもの」だという。

 2年前のオープン当初、お気に入りの本が売れた時はうれしい反面、その本と別れることになるのが辛かったという。

「お客さんに頼み込んで、表紙を写メで撮らせてもらったこともありました。さすがに今はありませんが(笑)」

 一般の洋書店にはない独特のセレクトに惹かれ、デザイナーやフォトグラファー、ファッション関係の客が自然と集まるようになった。なかには、性をテーマにした、きわどい写真集やアート本も少なくない。

「はじめはデザイン的にかっこいいなと思って仕入れてたら、お客さんに面白がってもらえるようになって、どんどん増えていきました。一部のお客さんには“エロ本屋?”とからかわれてますけど(笑)」

 ただ、痛い失敗もある。6月に渡米し、買い付けた約300冊の洋書を現地から送ったところ、税関で約30冊が「猥褻(わいせつ)」と見なされ、任意放棄を余儀なくされたのだ。

「私は飽きっぽいので、同じことを繰り返すのは性に合わないようです。いちばん面白いのは人とのつながり。このお店はお客さんと一緒に作ってきたようなもので、いろいろ変わっていくのが楽しい」

 夜のバー営業を始めるようになったのも、人と人とのつながりを生み出すためだ。放課後みたいな雰囲気で、いろんな人がふらっと立ち寄るという。

 空間形成を大きく左右するのは、そこに集う人たち。その中心には、どこまでも自然体で明るく、フレンドリーな伊藤さんがいる。

(次回は11月20日に掲載する予定です)

■オススメの3冊

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『PRIVATE COLLECTION 1970-1979/1980-1989』(TASCHEN)
化粧箱に収まった文庫本サイズのビジュアルブック5冊組。その思わせぶりなパッケージの内側には……。「実はこれ、密かな人気商品で3回目の入荷。ぜひ、お店にチェックしにきてください」

『MUCH LOVED』Mark Nixon
小さい頃から大切にして、ボロボロになったテディベアやぬいぐるみのポートレート集。手や目がちぎれかけた写真はどこかグロテスクでもある。「MUCH LOVEDというタイトルにぐっときました」

『SUBWAY ART』Martha Cooper, Henry Chalfant
80年代のニューヨークの地下鉄や車体に書かれたグラフィティアートの写真集。大判で見応えのある1冊。「私自身、グラフィティアートが好きなので、思わず仕入れてきてしまいました」

(写真 石野明子)

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BOOKS BUNNY
渋谷区神宮前2-31-8
03-5772-3372
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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

<2>世界地図のような空間で「旅」を読む

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<4>中央線の客が創る「ソーシャルな茶室」

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