花のない花屋

滋賀の寺で副住職をする花好きの彼に

  

〈依頼人プロフィール〉
富野まいさん(仮名) 37歳 女性
東京都在住
会社員

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彼と一緒に過ごすようになってから、半年以上が過ぎました。出会ったのは今年の1月。彼のお寺で開催されていたヨガのクラスに行ったのがきっかけです。初めて会った瞬間から、なぜかお互い惹かれ合っていたような気がします。自然と2人で会うようになり、すぐにおつきあいが始まりました。

彼はとってもマイペースで、個を確立しつつも、仲間を大切にしている印象があります。超自然体で、見栄を張るようなところは一切ありません。これまでに出会った男性は「こんなことができる」「こんなにいろんなものを持っている」と、自分をアピールするタイプが多かったのですが、彼は真逆。「余計なものはどんどん削ぎ落とす」という人でした。

今は滋賀県にある実家のお寺で副住職をしています。もともと、大学卒業後はイタリアの家具を輸入する会社で営業をしていましたが、40歳を前に退職し、お寺に入りました。東京にいる間は、ヨガや座禅、精進料理の紹介などをするイベントを企画し、月に1度、1週間ほど滋賀のお寺に戻る生活をしています。夏の間は庭の草むしりに精を出し、真っ黒になって少したくましく見えました。

先日、私の両親にも会い、結婚の話も進んでいます。まだ出会ってから1年もたっていませんが、すべてがトントン拍子でびっくりです。

彼は最近、お花の先生をやっているお母様に花を習っており、自分で生けて写真を撮っては、自慢げにフェイスブックにあげています。まっすぐなお花が好きで、特に和の花に愛着を感じているようです。

花好きの彼ですが、きっと花束などもらった経験などはありません(笑)。この出会いに感謝しつつ、「今後も末永くよろしく」という気持ちを込めて彼にお花を贈りたいです。

  

花束を作った東信さんのコメント

まっすぐな花や和の花が好きということだったので、その言葉を頼りにアレンジしました。

メーンは秋の和の花、リンドウ。落ちついた青が味わい深いですよね。長い茎に対称に花がつくので、短く切ってぎゅっとまとめました。間に交ざっている緑色の空洞の輪はトクサ。節があり、竹のミニチュアみたいな植物です。これを短く切って、全体にちりばめました。

これだけだと単調になってしまうので、周りにエリンジウムをあしらっています。とげとげした葉っぱが特徴で、このままドライフラワーにもなります。

「余計なものをそぎ落とす」ように、シンプルに、それでいて季節感を味わえるように意識しました。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

滋賀の寺で副住職をする花好きの彼に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


息子と2人暮らし 前を向くために

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