花のない花屋

姉のような職場の上司に感謝とエールを

  

〈依頼人プロフィール〉
今井はなさん(仮名) 37歳 女性
神奈川県在住
会社員

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10年ほど前に転勤してからお世話になっている上司は、姉のような存在です。年齢はちょうどひとまわり上ですが、何でも話を聞いてくれて、私の心の支えです。

彼女に子どもはいませんが、私の育児の悩みや、夫や親にさえ言えない悩み、日常の些細(ささい)な愚痴(ぐち)など、なんでも聞いてくれます。ある上司が私ばかりに仕事を押しつけてきたときは、断れない私に代わって、直接「やりません」と言ってくれました。精神的にかなり参っていたので、心底ありがたかったです。

それだけでなく、時には私の間違いもはっきり指摘してくれるので、自分の誤りに気づくこともできます。いい年した私ですが、振り返ればいつも彼女に守ってもらっている気がします。

彼女自身は今年、ご友人、ご親戚、飼っている猫ちゃんを相次いで亡くされました。悲しく辛い日々だったと思いますが、ずっと気丈に振る舞っていました。すぐにへこたれる私に比べ、彼女はいつも強く、明るく、どんなときも弱さは見せません。同時にとても心優しい人で、どれだけ助けられたかわかりません。

先日、そんな彼女から「夢がある」という話を聞きました。昔から料理やお酒が大好きで、いつかお店を持ちたいのだそう。彼女は5、6年前から畑でいろいろな国の野菜を育て、近所の朝市にも出しているそうです。サーフィンが趣味で、バリには毎年のように行き、あちらでインドネシア料理の勉強もしているといいます。

仕事を一生懸命やりながら、夢を叶えるためにも頑張る彼女。その姿はいつもエネルギーに満ちあふれています。つらい思いをされた分、それをバネにして、少しでも夢に近づいてほしい。夢が叶ったら、この職場を去ることになってしまうのですが……。

なんと、昔は花屋になりたかったと聞きました。今も野菜を育てているので、生き物を育てるのが好きなのでしょう。そんな素敵な上司に、夢へのエールを込めてエネルギッシュなお花を贈りたいです。よろしくお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

野菜やフルーツを使った、フルーツバスケットのようなアレンジです。食べることが好きで、野菜も育てているとのことだったので、思い切ってエネルギッシュなアレンジにしてみました。

使ったのは、ザクロ、ヒメリンゴ、ブロッコリー、モンキーバナナ、アーティチョーク、ライム、キンカン、アボカドなど。全部食べることができます。お花は、カーネーションやエピデントラム、ガーベラ、芍薬、バラ、サンキライの実やバーゼリアなどです。

意外とフルーツとお花は合うんですよ。僕は野菜やフルーツを取り入れるのが好きで、クリスマスシーズンになると、赤いザクロやリンゴはよく使います。

ポイントはお互いの良さを生かすこと。つるんとした表面のフルーツの隣には、マットな質感の花を置いたり、スパイダー咲きの菊を挿して馴染ませたり。花にはない質感がアレンジの幅を広げてくれます。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

姉のような職場の上司に感謝とエールを

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


人気YouTuberの彼に

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花の仕事をきちんとあきらめられるように

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